KDDIとトヨタが交通事故を防ぐ「Vehicle to X」発表、危険地点を見える化しつつCO2削減で「つながるモビリティ社会」実現へ



2020年に提携を強めたKDDIとトヨタが、両社の強みを生かして開発した事故防止システムなどの発表を行いました。詳細は以下から。

◆事故を防ぎ、環境も守り、新たな価値を生む取り組み
本日KDDIが開催した「つながるモビリティ社会に向けた取り組み説明会」の様子をお届けします。

まずは門脇誠経営戦略本部長から「つながるモビリティ社会」に向けた取り組みについて説明がありました。



KDDIが掲げる5G通信を核とする「サテライトグロース戦略」では、モビリティの分野も当初から重要視されていました。


IoT黎明期から回線を本格的に提供していたKDDIは、去年の段階で業界最大規模である4550万回線を突破。


今後も20年間取り組んできた実績をもとに、物流だけでなくロボットやドローンなどあらゆるものに通信を溶け込ませ、新しい体験価値の創出を目指すようです。


2020年から共同でサービスと技術の開発を行い、共同検討を強めていたトヨタとKDDI。



「すべてがつながる社会」を見据えており、ビッグデータを活用した開発なども行われています。」


続いてベースとなる課題として、モビリティが取り巻く環境について説明。


見通しが悪い場所での事故が多いことが問題視されているほか、通信が関係するようになった以上、セキュリティ上の対策も必要になってきました。


さらにCO2削減はもちろんとして、膨大なデータを処理するためのエネルギーも課題となっています。


また、新たな体験価値でニーズを生む必要もあるとのこと。車移動が無駄にならないシームレスなシステムや、子どもも楽しめるような新たなサービスを衛星通信まで用いた快適な通信環境を整えて提供することで、ユーザーへの訴求をはかるようです。


そんな「安全安心」「グリーン」「体験価値」の3つをテーマにした『つながるモビリティ社会』の実現に向けた構想が語られました。


サービス技術情報などのアセット活用するなど、KDDIとトヨタの強みを生かす方針です。


安全に関しては、車両から送られる情報などを元にしたビッグデータで潜在的な危険エリアに至るまでの『見える化』、車と自転車を初めとしたさまざまなものとやり取りすることで危機回避につなげる「Vehicle to X」の開発、さらに外部から攻撃があってもピンポイントで対処できるセキュリティ強化など、さまざまな形で推し進められます。


増えてしまった情報処理のコストは、すぐに対処する必要のないデータを再生エネルギーで運用するサーバーに任せることで環境に配慮。


ユーザーに対しては移動前後の状況や好みに合わせたサービス提供やVRも使った新コンテンツなどで車内時間のリッチ化を図るなど、両社の提供価値を掛け合わせて新たなモビリティ体験の創出を行っていくようです。


ここで大谷朋広技術戦略本部長が登壇。安全安心なモビリティ社会実現について、より具体的な説明がなされました。




危険地点の見える化の詳細。両社が持つ人流、車両データとオープンデータをAIが分析した上で行われ、危険と判断されたり「急ブレーキが多い」といった潜在的リスクがある場所には、標識や停止線を配置することで事故削減につなげられるとみられています。



