2010年に行われた全国ツアー「ひふみよ」からおよそ2年、東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアルにて全12回に渡って行われる小沢健二のコンサート「東京の街が奏でる 小沢健二コンサート 二〇一二年三月四月」が3月21日に第一夜を迎えました。その様子をネタバレ満載で事細かにお伝えします。
ひふみよ 小沢健二 Kenji Ozawa Official Site
2012年3月21日から4月16日にかけて行われる12公演のすべてが同じ会場という珍しい形式となった今回のコンサートですが、前売料金9000円のチケットは即完売。ファンの期待の高さがうかがえます。その熱意へ応えるかのように、会場では第一夜の開場時間である17:30よりも2時間早い15:30からコンサートグッズが先行販売されていました。
そして17:30になり、開場。入り口からすぐ左手に無料のクロークがあるので、荷物が気になる人は利用するのが吉です。会場内に設けられたグッズ売り場の奥にはソフトドリンクやアルコールが楽しめるドリンクブースがあります(ハーゲンダッツ有り)。
◆コンサートの始まり
開演時間の18:30が近づくとザワザワしていた開場が徐々に静かになっていき、ステージ上に黒衣が現れました。あの、黒装束に黒頭巾を着用した本物の黒衣です。彼らがメトロノームを十数個設置し、「カチッカチッ」という音が幾層にも重なって洪水のようになります。“時”を演出しているのでしょうか?ひとつ、またひとつとメトロノームが止まっていき、15分ほど経った頃に最後の一つを黒衣が手で止めました。暗転。
暗闇の中を誰かが歩いてきて、ステージに置かれたオルゴールを回し始めます。流れるのは2ndアルバム「LIFE」の最後に収録されている“いちょう並木のセレナーデ(リプライズ)”です。「こんばんは」という男の声と共に明かりが点くと、そこにはスチャダラパーのBOSEの姿が。巻き起こる拍手の中、「今日はラップするわけじゃないよ」と前置きをし、「『東京の街が奏でる』では日替わりで東京のミュージシャンがオープニングモノローグを担当する」と説明します。そして小沢が書いた文章を朗読し始めました。
「音楽は“時の芸術”。音楽は食べ物などのように、生きるために必要なものではない。音楽は贅沢な、別に無くても良いもの。でも音楽が鳴っている限り、幸せを待ち望める」といった内容。そしてオペラシティという慣れない会場でも緊張せずに楽しめるようにと、ステージ上のスクリーンに影絵が映されて「この立っている鹿が出たら皆さんも立ちましょう」「座っている鹿が出たら座ってください」とレクチャーが有りました。「女の子だけが歌うサイン」や「男の子だけが歌うサイン」もあります。最後にもう一度オルゴールを鳴らしてBOSEは退場(オルゴールはLIFEで使った実物)。暗転。
明かりが点くと小沢健二が中央にいます。オフィシャルグッズのTシャツを着て首にはスカーフ、下は細身のジーンズ。立ったままモノローグを語り始めます。ちょうど「ひふみよ」のような感じです。「ガリレオと振り子の話」からメトロノームの話に繋げ、新曲“東京の街が奏でる”を披露。小沢はアコースティックギターを弾きながら歌います。
◆序盤
コーラス担当でおなじみの真城めぐみやエレキベースの中村キタローが登場し、“東京の街が奏でる”からそのまま“さよならなんて云えないよ”へ。曲間でチェロの遠藤真理やヴィオラの南かおり、奥村愛……と続々登場してフルメンバーが揃います。
次の曲は“ドアをノックするのは誰だ?”。アコースティックなアレンジですが、観客の多くがドアノックダンスを踊っていました。「歌えるところがあったら歌ってください」と、メトロノームのリズムに合わせて“いちょう並木のセレナーデ”へ。その後は「知っている方は是非」と言い、聞きなれないイントロを演奏(Small Circle of Friendsの“波よせて”のイントロのような感じ)。そこから“今夜はブギーバック”が始まったのですが、なんと、スチャダラパーが担当するラップパートを小沢が担当(!)意外すぎる小沢のラップに会場は大盛り上がりです。最後は「Eclectic」収録“あの大きな心”のコーラスで締め。
◆中盤
