デヴィッド・ボウイの愛した京都の寺院「正伝寺」を訪れてみました


京都を愛し、一時期は住んでいたことでも知られるデヴィッド・ボウイ。そんな彼が愛した、洛北のはずれの小さな山寺を訪れてみました。

京都とデヴィッド・ボウイの深い関りはこれまでも多くの場所で語られてきていますが、ボウイがただの「京都かぶれ」ではないことを示すのが、彼が愛した「正伝寺」にまつわるエピソード。

ボウイは1980年に宝焼酎「純」のCMに出演しているのですが、京都での撮影の際に撮影場所として指示したのがこの正伝寺でした。


京都市に本社を置く宝酒造の当時の宣伝部長で、のちに京都副市長も務めた細見喜郎氏はボウイに指定されるまで「学生時代から25年間京都に暮らしていたが、この寺の存在は知らなかった」ことを明かしています。

なお、このお寺はシンガーソングライターの谷村新司も足しげく通っているということで、やはり本物を引き付ける魅力を持っているようです。

正伝寺があるのは京都市北区の西賀茂。三大葬送地のひとつ、蓮台野から北上した山腹に佇んでいます。金閣寺や今宮神社、上賀茂神社などから比較的近いのですが、歩いて行くにはちょっと距離があります。

京都駅からは9系統(西賀茂車庫行)の神光院前下車し、徒歩約10分で山門に到着します。レンタサイクルだと最後だけ少々上りです。こんな静かな住宅街の中を抜けていきます。

Googleマップだとちょっと分かりにくいのですが、この駐車場の場所が山門。隣のゴルフ場に迷い込まないように注意しましょう(迷い込みました)。


山門に到着しました。周囲にはお店などもなく、しんと静まり返っています。

一歩門をくぐると、そこはもう市街地ではなく完全に山の中です。

道なりに進み、ふたつ目の門をくぐります。

お地蔵さん、苔むした階段、杉と竹の林。風景の変わりように驚かされます。

階段を登っていくと正伝寺が見えてきました。正伝寺は正式名称を吉祥山正伝護国禅寺という臨済宗南禅寺派の寺院です。

目が覚めるような鮮やかな「青もみじ」です。おそらく秋も美しいのでしょう。

開けた前庭に鐘楼が。

リラックスしたカエルたちもいました。

拝観料400円を支払って中に入ると、すぐ目の前が枯山水のお庭になっています。ここは「獅子の児渡し庭園」と呼ばれ、江戸初期に小堀遠州が作ったとされています。

白砂とサツキなどの刈込だけが並んでおり、その刈込は右から七、五、三で配列されています。

最も大きな特徴は、白壁越しに比叡山を借景に取り入れていること。「比叡山を借景」というと岩倉の圓通寺が有名ですが、こちらはより高台から木々に囲まれた比叡山を臨むことができ、まったく趣が違います。

市内の喧噪もここまでは届かず、風の音や鳥の声の他に聞こえる音もなく、ひたすらに静寂に包まれながらお庭と比叡山を眺めることができます。

デヴィッド・ボウイがなぜここを愛したのか、廊下に座って景色を眺めているとその理由がなんとなく感じられることでしょう。これ以上は言いますまい。


なお、この廊下でふと上を見上げると、そこには「血天井」があります。関ヶ原合戦の直前、石田三成に攻められた伏見城が落城した際に、自刃した鳥居元忠らの軍勢の血痕が残った廊下の板を天井板に使っています。

手形や足形などがかなり生々しいためこれ以上の写真は載せませんが、気になる方は訪れた際にぜひじっくりご覧ください。

美しい枯山水とはある意味対照的ながら、いずれも京都の歩んできた歴史の重要な一幕。遠くに見える比叡山が信長に焼き討ちされたことも思い出すと、静かな山寺にも重厚な時の流れを感じられるかもしれません。

帰り道、竹林があるのを見つけました。

嵐山の竹林の道ほどは整備されていませんが、こちらもなかなか風情があります。

ということで、デヴィッド・ボウイの愛した正伝寺は街から遠くないにもかかわらず、静かな時間と比叡山を臨む枯山水を堪能することのできる山寺でした。

忙しくあちこちを回るついでではなく、長めに時間を取ってじっくりとこの空間を味わってみると、よりボウイがこの場所に強く惹かれた理由を感じ取ることができるかもしれません。

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デヴィッド・ボウイの愛した京都の寺院「正伝寺」を訪れてみました
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