自分の人格は簡単には揺るがない、多くの人がそんな風に思っているかもしれません。
ですがスマホアプリを使っているだけで、ほんの3ヶ月でも変わってしまうという研究結果が示されています。詳細は以下から。
◆人格は3ヶ月で変わる、しかもスマホアプリで
私たちの誰もが持つ人格特性。それは時には個性とも呼ばれ、人々の内面を形作っています。人は成長や経験の中でその人格を少しずつ変えてゆきますが、それには長い時間が掛かると考えられてきました。
ですが、チューリッヒ大学などの研究者らが新たにジャーナル「PNAS」に発表した研究結果によると、心理的メカニズムをうまく用いることによって、その変化は非常に早く、わずか3ヶ月ほどで引き起こすことができるのです。
研究者らは専用のスマホアプリPEACH(PErsonality coACH)を開発。これはいわゆるコーチングアプリで、チャット機能を備え、被験者にフィードバックや支援を行いつつ、望んだ成果をもたらすためのもの。
研究者らは現在一般的に採用されている5つの人格特性、開放性、誠実さ、社交性、思いやり、情緒不安定性に注目し、被験者がPEACHによって望ましい方向に人格特性が変わっていくかを調べました。
この実験には1500人以上が参加し、無作為コントロール治験が行われました。PEACHは日々、知識とフィードバック、自己反省のヒントを被験者に与え、振る舞いや資質を活性化させることで支援。
被験者は一定期間PEACHを利用し、その後の変化を査定するよう求められました。なお多くの被験者は自らの情緒不安定性を減らし、誠実さや社交性を増やしたいと望みました。
その結果、3ヶ月かそれ以上PEACHを使い続けた被験者の中で、自分の望んだ人格の変化に成功したとする人は対照実験の2ヶ月だけ使ったグループよりも増加していました。
この実験結果は基本的に自己評価を基本としていましたが、変化を実感した被験者の家族や友人からのレポートでも3ヶ月後には被験者の振る舞いに客観的な変化が見られました。なお、この人格の変化は実験終了から3ヶ月後も続いてみられていたとのこと。ただし、家族や友人からは「減らしたい人格特性」に関する変化はあまり多くなかったと報告されています。
研究に携わったチューリッヒ大学のMathias Allemand教授は「我々は人格の奴隷ではなく、日々の経験や行動パターンを意図的に変えてゆけるのだ」と指摘しています。
◆私たちの経験するSNSによる人格の変化
ですが実際には、現代の高度情報化時代に生きる私たちは経験的に比較的短期間に人格が変わることを知っています。
差別的なブログ記事やまとめサイト、YouTubeの差別動画によって、気が付いたら知人や家族がヘイトスピーチをするようになったという事例はこれまでも報告されてきました。
また昨年のアメリカ大統領選挙の際、Qアノン陰謀論に染まった友達がいきなりバイデン不正選挙やトランプ勝利、ディープステートの陰謀について熱弁し始めたという体験をした人もいるのではないでしょうか。
上記の実験は専用のアプリで行われましたが、例えば極右御用達とされたSNS「Parler」では、議事堂襲撃事件前にトランプ支持のリン・ウッド弁護士が「銃殺隊を召集しろ。最初はペンス(副大統領)だ」と暗殺を扇動、襲撃時に支持者らも「Parler」で連絡を取り合いながら「ペンスをまず殺せ」と投稿していました。
エコーチェンバー現象という言葉も知られるようになりましたが、ネット上で同じような意見や思想を持つ人に囲まれているうちに、その考え方や行動様式を当然と考えるようになって人格も行動も変わることは十分にあり得ます。
「我々は人格の奴隷ではない」かもしれませんが、容易に我々の人格を取り巻く情報や環境の奴隷となってしまう、私たちの持つ「人格」がそうした脆弱性をはらんでいることは決して忘れてはならないでしょう。
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