魅力的な女性キャラクターが多数登場することで知られるスタジオジブリ作品。ですが、女性監督起用に対する姿勢に批判の目が向けられています。詳細は以下から。
問題となっているのはガーディアン紙によるスタジオジブリのプロデューサー西村義明氏らへのインタビュー。
全体としては既にジブリを退社している米林宏昌監督に対する「思い出のマーニー」とスタジオジブリ及び作品群に対するインタビューなのですが、その一部でありながらこの発言は「'Women are realistic, men idealistic': Studio Ghibli on why a director's gender matters(女性は現実的で男性は理想主義的、スタジオジブリはなぜ監督の性別を問題にするのか)」として標題にまでなっています。
インタビュアーが「今後ジブリは女性監督を起用するのか?」と問いかけたところ、西村プロデューサーは以下のように回答。
それはどういった映画を作るかによります。実写映画と違ってアニメーション映画は実世界をシンプルにする必要があります。女性はより現実的で日々の生活をうまく処理していくのが上手な傾向があります。一方男性はより理想主義的な傾向があり、ファンタジー映画にはその理想主義的なアプローチが必要なのです。私は男性監督が起用されることが偶然だとは考えません。
('Women are realistic, men idealistic' Studio Ghibli on why a director's gender matters Film The Guardianより引用・拙訳)
この発言だけで海外でセクシズム扱いされるのは言うまでもありませんし、最後の一言で今後のジブリの方針として女性監督よりも男性監督を起用していくと取られることは間違いありません。
世界に愛されるスタジオジブリだけに、海外の各メディアはこの発言に一斉に反応します。インディペンデント紙は「Studio Ghibli hires male directors because they have a 'more idealistic' approach to fantasy than women(ジブリは男性監督を起用する、なぜなら彼らはファンタジーに女性よりも「より理想主義的」なアプローチをするから)」として標題で問題視。
アニメやマンガに特化したウェブメディアの「Cartoon Brew」では「Studio Ghibli Producer Claims Women Are Too ‘Realistic’ To Direct Their Films(ジブリのプロデューサーは女性がジブリの映画を作るにはあまりに「現実的」過ぎると主張)」とされています。
同じくウェブメディア「NME」でも「Studio Ghibli producer makes sexist comments on fantasy filmmakers(ジブリのプロデューサーがファンタージ映画監督について女性蔑視発言)」とされ、明確にセクシストであるとされています。
一方、「The Verge」は「Studio Ghibli producer's sexist stance on directors is just part of the problem(スタジオジブリのプロデューサーのセクシズムは問題の一部でしかない)」とセクシズムである旨を明確に指摘しており、西村プロデューサーのスタンスをステレオタイプな女性観であり「Bullshit」だと断じた上で、アメリカ合衆国のアニメ業界はもっと酷い状況にあることを指摘しています。
日本国内ではこの程度でセクシズムだとは言われないかもしれませんが、海外に出れば当然日本の「常識」などは通用しません。もちろんアメリカ合衆国の現状の方が酷いじゃないかと言ってみても免罪されることはありません(そもそもインタビューを行ったガーディアンはイギリスのメディア)。
ガーディアン紙は紙面でスタジオジブリの女性キャラクターに対して極めて高評価を行っているだけに、かえってこの発言が際立ってしまった形になります。
本当にファンタジー映画について女性が現実的で男性が理想主義的だから男性が向いているのか?という問いについては、ファンタジー小説の傑作として世界中に知られる「ゲド戦記」の作家アーシュラ・K・ル・グウィンは女性であり、その「ゲド戦記」を箸にも棒にもかからない駄作に仕上げてル・グウィンに酷評されたのがジブリの男性監督、宮崎吾朗氏であることは指摘しておかねばならないでしょう。
早期の発言の撤回と謝罪が必要なのではないでしょうか?
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