メンバー紹介を挟み、観客を着席させてモノローグが始まります。「現代は短い文章の時代。短い文章では相手が既に知っていることしか伝わらない。新しい意見が伝わりづらい。言葉に関わる者としてこの危険を言わなければいけないと思う」といった内容で、漁師や家族の例えを交えて語りました。次の曲は“あらし”。続いて「ひふみよ」ツアーで初披露された“いちごが染まる”。そしてメトロノームの音が鳴る中、公式サイトで予告されていた“それはちょっと”を歌いました。
続くモノローグでは、スポーツの例えを出しながら「信じること」について話しました。内容は「日本では信じることが軽視されている。“信者”という言葉はネガティブな意味。世直しは常に宗教の形で行われる。自分が国の支配者なら“信じること”はネガティブなものという空気を作る。僕は信じるものの味方です」というようなもので、そこから「神様を信じる強さを僕に/生きることをあきらめてしまわぬように」というフレーズが印象的な“天使たちのシーン”。今日のハイライトのひとつでしょう。続く“おやすみなさい、仔猫ちゃん!”では「どこ行こうどこ行こう今」というコーラスを観客に歌わせ、そこからシングル「指さえも/ダイスを転がせ」に収録されている“back to back”です。
ここで再度モノローグ。「小さい頃飼っていたオウムが“宿題やった?”と話しかけてきたが、あれは母親のイタズラだったのだろう」という箇所が印象的でした。そこから“東京恋愛専科”“ぼくらが旅に出る理由”“強い気持ち・強い愛”とお馴染みのナンバーを立て続けに披露し、一呼吸置いてから“春にして君を想う”を歌いました。
◆終盤
「僕はインド映画が好きで、よくある“輪廻オチ”が堪らない」というユーモラスな話や「自分の中から自然と生まれてくる『130グルーヴ』の曲」の話などのモノローグを挟み、“暗闇から手を伸ばせ”“愛し愛されて生きるのさ”と130グルーヴの曲を連続で披露したのですが、“愛し愛されて生きるのさ”ではスクリーン全面にLIFE期の小沢を撮った映像が流され、大きな黄色い声が上がりました。
そして猛烈な拍手の中、のびのびと“ラブリー”がスタート。「完璧な絵に似た」というひふみよバージョンのコーラスで観客と演者が一体となり、その勢いのまま、小沢は今日初めてエレキギターを手にして「ブチ切れたいと思います」と呟いた後、なんと“ある光”を披露(!)前回のひふみよツアーではワンフレーズのみだったこの曲が始まると、会場の興奮も最高潮に。小沢も感極まったのか、所々で声をつまらせ、涙ぐみながら歌っていたのが非常に印象に残っています。そして、少々鼻をすすりつつ“神秘的”という新曲へ。
拍手に包まれる中、小沢はメンバーの名前を読み上げ、そして「さっきの曲でコンサートは完結しているのですが……本当にありがとう」と観客へのお礼を口にします。「日替わりでメンバー3人に話を振る」として真城めぐみ、遠藤真理などへ話を振ったものの、結局残りの全員にも話しかけ、和気あいあいとした雰囲気に。さらには二階席にいた服部隆之や、同じく客席のBOSEに「僕達のロマンスもバレてる」と話しかけ、物販のTシャツや「我ら、時」が出来上がった経緯などを語りました。最後の曲は、他のメンバーが退場した後に小沢がアコースティックギター1本の弾き語りで“東京の街が奏でる”。盛大な拍手とメトロノームの音を浴びながら小沢も退場し、およそ3時間30分におよぶとても充実したコンサートとなった「東京の街が奏でる」第一夜が終わりました。
小沢健二 ある光 - YouTube
■3月21日セットリスト
01:東京の街が奏でる【新曲】
02:さよならなんて云えないよ
03:ドアをノックするのは誰だ?
04:いちょう並木のセレナーデ
05:今夜はブギーバック/あの大きな心
モノローグ
06:あらし
07:いちごが染まる
08:それはちょっと
モノローグ
09:天使たちのシーン
10:おやすみなさい、仔猫ちゃん!
11:back to back
モノローグ
12:東京恋愛専科
13:ぼくらが旅に出る理由
14:強い気持ち・強い愛
15:春にして君を想う
モノローグ
16:暗闇から手を伸ばせ
17:愛し愛されて生きるのさ
18:ラブリー
19:ある光
20:神秘的【新曲】
21:東京の街が奏でる【新曲】
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