ソフトバンクが緊急記者会見を実施、スプリントの戦略的買収を発表


ソフトバンクがスプリントの戦略的買収について緊急記者会見を実施しました。

はたしてアメリカ市場にはどのようなうまみがあるのか、そして買収によってどれだけシナジー効果が生まれるのか……などの解説が詳細に行われています。



当社によるスプリントの戦略的買収(子会社化)について

当社と米国のスプリント・ネクステル・コーポレーション(以下「スプリント」)は、本日、当社がスプリントの事業に対して約201億米ドル(約1兆5,709億円(※1))の投資を行うこと(以下「本取引」)について、最終的な合意に至りましたのでお知らせいたします。投資総額のうち約121億米ドル(約9,469億円(※1))はスプリントの株主に支払われ、80億米ドル(約6,240億円(※1))は同社の財務体質の強化等に投じられます。
当社とスプリント両社の取締役会で決議された本取引は、スプリント株主による株主総会における承認、競争法上の承認、連邦通信委員会(Federal Communications Commission)による承認その他監督官庁の通常の承認、及び表明・保証違反がない等その他の前提条件の充足(又は放棄)が条件となります。
両社は、2013年半ばに本取引が最終的に完了すると見込んでいます。本取引の結果、当社はスプリントの完全親会社となる新スプリント(以下に定義します)の株式の約70%(完全希薄化ベース(ただし、ストックオプションのうち行使価格が下記2.(2)に記載する合併対価である1株7.30米ドルを上回るものについては行使されないことを前提とする。以下同じ))を保有することになり、同社を子会社化する予定です。

(※1) 1米ドル=78円で換算した試算値。


今回の取引のメリット。ソフトバンクは日米最大級の顧客基盤を獲得し、移動体通信事業での売上高は世界第3位となります。

・本取引により、当社グループは、世界最大級の「モバイルインターネットカンパニー」としての事業基盤を確立することができます。両社を合計した顧客基盤は日米市場で最大級(※2)に、移動体通信事業の売上高は世界第3位(※3)になります。
・当社グループのスマートフォン及び次世代モバイルネットワークに関する知見や既存の大手が存在する成熟した市場において競合してきた経験を、米国市場におけるスプリントの競争力強化に活用することが可能になります。
・スプリントは、モバイルネットワークの強化、戦略的投資の実行、バランスシートの改善などに投じ、今後の成長のための経営基盤の強化を進めていくための資金として80億米ドルを調達することができます。


孫氏が登壇。日本は少子化などのリスクを背負った世界で最も危険な国になりつつあるとコメント。スプリントは国内シェア3位(16%)。「少なくともNTTドコモのシェアを抜いたと言える」とのこと。そして、総額201億ドル(1兆5709億円)でSprint株式の70%を取得します。資金調達のためにソフトバンクが新株を発行することなどはありません。

アメリカ市場についての解説。巨大な成長市場でポストペイド契約率やARPU(1加入者あたりの平均売上高)も高く、通信速度が日本よりも遅いため、成長の余地があるとされています。

アメリカ市場におけるスプリント。市場3位となる3300万ユーザーのポストペイドユーザー、1500万のプリペイドユーザーを抱え、売上高も第3位。通信収入成長率も第1位、ARPU成長率も第1位。2008年から業績は回復しているとされていますが、やはり次世代ネットワークへの投資がネックとなっている模様。

環境への貢献やコスト削減を図り、重荷となっている旧世代のNextelプラットフォームを停止した上で、Sprintのプラットフォームを強化、LTEネットワークを展開していく……としています。

また、同社の業績はすでに回復中。そこにソフトバンクが投資することとなります。

「この投資は成功するのか?」という疑問については「自信がある」と回答。

「新規でのスマートフォン累計販売台数」というグラフ。

モバイル実効速度の比較。ちなみにUQ WiMAXは契約者300万人超で通信量制限無し、Xiは600万人超で通信量制限7GB、Softbank 4Gは2012年9月末時点で40万人弱で、各種キャンペーン適用時の通信量制限は5GBであることに注意が必要です。

そして日本テレコムやVodafone Japan、ウィルコムを再建してきたことを強調。

スマートフォンや基地局の調達力強化、V字回復のノウハウなど、シナジーを創出していくとしています。

また、借入金についてもVodafone買収資金を前倒しで完済。経営も健全な水準になり、成長のダブルエンジンを手に入れたことに。

国内でもNTTドコモやKDDIを抜くということに。

まとめはこんな感じ。

以下は質疑応答。

日経新聞松浦:
日本のユーザーには事業規模よりも「つながりやすさ」が大事だと思うが、そこはどうなのか。

孫正義:
念願のプラチナバンドをやっと今年手に入れ、7月から吹き始めたため、つながりやすさは確実に進みます。経営基盤が強くなるということはより大きな設備投資を継続して行うことができる、経営体力ができるということ。設備投資がさらにできるのではないか。

松浦:
設備投資額の見通しは変わらない?

