関東では減少の一途をたどるアナログレコード。宇田川町のレコ屋街の壊滅などを始め、ビギナーが触れられる機会は減る一方です。ですが、関西にはクラブやカフェなどのシーンで根強く、野太くアナログレコード文化が息づいています。このシリーズではそんな関西のアナログレコードのある「現場」をめぐり、現状をレポートしていきます。
2012年頃からぽろぽろと聞かれ始めたアナログレコード復活の声。iTunesを始めとするダウンロード販売が全盛となる中でCDショップ、レコード屋の苦戦、撤退、廃業などが相次いで伝えられる中で、アナログレコードの独特の音質やジャケットデザインなどが「逆に」ウケていると伝えられていました。
それでも関東では宇田川町を始めとしてクラブDJが訪れるようなレコード屋も多くが閉店し、PCやタブレット、iPhoneを使ってのDJが話題になるなど、時代の流れは変わらないかに見えていました。しかし一方、京都ではDJといえばアナログレコードが断然強く、昔ながらの喫茶店やおしゃれなカフェに行ってもターンテーブルが備え付けてある情景は珍しくありません。そして街中に20件を超える中古レコード屋が存在しています。
話を聴き進むうちに、京都のみならず関西圏ではいまだにアナログレコードの文化は根強く残っており、クラブや喫茶店、カフェのみならず自宅でアナログレコードを楽しむ愛好家たちも大勢存在しているとのこと。押し寄せるダウンロード販売の荒波の中、確固たる文化を誇る関西アナログレコード・シーンとはいったいどんなものなのでしょうか?
シリーズの最初に訪れることになったのは、京都の繁華街の一角、河原町御池の地下街「御池Zest」で7月20日に開催された「第一回・京都レコード祭り」。以前BUZZAP!でも取材したアートフリマ「夜ふかし市」をオーガナイズする中古レコード屋「100000tアローントコ」の店主、加地猛さんが京都市内の同業者たちと共に主催したイベントです。
京都レコード祭り・公式ブログ
もちろん関西にもダウンロード販売や音楽離れの波は訪れています。レコードやCDが年々売れなくなってきているのは間違いありません。ただしその中で京都の中古レコード屋は自ら打開策を立ち上げることを決めました。その第一弾が今回の「京都レコード祭り」。京都市内の20店舗以上のの中古レコード屋が参加し、クラシック、ジャズ、ロック、ソウル、ヒップホップ、レゲエを始め、不思議なレコードを満載、CDも販売します。
さらには初心者向けにレコード超入門ミニ講義 『触ったり、買ったり、かけたり』として、どうやってレコード屋に行ってレコードを買えばいいのかのトークショーもあり、アナログレコードを使ったDJやLiveなど盛りだくさんの内容になっています。
当日13時過ぎに会場の御池Zestの河原町広場に到着すると、そこにはもう大勢のアナログレコードファンが大集結して真剣な眼差しで掘り出し物を探しています。
ダンボール箱に入った大量のレコード。手慣れた手つきでディグるお客さんたち。目が真剣です。
ダンボール箱前のスペースが空くとすっと誰かが滑りこんでディグります。無言の斬り合いと言ってもいいレベルの緊張感。
「レコ屋ってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ。 ダンボール箱の向かいでディグってる奴といつ喧嘩が始まってもおかしくない、 刺すか刺されるか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか」という声が頭をよぎります。
もちろん女子供であろうとファンはファン。年季の入った往年のレコードファンに負けていません。無言で攻めます。
そしてレジに並ぶ列。筆者が会場にいた3時間近くの間一度も途切れること無く列ができていました。完全に想定外のキャパ超えとのこと。
Tシャツやレコード用のクリーナーなども販売されています。
販売エリアの隣ではみぞ博士によるアナログレコード初心者のための講義が開催されていました。版の状態のランクから視聴の仕方、店員さんとのコミュニケーションなど、手取り足取り丁寧に解説。街のレコード屋さんのコミュニケーションスポットとしての機能の話などは非常に納得でした。
さらにはアナログレコードでのDJも入ります。季節柄浴衣の子供なども両親に連れられて遊びに来ていました。
その後はギターのライヴも。DJだけでなくライヴが入るというのは京都のクラブシーンらしい作り。ジャンルやプレイ形態にこだわらないごちゃまぜ感は独特の魅力です。
なお、筆者の戦利品はこちらの3点。
1点目はPenguin Cafe Orchestraの「BROADCASTING FROM HOME」。来日ツアー中に訪れた京都で見つけたハルモニウムを題材にした彼らの代表曲、Music for a Found Harmoniumが入っているのが高得点でした。昔このハルモニウムを捨てたのは誰かを探すという企画がどこかであったという噂を聞いたのですが詳細は不明。いつか跡を追ってみようと思います。
2点目は「Drum n' Bliss」という変ジャケの1枚。きっと怪しいマントラとニューエイジっぽいウィスパーボイスで「Love…Unity…」とかささやいてる変な音だろうと思って買ったのですが、意外や意外、ちゃんとアンビエント・エレクトロニカ楽曲としてしっかり聴けるクオリティでした。
裏ジャケこれですもん、期待しちゃいますよね。こんな不思議な掘り出し物を探せるのが醍醐味です。
そして3点目、やっぱジャケ買いは正義!ということで夏なのをいいことにおっぱい系エロジャケを求めて1時間以上に渡ってディグりまくった結果見つけた1枚がこちらの「THE BOSSA NOVA EXCITING JAZZ SAMBA RHYTHMS VOL.4」。ラテン系美女のおっぱいは言うことありません。ボサノヴァなのもよいですね。どれも60年代の録音からのコンピレーションでした。
…と、よく見たらどのジャケも脱いでますね。ええ、夏ですから。
今回の京都レコード祭りについては公式Twitterがテーマと感想を以下のようにつぶやいています。
苦戦がしいられているレコード業界ですが、昨夜は夢のような光景でした。『ダウンロード~デジタル音楽世代の若者にはパッケージソフト の魅力を伝えるべく、レコード世代の40代以降の大人には音楽への情熱を再び思い起 こしてもらうべく』という願いが少しだけ実現したのかもしれません。
— 京都レコード祭り (@kyotorecomatsu) July 21, 2013
アナログレコードは本当に復活していくのか、そして関西のシーンはどうなるのか。このシリーズではアナログ・レコード初心者としての立場から、いろいろなお店やアーティストにお話を伺っていきます。
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