【コラム】ドコモ新料金プラン「ahamo(アハモ)」の「月額2980円」にauやソフトバンクが対抗プランを即座に出せないワケ

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単純に「収益が減るから」では済まされない、根深い理由がそこにはありました。詳細は以下から。

◆ドコモ新プラン「ahamo(アハモ)」とは?改めてチェック
まずはドコモの報道発表資料から新プランをざっくりおさらい。

「月額2980円」「データ通信量20GB、超過後も1Mbps」「5分以内の通話定額付き」「ドコモの4G、5Gを利用可能(3G非対応)」が特徴で、追加料金不要で海外82の地域でデータ通信可能。新規契約事務手数料、機種変更手数料、MNP転出手数料も無料で2年縛りなどはありません。


ドコモショップでのサポートは受けられず、新規契約や契約後の手続き・相談などは全てオンラインで完結するahamo。

「ドコモの新プラン」と銘打ってはいますが、以下の点を踏まえると、本来サブブランドで展開する予定だったプランが政府やNTTの意向でそのような位置づけになったとみられます。

・発表直前まで報道各社が「サブブランド立ち上げ」と報じる
・政府が「サブブランドでは移行が進まない」としていた
・ドコモユーザーであってもプラン変更にMNP手続きが必要

◆auやソフトバンクが対抗プランを即座に打ち出せないワケ
月額料金、サービス内容ともどもかなり攻めたドコモのahamo。政府の要請に応える形でUQ mobileやワイモバイルブランドで新プランを発表したKDDIやソフトバンクが即座に値下げに踏み切れないのにはワケがあります。

参考までに月間20GB、超過後1Mbpsで月額3980円(UQ家族割適用で月額3480円)を打ち出したUQ mobileの「スマホプランV」はこんな感じ。


※編集部注:実は「スマホプランS」とWiMAX 2+ルーターを組み合わせた方が、「ギガMAX月割」でスマホと家庭のネット回線を合わせて月額5360円で済ませられるため、人によってはお得だったりします。


・各社の事情も無視、とにかく「値下げありき」で議論が進む
まず各社がahamo対抗プランを打ち出す上で妨げとなっているのが、ブランドの位置づけ。

ブランドごとに明確な役割付けを行っているKDDIは、メインブランドのauで携帯各社初となる「データ使い放題プラン」を前面に押し出しています。


政府はメインブランドの値下げを要求していますが、5Gへの移行でデータ通信量が増大し、絶え間ない設備投資が求められる中で使い放題プランを値下げするのは至難の業。民間企業である以上、市場の動向を見つつ採算を検討する必要があります。

さらに携帯電話料金値下げを担当する武田総務相はまだ提供が始まっていないサブブランドの新プランを引き合いに「移行が進んでいない」とメインブランド値下げをせっつくような人物。

 個別企業のコメントに関して、私の方からコメントは差し控えたいところでありますけれども、指摘された記事、私も読ませていただきました。非常にがっかりしました。我々が、なぜメインブランドの料金値下げに触れたのかを、もう少し理解していただきたいと思っております。
 サブブランドにおいて、低廉なプランを用意した。この選択肢の広がりに対して、私は一定の評価をいたしました。
 しかし、一向に、ここに皆さんが移ろうとしない。それはなぜなのかを多くの方々から意見を聞いたり調べたりしましたら、そこの間に大きな壁があったんです。

とにかく「値下げありき」で拙速に議論を進めていると言わざるを得ず、許認可権を盾に民間企業を強く縛ることで、かえって自由競争を阻害している感すらあります。

・NTTと政府しか得をしないドコモ完全子会社化、安易な追従で競争環境悪化も
そして一連の値下げ劇で、どうしても見過ごすことができないのがNTTによるドコモの完全子会社化

2014年にBuzzap!でお届けした記事「KDDIやソフトバンクがNTTのセット割解禁に戦々恐々とするワケ」では、携帯各社の基地局がNTTの光ファイバー頼みであることに触れた上で、以下のように解説しました。

つまり携帯各社がシェア獲得のため、血で血を洗う焦土戦のような値引き合戦を行うようなことがあったとしても、光ファイバー網を握っている限り、NTTには回線使用料が入り続けるため、すべてはNTTの手のひらの上での争い……ということになりかねないわけです。

また、携帯各社は今後、下り最大1Gbpsに達する次世代高速通信を実現するために3.4GHz~3.6GHzを用いた通信サービスを提供する予定ですが、同周波数帯はWiMAXやAXGP(2.5GHz)よりも建物内などに弱く、カバーエリアを稼ぐためには今以上に基地局を細かく敷き詰めるしかありません。

