今や急速にその数を減らしているレンタルビデオ店。映画をめぐるひとつの文化が生まれ、死んでゆく様子があまりにも克明に、残酷なまでに映し出されています。詳細は以下から。
レンタルビデオ店の棚の片隅で、ジャケットや裏表紙のあらすじを見てまったく借りるつもりのなかった名作を掘り当てた経験のあるミドル以上の世代は多いのではないでしょうか。
店舗ごとにちょっと癖のあるセレクション、ピックアップ作品や手書きポップにちらりと見えるこだわり、そんな中で新しい出会いに胸を高鳴らせるのはちょっとした宝探しでもありました。
日本でのレンタルビデオ店は、家庭用ビデオデッキの普及と共に80年代後半から増加しはじめて90年代には一台ムーブメントとなり、00年代に入るとDVDやBlu-rayへと記録媒体を変えながらも映画ファンのオアシスとして君臨し続けていました。
この辺りの初期のエピソードは「ホームシアター虎の巻」の記事「レンタルビデオ店の登場」「レンタルビデオ店の爆発的普及」に詳しく書かれています。
ですが10年代に入ってその勢いは陰りを見せ始め、サブスクリプションやオンデマンドと呼ばれるサービスが全盛期を迎えている今、わざわざ実店舗までDVDを借りに行き、見終わったら返すという手間を掛ける人は多くありません。
書店やレコード屋が減っていくよりも早いスピードで、半ば崩壊と呼ぶしかないような速度でレンタルビデオ店は減少しています。
こちらの動画はアメリカ合衆国発の巨大レンタルビデオチェーン「ブロックバスター」の実店舗の増減を1986年から2019年まで追い続けた動画。同社は90年代に日本にも進出していたため、覚えている方もいるのではないでしょうか(99年にゲオに事業譲渡し消滅)。
全米に拡大していったブロックバスターは00年代半ばごろから経営状況が悪化し、増加がストップ。Netflixなどに顧客を奪われて2010年9月に連邦倒産法第11章を申請して倒産しました。
その後2014年1月に約300あったアメリカ合衆国国内の全ての直営店を閉鎖し、フランチャイズ店のみが細々と営業を続けるものの、現在は動画に残った最後の1点であるオレゴン州ベンドの店舗を残すのみとなってしまいました。
この店舗は現在「The Last Blockbuster on the Planet(地球上最後のブロックバスター)」として、昔を懐かしむ人々が国内外から訪れる観光名所となっています。
とはいえこの店舗が懐かしさを味わうための場所であるならば、それはレンタルビデオという文化の墓標として残ったということになってしまいます。
紙媒体を扱う書店やアナログレコードを売るレコード屋が新しい価値を探して生き残りを模索しているように、レンタルビデオもまた何らかの価値を見つけて復活することができるのか、私たちは今そんな瀬戸際にいるのかもしれません。
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