投資額たった6000億円でプラチナバンドもなし、散華しかねない楽天「第4の携帯キャリア事業」はどうやって生き残るのか



楽天が携帯電話事業に参入すべく、新たに開放される周波数帯の割り当てを申請する方針であることを先日Buzzap!でお伝えしましたが、楽天が発表した計画では、携帯各社が長年かけて整備してきたインフラに勝てるはずありません。

それではどうやって生き残るつもりなのかを考えてみました。詳細は以下から。

◆楽天が2025年までに投資する6000億円はドコモの設備投資額1年分
まず確認しておきたいのが、楽天が2019年のサービス開始時から2025年までにかけて投資する6000億円という数字の規模感。実はNTTドコモが1年間に費やす設備投資の額と変わらず、全国をカバーできるネットワークを構築するには桁が1つ足りません。


◆獲得した周波数帯を利用できる時期は地域ごとにバラバラ
今回楽天が割り当て獲得を目指す周波数は1.7GHz帯/3.4GHz帯ですが、壁などの障害物に弱く、基地局あたりのカバーエリアが狭い3.4GHz帯は新規事業者には荷が重く、あくまで第一希望は1.7GHz帯とみられます。

しかし新たに開放される1.7GHz帯を利用できるようになる時期は地域によって異なり、単独で全国カバーできるようになるのは早くとも2022年ごろです。


◆プラチナバンドもなし
さらに厳しいのが「1.7GHz帯を取得できたとしても、建物の中には弱い」という部分。プラチナバンドがなければ、建物などの中で快適に使えません。



◆地下やトンネル内でも通信できない
極めつけが地下の問題。携帯電話を地下で快適に使えるようになって久しいですが……


これは空間に余裕がなく、地上ほど自由に基地局を設置できない地下でも通信できるよう、携帯3社が設立した「公益社団法人 移動通信基盤整備協会(旧:社団法人 道路トンネル情報通信基盤整備協会)」により共同で整備されてきたことによるもの。


かつてのイー・モバイルも地下鉄駅などをカバーするのにそれなりの時間を要していたことを考えると、「サービスインにこぎつけたものの、東急田園都市線で楽天本社がある二子玉川から渋谷(すべて地下区間)に向かおうとしたらいきなり圏外」となりかねないわけです。


◆単独展開では楽天が崩壊する未来すら見える
「エリアは地域限定、地下はもちろん建物の中でも使えない携帯電話会社に加入したいか?」と聞かれた場合、首を縦に振る人はまずいません。

このままでは日本発の大手ECサイト・楽天グループは携帯電話事業への投資が原因で破綻、手塩にかけて育ててきた各事業は切り売りされ、関係者が「こ、これが……楽天!?」「もう見れません……見たくありません!!」と悲鳴を上げる未来すら見えてしまうわけです。

◆生き残る鍵は「フルMVNO」か
それでも楽天が携帯電話事業へ参入することを目指す以上、何らかの勝算があるとみられますが、まず思いつくのがNTTドコモとのローミング。かつてイー・モバイルが音声通話サービスに参入した際も、エリア外ではドコモと国内ローミングする必要がありました。

しかし旧来の方法でドコモとローミングする場合、別途通話料・通信料が発生してしまうなど、不便な点も。そのため「フルMVNO」とキャリア事業を組み合わせるのが一番現実的ではないかと考えられるわけです。

IIJがドコモとの交渉の末に契約者情報を管理する加入者情報管理装置(HLR/HSS)を2017年度に提供し、独自にSIMカードを発行できる「フルMVNO」になることを告知していますが、(PDFファイル)フルMVNOでは利用者に対し、自社が提供しているどのネットワークサービスに接続させるかを制御することができます。


フリーテルを買収したことで、楽天が国内最大のMVNO(仮想移動体通信事業者)となったことは周知の通り。ならば楽天自身がフルMVNOとなる、あるいはIIJの協力を仰ぐことで、MNOとして自らが整備を進めていく回線と、MVNOとしてドコモから借りている回線を状況に応じてつなぎ替えられるようなサービスを展開すればいいわけです。

もちろんこの方法だと大手3社ほどの速度は期待できないものの、都市部を中心に整備した自社ネットワークに通信量を逃がすことができるようになります。

MVNO各社最大の弱点だった「お昼の極端な速度低下問題」も解決でき、エリアの心配もなくなるため、投資額が一桁少なくとも十分戦えそうな楽天。

さまざまな事業者が目指しつつも、ちっとも実現する気配がない「脱・格安スマホ」も夢ではありません。


もし楽天に周波数帯が割り当てられる場合、どうやら総務省は大手3社に並ぶ規模でなく、「キャリアとMVNOの中間」に位置するキャリアを作ることで、競争を促進する方向に舵を切るようです。

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