KDDIの子会社、UQコミュニケーションズの「UQ WiMAX(2009年サービス開始)」やNTTドコモの「Xi(2010年サービス開始)」に加え、新たにイー・モバイルの「EMOBILE LTE」、ソフトバンクモバイルの「Softbank 4G」が相次いでサービスインした2012年。
いずれも従来の3G通信よりも圧倒的に高速で、さながら「次世代高速通信競争」の様相を呈しているわけですが、それぞれのサービスのうち、本当に選ぶべきものはどれなのかを徹底比較してみました。
※2012年7月23日に更新しました。
◆各サービスの内容は?
月額料金、契約年数、通信速度、通信量制限、人気のモバイルルーターで高速通信を利用した場合のバッテリー駆動時間など、各サービスの詳細は以下。なお、すぐさま上限に達してしまうことから月額料金については基本的に2段階定額プランを除外し、「最も安い定額プラン」を選択しています。
UQコミュニケーションズ「UQ WiMAX」
最安月額料金:3880円(「UQ Flat年間パスポート」契約時)
契約年数:1年
通信方式:モバイルWiMAX
通信速度:下り最大40Mbps、上り最大15.4Mbps
通信量制限:なし
モバイルルーターの最長駆動時間:10時間(AtermWM3600R、Mobile Cube)
備考:親会社のKDDI(au)のエリアも利用できる「Wi-Fi WALKER DATA08W」は月額4935円(プロバイダ「au.NET」利用料金込み)で展開
NTTドコモ「Xi(クロッシィ)」
最安月額料金:5460円+プロバイダ料金(「定額データプラン フラット バリュー」に「定額データ スタンダード割2」適用時)
契約年数:2年
通信方式:LTE
通信速度:下り最大75Mbps、上り最大25Mbps(下り最大37.5Mbps、上り最大12.5Mbpsエリアも)
通信量制限:7GB(超過すると月末まで128kbpsに減速)
モバイルルーターの最長駆動時間:6時間(L-09C)
備考:FOMAエリアでも利用可能。通信量制限は2012年10月から適用され、7GBを超過した場合、2GBごとに追加で2625円支払えば通信速度を維持できます。
イー・モバイル「EMOBILE LTE」
最安月額料金:3880円(「LTEフラット にねん」契約時)
契約年数:2年
通信方式:LTE
通信速度:下り最大75Mbps、上り最大25Mbps(下り最大37.5Mbps、上り最大12.5Mbpsエリアも)
通信量制限:10GB(超過すると月末まで減速)
モバイルルーターの最長駆動時間:9時間(GL01P、GL02P)
備考:既存のEMOBILE G4エリアでも利用可能。通信量制限は2014年5月から適用され、10GBを超過した場合に速度を維持するために支払う追加料金などは未定。
ソフトバンクモバイル「Softbank 4G」
最安月額料金:6510円(「4Gデータし放題フラット」契約時、4Gデータ通信基本料525円込み)
契約年数:2年
通信方式:AXGP
通信速度:下り最大76Mbps、上り最大10Mbps
通信量制限:7GB(超過すると月末まで128kbpsに減速)
モバイルルーターの最長駆動時間:3.5時間(101SI)
備考:Softbank 4GエリアおよびULTRA SPEEDデータし放題エリアで利用可能(いずれも携帯電話の3Gエリアとは別)。また、8月1日開始の「4Gデータ通信バリューキャンペーン」を適用すると月額3880円に値下がりする代わりに通信量制限は5GBに。通信量制限は2012年10月から適用され、超過した場合、2GBごとに追加で2625円支払えば通信速度を維持できます。
◆最も安価なのは「UQ WiMAX」と「EMOBILE LTE」
各サービスを比較する上で、非常に大きなファクターである「料金」は、月額3880円でプロバイダ料金込みの「UQ WiMAX」と「EMOBILE LTE」に軍配。まさに圧倒的です。また、8月1日からキャンペーン料金適用で「Softbank 4G」も並ぶことになります。
いずれも通信端末の代金を一部ないし全額負担してくれるプランを利用しても通信料金が変わらない上に、「UQ WiMAX」は2年縛りが原則の他社と異なり、1年縛りを採用。長期契約を負担に感じるユーザーに優しいサービスとなっています。
◆エリア面ではFOMAエリアでも使える「Xi」が圧倒的優位に
続いては利用できる「エリア」ですが、やはり都市部を中心に次世代高速通信を利用できるだけでなく、対応エリア外では速度が落ちるものの、国内最大となるFOMAエリアを合わせて利用できる「Xi」に圧倒的なアドバンテージがあります。
「Xi」に対応したモバイルルーター「L-09C」本体。FOMAエリアを合わせて使えば「圏外」という最悪の事態を回避できるため、地方在住のユーザーや全国各地を出張で移動するビジネスユーザー、そして帰省や観光などで都心から離れることがあるユーザーなど、幅広い層に向いているのではないでしょうか。
