Photo by Tony Hammond
犬にあの瞳で見つめられると、もうどうにも人類は逆らうことができなくなってしまいます。その秘密が明らかになりました。
犬のつぶらな瞳、確固たる猫派の筆者にとっても、あの瞳にじっと見つめられたらもうその可愛らしさに抗うことなど到底叶いません。いったいそれはなぜなのか。とある物質が深く関わっていることが明らかになりました。
オキシトシン、別名「愛のホルモン」とよばれるこのホルモンは親子の絆を強めることが知られており、さらに愛情や信頼感の源になるとして最近話題になっている物質です。人間同士だけでなく、私達が犬の瞳を覗き込む時、私達人類と犬双方のオキシトシンの値が上昇していることが明らかになりました。
この研究を発表したのは麻布大学の動物行動学者、菊水健史教授らのチーム。
Oxytocin-gaze positive loop and the coevolution of human-dog bonds
菊水教授らは友人知人30人とそのペットの犬を用いて実験を行いました。なお、その中には犬だけでなく狼をペットとしている人も含まれていたとのこと。
最初の実験ではまず人間と犬の尿を最初に採取し、実験室の中で30分を共に過ごしてもらいます。その間に人間は犬を撫で、話しかけ、見つめ合い、そして時間が過ぎた後に再び採尿します。
その中で、見つめ合うことに最も長く時間を使った人間と犬では、オス犬、メス犬共にオキシトシンの値が130%へと上昇し、飼い主の人間も男女ともにオキシトシン値がなんと300%へと上昇していました。
しかし、見つめ合うことに時間を費やさなかった人間と犬の組み合わせ、そして人間と狼の組み合わせではいずれもオキシトシン値の上昇は見られませんでした。
もうひとつの実験では、犬に予めオキシトシンスプレーを鼻内噴霧した後に同様の時間を過ごしてもらいました。その際、メス犬は150%長い時間飼い主の目を見つめるようになり、飼い主のオキシトシン値も300%まで上昇しました。しかしオス犬に対してはこのスプレーは効果が見られず、生理食塩水を噴霧された犬の行動にも変化は見られませんでした。
なお、狼に対して鼻内噴霧を行うのは非常に危険として、こちらの実験には人間と狼のペアは参加していません。
この結果から菊水教授は、人間と犬が見つめ合うことによるオキシトシンのポジティブ・フィードバックが人間の親子の間に見られるのと同じように起こっていると考えられるとしています。これが人間が犬を非常に身近な存在として捉え、また犬が人間を同じように身近な存在としているかをも説明することになるかもしれません。
なお、菊水教授は鼻内噴霧がメス犬にのみ影響を与えたことに関しては、オキシトシンが出産や授乳といったメス犬の生殖行動により大きな役割を演じているためではないかとしています。
また、菊水教授によると、人間と狼の組み合わせでは見られなかったこのオキシトシンのポジティブ・フィードバックは、犬が家畜化されて人間の社会の中に入り込む際に大きな役割を担ったと考えられるとのこと。人間に絆を感じ、共に過ごすことのできる犬でなければ人間に守られ、世話されることは難しかったことは想像に難くありません。
さらに人間も犬の家畜化の過程の中で、人間の子供だけでなく犬に対しても不安を和らげ、愛情や信頼感を感じるオキシトシンのポジティブ・フィードバックを獲得していったと考えられます。
私達が犬の瞳に見つめられてどうにも抗えなく幸せな気持ちになってしまうのは、1万年以上も昔から続く人間と犬の関係が双方の種にもたらした変化だと考えるとちょっとロマンチックでもあります。
そして猫派の筆者としては、全然見つめてくれない素っ気ない猫たちに、それでもキュンキュンしてしまう理由もぜひとも解き明かしていただきたいと強く願うところです。
How dogs stole our hearts Science AAAS News
(Photo by Tony Hammond)
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