色を「聴く」ために、頭にアンテナを埋め込みサイボーグになった色覚障害のアーティスト



とある珍しい色覚障害を持ち、すべての色を認識できないアーティスト。彼が選んだのは色を「聴く」ために頭蓋骨にアンテナを埋め込むという道でした。詳細は以下から。

ヴィジュアルアーティストのNeil Harbissonさんはすべての色を見ることのできない色覚異常を持って生まれました。2003年にこの手術を受けるまで、彼が生きてきたのは白黒のグラデーションが織りなす灰色の世界でした。

Harbissonさんの人生を変えたのはプリマス大学の人工頭脳学のエキスパート、Adam Montandon博士。博士はHarbissonさんの頭蓋骨にとあるアンテナを埋め込む手術を行いました。

このアンテナに取り付けられたセンサーが目の前の位置にあるものの色、つまり光の波長を計測し、波長によって異なる周波数の音に変換、頭蓋骨の骨伝導によってHarbissonさんの内耳に届くようになっています。

色と音階の対応表は以下の通り。


Harbissonさんは10年以上に渡ってアンテナを付けっぱなしにしており、完全にアンテナによって色を「聴く」ことができるようになっただけではなく、ある時点からは色の「聴こえる」夢を見るまでになっています。この時Harbissonさんはアンテナからもたらされる感覚と自分が本当に一体になったと感じたと言います。

さらに、Harbissonさんはアンテナによって捉えられた色を「聴く」だけでなく、レディーガガの楽曲やヒトラーの演説といった音を「色として聴く」ことまでできるようになりました。

Harbissonさんは現在ヴィジュアルアーティストとして活動しており、そうした音楽やスピーチを肖像画として表現しています。例えば以下のふたつの肖像画はキング牧師の有名な「私には夢がある」のスピーチと、ヒトラーの演説です。どちらがどちらでしょうか?


正解は2012年にHarbissonさんがTEDで行ったスピーチの中で明かされています。


しかし、Harbissonさんのアーティストとしての情熱はこれだけには留まりませんでした。なんと、人間には認識できない赤外線と紫外線をこのアンテナで検知できるようにアップデートさせてしまったのです。

これによってHarbissonさんは赤外線と紫外線を「聴く」という人類を超えた超感覚を獲得したことになります。新しい科学技術を用いて人間の身体と認知能力を進化させようという思想をトランスヒューマニズムと呼びますが、Harbissonさんはまさにその先駆的な事例になったということ。いわゆるサイボーグです。

これはHarbissonさんも自称しており、2010年に人がサイボーグになるのを助け、テクノロジーによる感覚の拡張を勧めるサイボーグ基金を設立、人類のサイボーグ化の推進を行っています。

人間の能力を超える義肢も誕生していますが、こうした感覚や認知機能を拡張するデバイスが一般的になっていくのも時間の問題かもしれません。

This Man's Implanted Antenna Allows Him To Hear” Color IFLScience

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