生活道路などの特性も考慮されるため、実際の現場にマッチしたスコアリングが期待されます。


そんな「危険地点スコアリング」は自治体、法人向けに今春提供開始予定です。


接触事故を未然に防ぐシステムVehicle to Xの説明。今回はバイク(自転車)に焦点があてられた「Vehicle to Bike」が発表されました。


見通しの悪い交差点に接近する車両を把握すると5秒後には通知が行われ、事故を未然に防ぎます。


通信が遅れては意味がないため、周囲のデータをすべて集めるのではなく進行方向を考慮し通知が必要な対象を絞ることで、検索処理の軽量化が行われているそうです。


危険がある場所でのみ通知される、現在地により位置情報の更新頻度を変えてバッテリー消費を防ぐなど、配達員などの負担を減らす配慮もされています。


公道で実施された実証実験では平均して時速10kmの減速に成功する成果を上げており、死傷事故防止に大きく貢献してくれそうです。


こちらが説明動画。従業員の運転状況もわかるため管理者の立場からしても有用で、急ブレーキを防げるのもデリバリー業務では重宝されそうです。


次に説明されたのが、ネットにつなぐ以上どうしても考慮する必要があるサイバー攻撃も防いでくれる「つながる みまもりセンター」。


両社の知見を連携することで、ソフトウェアの挙動の変化をとらえて異常からの早期復旧を図れるほか、「通信パターンから攻撃を検知する」といったこともできるようです。



シームレス化の一環として、車中で使えるARグラスのモニターも今日から募集が開始されました。


これらの取り組みは来週開催予定の「MWV Barcelona 2024」でも展示予定とのこと。


KDDIとトヨタは共につながるモビリティ社会を描きながら、今後も技術やサービスの開発に取り組んでいくそうです。


最後にトヨタの木津雅文情報企画部部長がゲストスピーチ。


コネクティック領域のこれまで培った技術やノウハウと、KDDIが持つアセットなどのサーブ椅子を活用した新たな開発を両社で目指し、安心安全グリーンなモビリティ価値創出を目指すとのことです。


◆デモンストレーションの様子
デモンストレーションやスライドも使ったわかりやすい説明が行われていたので、その様子をお届けします。

まずは危険地点スコアリング。画面はこんな感じで、ハザードマップのように危険なところが赤色でわかりやすく表示されています。


表示された危険地点をクリックすることで収集された各種データを閲覧可能。歩行者や運転手の性別年齢からABS作動率まで、事細かに確認できる優れものです。


丁寧な説明付きの動画は以下から確認できます。


続いて衝突事故を防いでくれるVehicle to Bikeのデモンストレーション。車、自転車問わずスマホアプリの形で運用されます。



衝突の可能性があるとわかりやすく音と共に通知。


バックグラウンドでもしっかり作動するため安心で、バッテリー消費もなるべく少なくなるように考慮されています。


動画で見るとこんな感じ。バイクや自転車での今までにないセーフティシステムとして、運送業にとどまらず個人でも使えればいいのに、と思わせてくれるアプリでした。


最後はつながる みまもりセンター。こちらは動画での確認をお勧めします。


◆質疑応答


日経佐藤:
それぞれが持ち寄るデータのボリューム感を教えて欲しい

KDDI大谷:
(内容は)スマートフォンから許諾を受けた上で送信される位置情報、入力された生年月日などの移動者情報など。ボリュームについては具体的にこのぐらいの量というのは申し上げにくいが、東京の2020年から22年までの何ヶ月間といった形で分析をすることができる。トヨタからは車からの平均速度や最高速度、急ブレーキ・一時停止率などの情報を活用。

日経佐藤:
トヨタはNTTやソフトバンクとも提携しているが、差別化、役割の違いを教えて欲しい。トヨタにはKDDIに期待する部分をお願いしたい。

KDDI門脇:
他社のコメントはできる立場にないが、KDDIとトヨタは20数年ビジネスを継続している。その中で日本のみならずグローバルでの提供もある。そういった関係の上で、両社のアセットを組み合わせた独自性の高いモビリティの実現や社会解決を図りたい。

トヨタ木津:
NTTとはスマートシティに関すること、ソフトバンクとは「MONET Technologies」の立ち上げなど、それぞれ得意なところをご一緒させて頂いている。

フリー石川:
危険地点スコアリングの一般への提供は。

KDDI大谷:
サービスは自治体や法人向けのサービスと考えている。個人にサービス提供をできるかは答えられない。

日経ビジネス杉山:
今回の発表についてセキュリティ面での取り組みが海外でも展開される可能性はあるのか。

KDDI門脇:
これからのモビリティ社会はその国を超えた領域での広がりも想定。グローバル展開を前提として取り組んでいる。海外へもより広げていきたい。

日経ビジネス杉山:
国内と海外では課題が変わってくると思うが。日本では密なデータを取れると思うが、海外でも同じ事ができるのか。

KDDI大谷:
データ活用に関しては地域や国のレギュレーションに合わせて、コンプライアンス重視で対応。グローバル展開する場合には提供の回避を含めて検討。

フリー西田:
ビジネスモデルを確認したい。KDDIはデータ提供で収入を得る形なのか。

KDDI大谷:
ビジネスモデルは協議中。サービスの形態にもよるがBtoBを想定。スマートフォンでのアプリ提供の形も想定。今後ビジネスモデルをきっちり作って提供していく。

フリー西田:
公共性の高いサービスとなるが、他社や地域との連携はどう考えているのか。

KDDI門脇:
事業者という事に閉じてやっていては社会課題解決にそぐわない。これからの検討になるが、ほかのモビリティサービスにも広げる。トヨタの接点から他者への広がりもあり得る。具体的にはこれからと考えている。

トヨタ木津:
社会が抱えているいろんな課題を解決するため、2者ではなく今後広げていきたいと考えている。

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