ソフトバンクが200倍の通信量を処理できる「三次元空間セル構成技術」を公開実験、LTE-Advancedにも対応

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スマートフォンやタブレットの普及で年率2倍で増え続ける通信量。

このままでは東京オリンピックを迎える2020年には今の200倍にまで膨れ上がると試算されていますが、ソフトバンクがブレイクスルーにつながる新技術「三次元空間セル構成」の公開実験を行いました。

今回行われた研究開発の背景。周波数の効率利用や3.4GHz~4.2GHzといった新規電波資源の開拓を行っても、1つの基地局では通信量を処理しきれなくなる時代が近づいており、フェムトセルに代表されるような小さいエリアをカバーする「極小セル」を敷き詰める必要があるとされています。


高層ビルなどが密集する都市部などでは二次元平面ではなく、三次元方向にも対策が必要。しかし極小セルを打てば打つほど干渉が問題となり、極小セルを考慮した「三次元空間セル構成技術」が重要となるわけです。


ちなみに広いエリアをカバーするマクロセルと極小セルは同一周波数を使用。つまり確実に干渉対策が必要になるわけですが……


ソフトバンクはマクロセルと極小セルの間向けに「連携eICIC」「連携セル間干渉キャンセラー」、極小セル間では連携eICICに加えて「学習型ビームフォーミング」、そして基地局間ネットワークを連携制御といった技術を開発。今回開発された技術は総称して「ネットワーク連携干渉抑圧技術」と呼ばれます。


各種技術の詳細はこんな感じ。




そして今回は実際に室内およびフィールドでの公開実験が披露されました。





干渉抑制技術の詳細。同じ周波数同士の基地局の場合、エリアとエリアの境目で干渉が発生してしまい、通信できなくなるケースがしばしば見受けられますが、極小セルが密集させてもなお通信できるのが今回開発された技術です。


電波に指向性を持たせることで干渉を回避するビームフォーミング技術も採用。なお、ビームフォーミングは広域無線LANや地下鉄トンネル内でのWiMAXサービスなど、各社がさまざまな用途で用いられています。



実験装置の諸元。実験局用に割り当てられた3.3GHz帯・10MHz幅を使用します。



ネットワーク制御技術の詳細。干渉対策には基地局間での連携が必要ですが、これはネットワーク制御で同期される仕組み。屋外では従来通りGPSが用いられますが、屋内の極小セルに対しては携帯電話端末のように、ほかの基地局とパケット通信で同期を図る「リスニング」が導入されています。






そしてこれが公開実験の行われたソフトバンクモバイルのラボ。


極小セル、マクロセル装置などが実際に配置されています。




さっそく実験。





eICICが無い場合。極小セルの電波が届くエリア内に端末がある時は、マクロセル・極小セルともに高いパフォーマンスを出せています。


しかし極小セルのエリア境界ギリギリになると、パフォーマンスは劇的にダウン。


そしてeICICをオンにし、基地局同士を同期させると、境界ギリギリに近づいても快適な通信が可能になります。また、マクロセル・極小セルのいずれにリソースを割くのかもネットワーク側で制御可能。


いまひとつピンとこない人も多いと思われますが、動画で見ると分かりやすいかもしれません。

LTE-Advancedにつながるソフトバンクの「三次元空間セル構成技術」デモ - YouTube
)

続いてはセル間干渉キャンセル技術。




干渉キャンセルを行わない場合、エリアギリギリでは干渉が起きてしまい、通信はほぼ不可能になりますが、キャンセルを行った場合、たとえ極小セルのカバーエリアを拡大する新技術「CRE(Cell Range Expansion)」を利用しても、境界部分の干渉を最小限に抑えられるわけです。






ソフトバンクでは極小セル間の干渉対策実験を以下のような環境で実施。




ちなみにこのギザギザしたものは電波を遮蔽する壁の役割を果たしています。


触ってみたところ。意外と柔らかいです。


これがビームフォーミング技術を採用した極小セル。



端末はこのようにして可動式にすることで、「建物の壁に近づいた状態」などを再現します。



実際に行われたデモ。最初、右側の極小セルは端末の位置に合わせて上方向に電波を吹いていますが……


端末を動かすと、反対側の極小セルと向かい合ってしまう形に。


これでは干渉してまずい、とネットワーク側が検知して制御。その結果、左側の極小セルは上方向に電波を吹くようになりました。


デモの様子はこんな感じ。

LTE-Advanceにつながる技術、ソフトバンクの「干渉キャンセラー」デモ - YouTube
)

また、実際に各地に実験局を設置したフィールド実験も実施。基地局同士が連携することで、屋外でもオーダー通りのスループットを叩き出していました。










質疑応答は以下。

日経金子:
総務省の受託研究という話だが、はどのようにフィードバックされるのか。フィールドテストまでできているという話だが、実用化のメドは?LTEでも使えそうだがLTE-Advancedでの運用なのか。

ソフトバンク:
今回開発した「確実にスループットを上げる新たな技術を作る」という。将来的にはどんどんセルが小さくなる。時期は分からないがいずれ実装される。eICICはリリースの10からなので、定義上LTE-Advancedの扱いになる。LTEに入れることは可能だが、定義ではLTE-Advanced。

ケータイWatch関口:
周波数利用効率はどれくらい向上する?

ソフトバンク:
極小セルがたくさん打たれた中においても、周波数利用効率は2倍以上。

日経コミュニケーション堀越:
eICICのABSパターンはノーマルなのか、リファレンス信号が少ないものなのか。eICICの運用イメージは今回のデモで見せられたような運用が一般的に?

ソフトバンク:
実際のトラフィックを含めた形でスループットを上げるような形で運用していきたい。

堀越:
C-RAN構成は必要無い?

ソフトバンク:
マクロセルが聞こえるのであれば、我々の技術のほうが簡単であると考えている。

堀越:
マクロの信号を受けたほうがスループットがいいと思うが?

ソフトバンク:
極力マクロは避けて、極小セルの中で使いたい。干渉を消してでも極小を使って全体のスループットを上げたい。

堀越:
ビームフォーミングを使うということだが、ビームフォーミング可能な国内用のアンテナはあるのか。

ソフトバンク:
プリコーディングで指向性を持たせる仕組みなので、一般的なアンテナでも実現できると考えている。

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