カースト制として知られるインドの身分制度。今も根強く残っていますが、この身分制度に基づく一見屈辱的な奇習を廃止しようとしたところ、大反発が起こってしまいました。
この驚きの奇習は中央インド、カルナータカ州の州都、マンガロールから程近い海岸沿いの地域の4000年もの歴史を持つと言われるKukke Subramanya寺院などで400年程昔から行われています。
内容はというと、Brahminと呼ばれる最高位カースト(バラモン)の人々の食事の残飯の上を、Dalitと呼ばれるアウトカースト(不可触民)の人々がごろごろと転げ回るというもの。Madey Snana(唾の風呂)と呼ばれ、毎年決められたお祭りの時に行われます。これによってDalitの人々のトラブルは解決し、病気も治るとされています。
インドの身分制度には多くの批判があり、特にアウトカーストの人々の差別についてはガンディーの時代から解消に向けて様々な努力がなされてきました。もちろん、そういった立場に立てばこの習慣は非常に「非人間的で」「到底受け入れられない」もので、当然のように社会活動家らからの批判が巻き起こりました。
それを受けて2011年にはこの奇習は地域の副長官N.S. Chennappa Gowda氏によって正式に禁止されました。しかし、Madey Snanaが行われる予定の前日に事態は急変します。
なんとDalitの一部、Malekudiyaと呼ばれる人々がMadey Snanaの禁止を解かなければ祭りに関する全ての役割をボイコットすると脅迫。この奇習に反対した活動家が襲撃される事件を受けて副長官は禁止を取りやめ、なんと25000人ものDalitの人々が毎年の通り残飯の上を転げまわりました。
この奇習の熱心な信奉者である占星家のKabyadi Jayarama Acharya氏の説明によると
「ここで食事をするBrahminはSubramanya(別名スカンダ、カルティケーヤ。シヴァ神の次男とされる)の化身であり、彼らの唾はSubramanyaの唾なのだ。(伝説上の)クリシュナの息子Sambaもスカンダのプラーナ(生命力)の現れとされる残飯の上を転げまわったことでらい病が治ったとされている。私も16歳の時にMadey Snanaを行なって皮膚の疾患が治った。これはサイコセラピー的な解決法で、アーユルヴェーダにそのルーツを持っている。科学的な根拠がなければ禁止するべきではない。」
とのこと。外国から見ると(恐らく多くのインド人にとっても)非常に差別的で人間の尊厳を踏みにじる悪習に感じますが、25000人の信者たちにとってはかけがえのない宗教行事。ここには私達が普段考える人権や平等とは全く別のシステムが脈々と動いているようです。
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