私たちLGBTにとってのゴールデンウィークはどういう存在だろうか。もちろん、セックスのかきいれどきである。マンネリ化したいつもの定食屋、泥水しか出てこない古井戸……そんな状態になったハッテン場に、新鮮な食材や飲用可能な水が地方から移動してくるという絶好の時期なのだ!
今年のゴールデンウィーク前半はうっかり部屋の改装(ブルーシートの補強など)を手掛けてしまったためまったくハッテン活動ができず、最後の土日に私はすべてをかけていた。数日前からマカを摂取するなどして股間に気合いを入れていたのだ。
明日からの仕上げに今日もマカを二粒……そこに知人の編集から一本の電話がきた。
『あんた、東京レインボープライドって知ってる?』
「なんとなく知ってます。壇上で暴言やビンタやハイヒールが飛び交い、組織が分裂して、ホモやレズやオカマや女装が街を練り歩いて、真夏の東京を恐怖のドン底に陥れるという秋田のなまはげを模したプロレス興行ですよね?」
『情報が古いわよ。今のレインボープライドは気負いすぎたリブ釜や頑張りすぎた女装のせいで一般人が今一つドン引いちゃうようなこともなくて、とてもいいイベントになってるんだから。そもそも真夏じゃなくてゴールデンウィークの開催だし。今度の土日よ。行く?』
「イヤですよめんどくさい。ぼくはハッテン場行きますんで、取材がんばってください」
『あんたも取材するのよ! すっぽかしたらぶっ殺して腎臓チャイニーズマフィアに売り飛ばすからね!』
「ギャー!マカが無駄になっちゃう!」
◆5月7日、快晴。
「取材はパレードだけでいいじゃない!土曜日はハッテン場行かせて!」という絶叫も『逆に日曜日は人が多すぎて取材どころじゃないから、今日こなきゃダメよ!』と却下されてしまった。
レインボープライドに来る人というと、やっぱりあれだろうか。
気負いすぎたリブ釜。頑張りすぎた女装。我が物顔のGOGO。
そしてそれらを冷めた表情で見つめ自らを上に置こうとするイカホモ軍団たち。
そんな背筋がゾッとする人種が会場を埋め尽くしていると思うと、思わず回れ右して駅に戻り逆方向に向かい、いつもの台東区のハッテン場に逃げたくなってしまう……。
嫌々ながら足を踏み入れた代々木公園だが、ホモやレズやオカマや女装のお祭りと身構えてたわりには、いたって普通な雰囲気。私が足を運ぶのは初めてではなく数回目だが、明らかに今までで一番規模が大きく、人が多いぶんキテレツ感が薄められている。壮観なのが場内を埋め尽くしたブースや出店。10年以上前はうら寂しさも感じたものだが、一巡しただけでは把握できないほどの量。
◆(一方的な)宿敵、現る
うろうろしていると、「OUT IN JAPAN(5年間で1万人のLGBTポートレート撮影を目指すカミングアウト・フォト・プロジェクト)」と「グッド・エイジング・エールズ(同プロジェクトを主催するNGO団体)」のブースをいきなり発見。
OUT IN JAPANのしゃらくさいブース
私たちのようなゼニゴケホモ(ブス・貧乏・友だちゼロ)とは真反対のシャイニーゲイ(イケメン・高収入・友だち多い)の代表である。ちなみに私は某サイトの原稿で、グッドとその代表・松中権の名前を出すとことごとく添削されている。私の宿敵……。
放火でもしてやろうとこっそり虫眼鏡を取り出してカラフルカフェのパンフレットに太陽光を集めていると、いきなり現れたのが松中権!
やばい!現行犯逮捕されちゃう!
逃げる私!追いかける松中権!
激しい殴り合い!そして抱擁と熱いキッス!
