Photo by Creativity103
電気を通しても熱くならないという極めて有用な物質特性が発見されました。詳細は以下から。
電球であれPCやスマホであれ、電気エネルギーを使っていれば必ず熱は発生します。エアコンや冷蔵庫のようにその熱を利用する電気機器もありますが、PCなどの精密機器ではオーバーヒートは故障や短命化の大きな原因となります。
ではもし電気を通す性質を持ちながら、余計な熱をほぼ発生しない物質があったなら?それは極めて有用な夢の物質と呼んでもいいのではないでしょうか。
今回驚くべき特性が見つかったのは金属製二酸化バナジウム。もともと室温では透明な絶縁体で、少しの熱を加えると伝導体に変化するという独特の性質を持っていましたが、この度新たに驚くべき性質が発見されたのです。
発見したカリフォルニア大学バークレー校材料工学科のJunqiao Wu教授によると、この発見は全く予想外で従来の伝導体の常識を全部覆してしまうほどのものであるとのこと。
それは「電気を熱よりもはるかによく通す」というもの。二酸化バナジウムはなんと熱よりも電気を10倍も伝導させるという性質を持っています。これまでそのような性質を持った物質がなかったわけではありませんが、それらの性質が見られるのはマイナス百度を超える超低温の中での話でした。
二酸化バナジウムのこのような特性の秘密は物質の中で電子の取り得る配列が限定されていることにあります。通常の金属であれば電子は自由電子としてランダムに動き回るか特定の方向に動くかになります。
しかし二酸化バナジウムでは電子は流動体が波打つように一緒に動き、個別の粒子としては振る舞わないのです。この特性は特定方向への移動を妨げないため、電気をよく伝導させますが、バラバラに動くことが抑制されるため、熱伝導性が低いということになります。
さらに、二酸化バナジウムは60度を超えると赤外線を吸収するという特性も併せ持っているため、高温への適用性もあります。
研究の共同研究者であるBerkeley Lab's Molecular FoundryのポスドクであるFan Yangさんは「二酸化バナジウムは温度を安定させるのに役立ちます。夏の暑い時期には熱伝導性が高まり赤外線を吸収しますが、寒い時期には熱伝導性が下がって熱を逃がさないようにすることができます」と述べています。
実際の製品への応用はもう少し先になりそうですが、極めて大きなブレイクスルーであり、熱くならないスマホなどの形で身近なところにもやってくるかも知れません。
Anomalously low electronic thermal conductivity in metallic vanadium dioxide _ Science
Wonder Material Lets Electricity Flow But Not Heat _ IFLScience
(Photo by Creativity103)
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