さらにスマホの普及で増大の一途をたどる通信量をさばくためにも、今後小セルないし極小セルの需要が高まるとみられますが、それらを支えるインフラも、やはりNTTの光ファイバーです。

要は「ドコモがどれだけ料金値下げで身を削っても、KDDIやソフトバンクから光ファイバー使用料が入るからNTTグループ全体ではオッケー」という話ですが、NTTとドコモが完全に一体となったことで、この懸念は6年越しに現実のものとなりました。

KDDIが東京電力の光ファイバー網を買い取り、ケーブルテレビ各社を傘下に収めて自前のインフラを構築してはいるものの、過疎地、山間部などを含めた日本全国津々浦々をカバーするNTTの光ファイバー網は電電公社時代の莫大な資本力を元に構築されたもの。どだい勝負になりません。

言い換えれば、

ahamoはドコモ単独ではなし得ない、NTTと一体化して初めて提供できたプランではないか

という点に尽きるわけです。

もしこの指摘が多少なりとも正しいのであれば、「官製ダンピング」と言われても仕方がないほど不公平な競争環境で、直接対抗できるプランを競合他社が打ち出すのは非常に困難。

各社が安易に追従してもどんどん体力が削られてゆくだけで、最後に残るのはNTTだけ……となりかねません。

短期的に見れば「携帯電話料金値下げ」という実績をアピールできる政府と、悲願のドコモ吸収を果たしたNTTが得をするものの、電電公社時代へ逆戻りするのと変わらないため、長期的に見ればユーザーも損をします。

◆NTTによるドコモ完全子会社化について、競合各社が寄せた意見をごらん下さい
このように、決して健全とは言いにくい競争環境の中で生まれたahamo。せっかくなのでNTTによるドコモ完全子会社化にあたって、KDDIやソフトバンク、楽天モバイルが総務省に出した要望書を紐解いてみましょう。


まず前提として、通信各社はドコモの完全子会社化を「NTTの一体化、独占回帰」と受け止めており、公正な競争環境の整備を求めています。


その上でNTT分割の経緯を再確認。移動体通信事業を担うNTTドコモは1992年に分社化されました。


光ファイバーなどのボトルネック設備を持つNTT東西とドコモを切り離すことで、公正競争が進められてきました。


それでもなお携帯電話のシェアはドコモが1位(43.1%)で、光ファイバーのシェアもNTT東西が1位(65.2%)。1位同士が合併すれば、スケールメリットを生かして競合他社を圧倒できます。


NTTのドコモ完全子会社化は、今までの流れに完全に逆行するものです。


ドコモ完全子会社化で音声通話、携帯電話、光ファイバー、プロバイダ事業において圧倒的優位に立ったNTTグループ。


当たり前ですが、このような状況では競争は停滞してしまいます。


光ファイバー設備で75.2%のシェアを誇るNTT東西。電電公社から継承した電柱、管路などのほか、全ての市町村に約7200の局舎を保有しており、対抗できる設備を民間資本で整備するのは不可能です。


光ファイバーの優位性が年々高まる中、NTTがドコモを完全子会社にしたことは非常に大きな意味を持ちます。


このような状況を改善するために必要なのがルール作り。まずどの事業者であれ、光ファイバー網を完全に同等の条件で利用できることが必要です。


NTT東西とドコモが一体化することがあってはならず、ボトルネック設備の接続ルールなどにより厳格な運用を求めています。


「ドコモが赤字になってもグループ全体でプラスにできればいい」という考えで、NTTが「同等条件」をうたいつつ光ファイバー卸料金を高額に設定する可能性についても釘を刺した通信各社。


なぜこのような問題点をすべてすっ飛ばしてドコモの完全子会社化を認めたのか、疑問は尽きません。



NTT分割による競争を推進していた政府が「携帯電話料金値下げ」を錦の御旗に突然180度逆行しただけに、どのような議論に落ち着くのかが非常に気になるところです。


一消費者として喜びたいところであるものの、それが競争環境そのものを壊すやり方で進められるのであれば、素直に歓迎しづらい携帯電話料金値下げ。

競争促進を目的に規制緩和を行った結果、1000を超える事業者が参入して一気にレッドオーシャンと化したMVNOや、第4の携帯電話キャリアとして参入した楽天モバイルすら過酷な状況に追いやるものですが、政府は「強いNTTだけあれば他は要らない」とでも考えているのでしょうか。

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