気が付けば私たちの日常生活にスマートデバイスが入り込み、名実ともに高度情報化社会がやってきました。ですが、そうした情報機器は便利である反面、私たちを監視する装置としても使えてしまいます。
この「スマートクッション」も、健康情報を測定し、アドバイスまでしてくれる福利厚生のはずでしたが…。詳細は以下から。
SNS上で違法であり不道徳だと大炎上してしまったのは中国、浙江省を拠点とするIT企業のHebo社。
きっかけとなったのは同社に努める女性社員の王さんの告発です。王さんを含めた10人の社員は会社の経営陣から、バイタルサインをモニタリングし、健康へのアドバイスを行うためとしてスマートクッションを支給されました。
王さんたち社員は、呼吸数や心拍数、座っている姿勢などの多様なデータを提供してくれる上に、長時間座りっぱなしだと立ったりストレッチしたりするようアドバイスしてくれるこのクッションを歓迎していました。彼女らはこのクッションを、社員の健康を気に掛けた会社からの福利厚生だと受け取っていたのです。
ですがある日、王さんは人事部のマネージャーから、前日の午前10時から10時半までなぜ席に着いていなかったのかと問われ、冗談交じりに今後もそうした態度を続けていると毎月の賞与をカットせざるを得ないと言われたのです。
王さんは、人事部が自分が離席していた正確な時間を知るにはスマートクッションのデータを見るしかないことに気付きました。
仕事中に裸にひん剥かれたような気になりました。勤務時間内の、どれだけ席に着いてどれだけ離席したのか、どんな気分だったのかといったすべてのパーソナルデータが経営陣に筒抜けだったのです。しかも人事部までがそのデータにアクセスを許されており、そのデータをもとに私たちを査定しようとしていたのです。
と王さんはSNSに投稿し、主要メディアもこれを取り上げるに至り大炎上となりました。この激しい非難の数々にHobo社はステートメントを出さざるを得なくなります。
Hobo社のスポークスマンはスマートクッションを社員らに支給したことは認めましたが勤怠管理用のモニタリングツールとしていることは否定します。
「私たちはスマートクッションをテストデータ収集のために使っただけでモニタリングのためではない」とし、市場テスト以前の開発中の試作品だったことを明かしましが、不審な点が多かったため炎上は止まりませんでした。
その中で21st Century Business Herald紙はこの件を調査し、スマートクッション使用への同意書が中国語ではなく英語のみだったことを明らかにしました。
同紙の所属弁護士は、この同意書では社内の他の従業員にデータを開示することを認めておらず、プライバシーの侵害で違法だと指摘。事前にデータを社内で共有することを告知した上で同意を得ていれば合法だが、母語ではない英語のみで同意を取っていることは悪質だと批判しています。
いかにも監視社会の中国らしいエピソードに見えますし、実際に中国の中学校では顔認証システムを用いた「生徒が授業に集中しているか」の監視なども行われています。
ですが、日本でも「笑顔でないと出勤できない」顔認証の出退勤管理システムやAIでまぶた監視しして居眠りを防止するシステムなどが話題になりました。
パナソニックは3年前に「社員がパソコンで仕事に使うソフトをいつ、どの時間帯に使っているかを記録してグラフで示す」サービスを開始しており、NECも「パソコンのカメラで操作する社員の顔を認証して、勤務の状況やパソコンの使用状況を合わせてグラフ化する」サービスを行っています。
新型コロナの影響でテレワークが推奨されている現在ではこうしたニーズも高まっており、「リモートワークサボリを無料監視」を唄うサービスなども出現しています。
不法な監視に対して今回中国では大炎上となりましたが、はたして日本同様の事件が起こった時、社会はどのように反応するのでしょうか。
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