誰でも使える世界一黒い塗料が発売されます。ただしとある1名とその関係者は購入禁止です。詳細は以下から。
◆「とある1名を除く」全人類のために世界一黒い塗料が開発される
20年に渡って独自の塗料を開発してきたイギリス人アーティストStuart Templeさんの率いる研究チームが2年間を掛けて世界で最も黒い塗料の開発に成功しました。
TempleさんらがクラウドファンディングサイトKickstarterで製品化の資金募集を開始したところ、あっという間に目標額の860%となる3000万円以上の資金を集め、製品化が決定しています。
この塗料「Black 3.0」は現在25ポンド(約3500円)のファンディングで150mlのボトル1本を獲得することができます。ただしあなたがアニッシュ・カプーアではないこと、アニッシュ・カプーアにいかなる意味でも従属していないこと、アニッシュ・カプーアの代理として購入するのではないこと、アニッシュ・カプーアの仲間ではないことが条件となっています。
◆世界一黒い塗料を巡る確執のストーリー
一体どういう事?アニッシュ・カプーアって誰?という疑問が湧き起こってくるかと思いますが、ここにはちょっとしたストーリーがあります。
BUZZAP!では2014年にイギリスの企業サリー・ナノシステムズ社がカーボンナノチューブからなる世界一黒い物質「ヴェンタブラック」を開発したことをお伝えしました。
この用途としてはカメラや望遠鏡、赤外線検知器などの不要な光を抑制することが性能向上に繋がる各種機器が想定され、兵器産業や宇宙産業からも熱い視線を送られていました。
問題は、この世界一黒い色彩を使いたいと願うアーティストも多数存在していたにも関わらず、同社はインドの世界的な現代彫刻家であるアニッシュ・カプーアさんに独占権を与えたのです。これによってカプーアさんを除いた世界中のアーティストはこの物質を自らの作品に使用する道を閉ざされてしまいました。
こうした決定を不服としたのがTempleさんらのチームで、2016年に世界一ピンクな塗料「PINK」を開発し、世界70億の人類でただひとりカプーアさんに対してのみ購入を拒否するという「意趣返し」を行いました。
これに対してカプーアさんはこの「PINK」をどこかで手に入れて塗料に中指を付けて立てた画像をInstagramに投稿するというガチの煽り行為に出ます。
これに再度ブチ切れたTempleさんらのチームが作り上げらのが今回の「Black 3.0」ということになります。なお、通常の黒い塗料では光の吸収率は95~98%ですが、「Black 3.0」では98~99%を吸収し、既存の黒色塗料の中では最も黒いということになります。
なおヴェンタブラックは工業用で99.96%を吸収するため、残念ながらヴェンタブラックを超えてはいません。ただし「Black 3.0」は水溶性で扱いも通常の塗料と同じで非常に簡単。ヴェンタブラックのように、使用に当たって特別な設備や取り扱い知識は必要ありません。
値段も上記のように150mlで3500円前後と普通のアーティストでも問題なく手の届く金額となっており、アニッシュ・カプーアさん以外であれば誰でも自由に使えるため、自らの作品にこの上ない黒を使いたいという人には非常に魅力的なものになっています。
なんとも大人げない争いのようにも見えましたが、結果的に世界一ピンクな塗料と世界一黒い塗料が開発されたという功績を考えれば、結果オーライということなのでしょうか?
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