孫正義:
実はプラチナバンド基地局やLTE基地局の建設は予定よりも速いピッチで建設できそうである。

日経新聞の?:
世界3位ということになるが、これから何を目指すのか?アメリカでは通信の再編が進むが、メトロPCSやTモバイルはどうするのか。

孫正義:
今回の買収で世界3位となった。男子として生まれたからには世界1位を目指したいが、物事には順番があるため、まずは(買収を)しっかりやりとげたい。

NHK安井:
日本市場で今回の買収のメリットをどう提示していける?いつ頃から買収を検討していた?

孫正義:
つながりやすさや速度は今回の買収で世界でも最大規模に近いネットワーク機器の購入量を得ることができるようになるため、メーカーに対する交渉力や調達力は増す。つながりやすさでも必ずNTTドコモやKDDIを抜く。時間の問題。Sprintに完全に照準を合わせたのは数ヶ月前。しかしVodafoneを買収すると決めた6年前から、いずれは日本国内だけではなく、世界展開を果たすと考えていた。

テレビ朝日芝田:
メトロPCSの買収やクリアワイヤ社の出資比率引き上げは?

孫正義:
可能性はある。NTTを買収することもあるかもしれないが、先のことについてはコメントする状況でない。

野村證券松浦:
アメリカで0円ケータイのようなユニークな販売方法を考えている?TD-LTE強化で差別化を図る?

孫正義:
Sprintはさまざまなノウハウを持っているが、ソフトバンクが新規顧客の獲得に用いたさまざまな売り方をアメリカに投入していきたい。LTEのネットワーク技術についてはさまざまな技術を検討しており、世界でも最高速度の通信速度を実現できているというノウハウを持っている。

?:
今おっしゃったノウハウはどのようにしてSprintに提供するのか。「NTTドコモを超える」というのは孫さんにとってどのような意味を持つのか。

孫正義:
私自身がアクティブな会長として積極的に経営にかかわり、ノウハウを共有していきたい。2位や3位に甘んじるのは潔しとしない。いずれはトップを志したい。「10年以内にドコモを抜く」という志は1日たりともゆるんでいなかった。

ITジャーナリストのミカミ:
手元資金と借入金、割合は?シンジケートでブリッジローンの話が出ているが、1.数パーセントという金利はどこ?

孫正義:
買収にあたっては200億ドルを支払うが、手元にある7000億円の現金とブリッジローンとして銀行の協調融資団から全額のコミットをいただいた。銀行は買収資金全体を超える額の融資を申し出ていた。パーマネントローンは数ヶ月後に置き換えていくが、金利はそこまで上がらないのではないか。十分余裕のある資金が温存できる。一部報道のように追加で融資を取る予定はない。

?:
ソフトバンクが得られるシナジー効果はイー・アクセス買収の時に提示した時のように、具体的な金額を示すことはできないのか。ソフトバンクはトップダウンが光る会社ではあるが、すでに回復基調にあるSprintを買収するにあたって、ガバナンスはきくのか。

孫正義:
一日ですぐに金額を出せるレベルのものではない。ソフトバンクが最先端のスマホや最先端のネットワーク機器、最先端のコンテンツにおいて他流試合をしてくることは、国内で試合をするときの本質的な体力も影響が出てくると思っている。2日間で時価総額が1兆円下がったが、何倍にもなって返ってくると思っていて欲しい。

SprintのダンさんとはAT&Tを辞めた時からの知り合いで、起業した際にソフトバンクが出資していたため、相性良くやっていけると思っている。7割の株主として、取締役会の過半数の任命権を持つため、ガバナンスはきちんと発揮できる。

?:
今まで「アジアナンバーワンのインターネットカンパニー」として、アジアの上位レイヤーの会社に投資してきたが、アメリカに投資した理由は?

孫正義:
今日現在アジアナンバーワンになっていると思っている。アメリカのYahooをはじめ日本、中国……と投資してきたタイムマシン戦略をモバイルインターネットで再現したい。

東洋経済の田辺:
アメリカの外資規制についてはどう考えるのか。ソフトバンクのスピード感に影響は?買収話はどちらからもちかけたのか。他社との交渉はあったのか。

孫正義:
アメリカは最も開けた、カントリーリスクの少ないフェアな市場であると考えている。すでにドイツテレコムがTモバイルという形ですでに事業を行っているため、阻害されるとは考えていない。経営のスピードについては違和感が無い。大阪に行くよりは大阪よりアメリカの方が近いという感覚であるため、スピード経営を実現してきたい。プロポーズするのは私の側である。いくつかの戦略的パートナーの選択肢があったものの、最もアドバンテージの大きいものがソフトバンクであった。

テレビ東京:
世界一とは男子の本懐と述べているが、次の目標を年限を区切って教えて下さい。

孫正義:
私が生きている間にはやります。

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