Photo by NASA Goddard Space Flight Center
以前BUZZAP!では地球が寒冷期に向かっているかもしれないという研究をお伝えしましたが、現在の太陽活動状況からも同様の可能性が懸念されていることが示されました。18世紀にも小氷期と呼ばれる時期は存在しており、人類の歴史にも影響を与えています。もし寒冷化が起きると地球と人類はどうなるのでしょうか?
11月18日、SankeiBizは「太陽に元気なし…寒冷化予兆」と題された気になる記事を掲載しています。
太陽に元気なし…寒冷化予兆 11年周期の磁場転換起きず、黒点も最少 - SankeiBiz(サンケイビズ)
太陽の活動は11年周期で変動しており、今年はそのピークである極大期に当たります。この際には北極と南極の地場が入れ替わる「極域磁場転換」が起こり、黒点も多く発生するはずなのですが、今年はこれまでとは様子が大きく違っているとのこと。
現時点では「極域磁場転換」はまだ発生しておらず、黒点も極めて少ない状態となっています。それだけではなく、太陽の赤道に近い低緯度地帯に磁極が現れるという、観測史上例のない「太陽極域磁場の4極化」も昨年10月の時点で確認されています。
ニュース - 科学&宇宙 - 太陽両極の磁場異変を確認 - ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト(ナショジオ)
こうした太陽の活動の異常によってすぐに地球が寒冷化することは考えにくいとされています。しかし、いま見られる太陽活動の異変は過去に発生した小氷期、マウンダー極小期(17世紀中頃から18世紀初頭)やダルトン極小期(18世紀末から19世紀初期)にも似ているとされています。
こうした小氷期には地球の気温は低下。多くの場所が厳冬に見舞われ、夏らしい夏が訪れない年が続きました。このため飢饉が頻発し、経済が停滞。ヨーロッパでは魔女狩りなどの社会不安も増大しました。
17世紀半ば、スイス・アルプスの氷河は徐々にその版図を低地へと広げ谷筋に広がる農場を飲み込み村全体を押し潰していった。氷河が河川を塞き止め、決壊による洪水に襲われた村も多い。テムズ川やオランダの運河・河川では一冬の間完全に凍結する光景が頻繁に見られ、人々はスケートや氷上縁日(フロスト・フェアー)に興じている。1780年の冬にはニューヨーク湾が凍結し、マンハッタンからスタッテンアイランドへ歩いて渡ることが可能であった。アイスランドでは海氷が何マイルにもわたって島を取り囲んで長期間に渡って港湾を封鎖し、漁業や交易に打撃を与えた。
この厳冬の到来は、大なり小なり人々の生活に影響を与えている。飢饉が頻繁に発生するようになり(1315年には150万人もの餓死者を記録)、疾病による死者も増加した。アイスランドの人口は半分に減少し、グリーンランドのバイキング植民地は全滅の憂き目を見た。小氷期の影響は、この時代の芸術にも見ることができる。例えば、フランドルの画家ピーター・ブリューゲルは往時の村落を多岐に描いているがその多くは雪に覆われた風景を呈している。
日本においても東日本を中心にたびたび飢饉が発生し、これを原因とする農村での一揆の頻発は幕藩体制の崩壊の一因となった。
(Wikipediaより引用)
なお、小氷期の発生については、太陽活動の低下だけではなく、火山活動の活発化もその原因とされています。太陽活動の低下が火山活動を誘発するわけではないため(少なくとも現時点では関連付けられていません)、現在発生している太陽活動の異変のみで直接小氷期の到来を予測することはできません。
ただし、スマトラ沖地震や東日本大震災を始めとする巨大地震の頻発によって地球が地震の活動期に入ったとも言われており、今後火山活動が活発になる可能性も十分にあります。
では、現代においてマウンダー極小期のような小氷期に突入した場合、どんな影響が考えられるでしょうか。
厳冬、冷夏が続くと考えた場合に一番問題になるのは農業です。不作や飢饉が起これば農作物が高騰し、社会不安は増大します。それに伴い衛生状態が悪化すれば貧困層を中心に疫病の流行も考えられます。場合によっては社会体制の崩壊の遠因ともなるでしょう。
港湾の凍結などは漁業や流通など、高緯度地域を中心に地域経済に打撃を与えますし、海水温の変化が海中の生態系にも影響を与える可能性があります。暖房のための石油やガスなどの燃料の高騰も起こるでしょう。降雪や凍結が増えることになればインフラの再整備などが必要となり、さらなる経済的な圧迫が起こります。
現代文明は17,8世紀よりはるかに進んでいますが、70億という膨大な人口を有する上に、貧富の格差や頻発する紛争などの社会不安の要素を抱え込んでいることも事実。寒冷化のもたらす小さな影響が大きな社会変動のきっかけとなる可能性も否定できません。
これから起こるのは地球温暖化なのか、それとも地球寒冷化なのか、まだまだ人類には見極められていません。しかし、日本でも40度超えの猛暑日を記録し、巨大台風がいくつも上陸し、関東平野では竜巻が頻発するようになっています。いつまでも同じような気候がずっと続くという考えは捨てたほうがよさそうです。
(Photo by NASA Goddard Space Flight Center)
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