なお、いずれの次世代高速通信サービスも現在順次エリア拡大中であるため、最新のエリア状況は公式ページを逐一チェックした方が良さそうです。
◆モバイルルーターの駆動時間は「UQ WiMAX」「EMOBILE LTE」の2強に
パソコンやタブレット端末、携帯ゲーム機、高機能音楽プレーヤーなど、無線LAN対応機器が普及する中、それらを出先でもインターネット接続できるため、高い人気を誇るモバイルルーター。
バッテリー駆動時間は使い勝手にダイレクトに影響し、駆動時間が短いモデルだと「頻繁に充電しないと通信できない」という煩わしさが生まれるわけですが、国内最長となる10時間駆動モデル「AtermWM3600R」「Mobile Cube」の2機種を展開している「UQ WiMAX」と、サービス開始に合わせて9時間駆動モデル「GL01」「GL02P」の2機種を展開した「EMOBILE LTE」がツートップに。
UQ WiMAXの「AtermWM3600R」本体。WiMAXの送信出力を2倍に向上した「WiMAXハイパワー」に対応したことで、従来よりもいっそうつながりやすく、途切れにくくなったのが特徴です。
使い勝手はそのままに、9時間駆動を実現したイー・モバイルの「GL01P」。microSDに保存したデータを無線LAN機器間で共有することもできます。
ちなみに「Softbank 4G」対応の「101SI」はモバイルルーターとしては短い方となる3.5時間駆動で、同梱されている外付けバッテリーを利用することで計9時間駆動をうたっていますが、セットで持ち歩くとかさばる上に、充電する時に本体と外付けバッテリーの両方を充電しないといけないというデメリットがあります。
◆実は大事な通信量制限、「業界最速」に踊らされると痛い目に
これらのサービスを比較する際、実は最も大きな要素となるのが「通信量制限」という側面。
次世代高速通信サービスは家電量販店などでパソコンとのセット販売が行われているほか、一人暮らしのユーザーなどに「手軽に導入できるブロードバンド回線」として売り込まれている例がよく見受けられていますが、インターネットを利用するユーザーであればあるほど、通信量制限は大きく関係してきます。
とりわけ昨今は「YouTube」や「ニコニコ動画」といった動画共有サービスが普及し、「Hulu」をはじめとしたHD画質対応の月額制映像コンテンツ配信サービスの展開も進んでいるわけですが、固定回線と同じ感覚でそれらのコンテンツをガンガン視聴しているとあっという間に通信量制限の上限に達してしまい、「2GBあたり2625円」という追加課金が発生する可能性は十分に考えられます。
以下は最も通信量制限の厳しい、キャンペーン料金適用時の「Softbank 4G(月5GB=5000MB)」を例にした場合の計算式。もし理論値の20分の1にあたる、下り最大3.8Mbps(毎秒0.475MB)で通信したとしても、1ヶ月あたり約175分、つまり1日あたり6分程度通信しただけで通信量の上限に達してしまうことになるわけです。
5000MB÷(0.475MB×60秒)=175.44分
つまり業界最速の通信速度で、業界で最も通信量制限の厳しい「Softbank 4G」は、通信量制限に達するのも業界最速……というわけですが、そのような観点で考えると、「Softbank 4G」の2倍となる10GB制限の「EMOBILE LTE」、そしてそもそも通信量制限を課していない「UQ WiMAX」は「モバイルブロードバンド」という言葉にふさわしいことになります。
◆次世代高速通信サービス、本当に選ぶべきなのは?
以上の観点から、各ユーザーに向いている通信サービスを挙げると以下のようになりました。自分のライフスタイルに合わせた最適な通信サービスを選ぶ際の参考にしてみると良いのではないでしょうか。
・全国各地を飛び回るビジネスマンや地方在住者など、特にエリアに気を使いたいユーザー
国内最大エリアのFOMAも使える「Xi」
・とにかく通信速度重視、スペックのみを追い求めるユーザー
下り最大76Mbps、業界最速の「Softbank 4G」
・自宅のブロードバンド代わりに使いたい、特に通信量制限を気にせず使いたいユーザー
通信量制限がない「UQ WiMAX」
・安くて速くてエリアもそこそこで、長時間駆動のルーターを使いたい……という、ぜいたくなユーザー
価格とエリア、端末、通信量制限のバランスが程良い「EMOBILE LTE」
地下など、エリアの対応度合いでイー・モバイルに若干引けを取る代わりに通信量制限が無い「UQ WiMAX」
・2013年版
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