なぜ人間は時に「いい人」を嫌い、攻撃してしまうのか

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いい人が「いい人だからこそ嫌われる」事があるのはなぜなのでしょうか?詳細は以下から。

◆時に嫌われる「協調的な善人」
他人を助け、正しいことをするいい人は基本的には愛されるものですが、常にそうだとは限りません。そして多くの場合、他人に害を為したり、協調性を欠いたり、他人の成果にタダ乗りする人が罰せられるものですが、いい人がその「いい人である」という理由故に罰せられたり批判されたりすることを私達は知っています。

実はこうした現象は実験経済学や社会心理学、人類学といった複数の学問分野でも「反社会的懲罰」「慈善家嫌い」として知られています。


参加者が協力的であるか利己的であるかを選択でき、お金で他人の行為に「懲罰」を行えられるリアルマネーを用いた経済ゲームでの実験によると、多くの場合「懲罰」は非協調的なメンバーに対して行われますが、20%程度は最も協調的なメンバーに対して行われています。

また非常に興味深い事にこのような「反社会的懲罰」「慈善家嫌い」は調査を行ったどのような社会でも見いだされたというのです。つまり、傾向の強弱はあっても人類に普遍的な行為だったことが分かったのです。

◆いったいなぜそんなことに?
では、いったいなぜそんなことが起るのでしょうか?

実はその理由は極めて単純で「お前がそんなにいいことをすると、比べて俺らが悪く見えるだろ」というもの。おそらく誰もが自分の人生の中でこのような場に(どんな立場であれ)出くわしたことがあるでしょう。

あるひとりが真面目に働いていると、比べてそれ以外の人がサボっているように見えてしまうため、最も賞賛されるべき人が他の賞賛される要素のない人々から煙たがられて排除されるというもの。

そうした賞賛すべきいい人がいた場合、周りの人の反応としては同じように努力していい人になろうとするか、「反社会的懲罰」「慈善家嫌い」として攻撃に走るかという事になります。

実際に子供であろうと大人であろうと、いい人の善行がいじめや仲間はずれの発端となるきっかけのひとつとして珍しいものではありません。


カナダのゲルフ大学で心理学の助教を務めるPat Barclay博士らはこの傾向を確かめるため、前述の経済ゲームに追加のルールを設けました。

それはゲームに全員がどれだけ全体の利益のための寄付をしたかを知る事のできるオブザーバーを参加させ、ひとりを協調的作業のパートナーに選べるようにするというもの。これによって参加者により協力的であるようにするという動機づけを行いました。

Barclay博士は、このパートナーに選ばれた参加者に「反社会的懲罰」「慈善家嫌い」が行われるという仮説を立てましたが、結果は通常に比べて5倍も「懲罰」が行われ、仮説は見事なまでに証明されてしまいました。

良き協力者がそれ以外の参加者を「比較的悪く」見せないための「反社会的懲罰」「慈善家嫌い」は効果を上げ、協調的な行動は抑制されました。

◆善行の抑制という大問題
これによって何が起るのか。もはやその答えはご存じの通り、善行の抑制です。

現実世界ではこの経済ゲームと違い金銭で他人に「懲罰」を与えることはできません。しかし何か良いことをした人を「偽善者だ」「売名行為だ」と罵り、ケチを付けて攻撃することで、そうした善行を抑制させることはご存じの通り。

そうした攻撃が容認されることで、善行をしようとする人を萎縮させ、善行の総量は抑制されてゆくことになります。もちろん「攻撃されたくらいで止めるならそもそもそれは売名目的の偽善に過ぎない」などと徹底的に善行を潰そうという追い打ちも掛けられますので、善行のハードルはさらに上がります。

お気づきの方もいるかもしれませんが、上記のような「偽善者だ」「売名行為だ」という攻撃は、同時に善行そのものの価値を「結局そんなものは偽物で、自己満足と他人の評価のためにやっているのに『善行』に偽装しているだけ」であると毀損します。

これによって「ゲスな本音をぶちまけ、善行などに興味を示さない方がより人間として本質的だ」という価値の転倒までもが引き起こされてしまいます。

日本の「90年代サブカル」の露悪趣味を筆頭とした「ぶっちゃけ至上主義」や「良識に反してタブーを破る俺スゴイ」といった歪んだ価値観はこのようにして育てられてきたとみることも可能でしょう。

元をたどれば「お前がそんなにいいことをすると俺らが悪く見えるだろ」という情けない心情から出発した「いい人嫌い」、いい加減人類は卒業すべきなのかもしれません。

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