とまあいろいろあった後にガッシリ握手をして、私は思いっきり魂を売ったのだった。
グッド・エイジング・エールズ代表松中権氏。このあと殴り合いをしました
後ろにイケメンがいたので盗撮しようと思ったらカス二匹に邪魔される。左は実行委員会のちろかつ氏
先日急逝された前田健氏への寄せ書きも。私のやつが訴訟レベルでひどい
実行委員会のブースではレインボーグッズも販売。田亀源五郎氏『弟の夫』の特製バッジも
なぜお前がいる?と思ったら、レインボープライド公式キャラクターのトビーと同じ方のデザインだそう。クスリ摂取したような瞳孔が開いたまなざしはなるほど一緒です
◆やり手ババアに捕まる
なんだか今回の目的は果たした感じがするのでとっとと帰ろうと思ったら私の名を呼ぶ声が。振り向くと、ババア女装、いや、ブルボンヌ嬢だった。彼女が経営している2丁目のCAMPY!バーも出店していたのだった。
ババア女装の「や~相変わらずかわいい~」という営業トークに「女装に金なんか出すもんか」と固く思ってたが、ブースの中の店子はガチムチのイケメンばかりそろえていて、ついドリンクを頼んでしまう。商魂たくましいババア女装だ。ちなみに翌日ババア女装は母親とその恋人を会場に連れていた。これがアライというやつなのだろうか。家庭崩壊をもくろんで私が母親の恋人に色目を使ったことを付け加えておこう。
ぼったくりバー(campy!)のやり手ババア(ブルボンヌ)につかまる
右のサセコさんは最初「おいおい、通りすがりのおばさんが乱入しちゃったよ~」とフレームアウトしてましたごめんなさい
◆パレード前日はステージイベントめじろ押し
パレード前日の今日はフェスタといってステージでのイベントがメイン。学芸会に毛が生えたようなものからちゃんとしたプロのものまでそのレベルは様々。だが、これに関しては10年以上前に見たときのほうが鬼気迫っていた気がする。パンクやヒップホップでも初期のほうがヒリヒリしてエッジがきいているように。
混沌の中からの魂の叫び。GALEの歌しかり、ピンク・ベアリーヌのポエムしかり、G.O.レボリューションのラップしかり……きらびやかなステージ上からふと目を閉じると、在りし日の彼らの姿がまぶたの裏に思い浮かぶようだった(嘘)。
NETFLIXブースのイケメンスタッフ。「ブスに撮ってやれ」と思ったのにイケメンの輝きには私のネガティヴパワーが効かなく、本日のベストショットレベルのフォトジェニックさに……
同性ウェディングの宣伝ブースだが、きよ彦とレイフ・ギャレットみたいなカップルじゃなくて後ろの松にピントが合ってるのが気になる
電通のアライ応援ブース。設計ミスでカラオケ店に機材が入らなかった荒井注をサポートしようという意図らしいです。嘘です
TENGAのブースもあり。品行方正な出店ばかりが増殖する中、がんばってほしい
本日前半の司会はバディ出身のトランスジェンダー・アロム奈美江嬢とホラー系ドラァグクイーン・エスムラルダ嬢。私の写真の腕が意外といいせいか、アロム嬢が無駄に美人に、そしてエスムラルダ嬢のホラー色が薄まってしまうという残念な結果に(残念言うな)
真弓瞬×若林佑麻with天才劇団バカバッカ。元気あってよかったです
否応なしに股間が強調されてしまう金のパンツで登場の南浩平。町あかりの曲良かった
男の娘アイドルユニット最先端ガールズ。今一つ完成度が高くないところが魅力かも……
榊原舞花&西澤芽衣。元気あってよかったです
ハナメガネ。元気あってよかったです
真面目なパネリングもありました
つい脱出して昼飯がてら隣でやってたカンボジアフェスを見物に。西新宿パンティーズやちあきホイみを見逃すという大失態(そうでもない)
昭和のアイドルソングで狂乱するデブ。「うわ、またきっついドラァグが出てきたな……」と思ったら真の女性のアイハラミホ
今やノンケに最も知られているゲイのひとりコレステロールタクヤ氏。無駄にいい曲で無駄に歌も上手く無駄にいいステージだった(無駄言うな)
IX(ナイン)。「川島海荷が脱退する前のステージがここで見られるの!?」と思ったが男性セクシーダンスユニットでした。小学生くらいの男の子がかぶりつきで見ててちょっと心配に
後半の司会はビンタショックから10年以上かけて立ち直った福島光生氏
同じく後半の司会のGyuqo嬢
『男と女のラブゲーム』をステージで熱唱中です(嘘)
後でチェックして無駄に福島光生の写真が多い事実に、「俺、福島光生イケるんだな……」と悔しい気分に
劇団ANDROGNY
タルタルギーニャス
ベルリン産京都育ちのダンスポップユニットApotheke。藤井隆やtofubeatsの支持を受けると聞いたが、想像通りのカイリー・ミノーグ直系の四つ打ちディスコポップで女装とのステージング含めてとても良かった
東京ゲゲゲイ。V系に通じる感じ。追っかけもいた
明日のパレードへのフロートの準備も万端
会場には奴隷ちゃんもいました。LGBTの品行方正色が強まってる中、頼もしい存在
奴隷ちゃんにほどこしを与える私。ツイッターにうpしたら「こんな輩がいるからゲイが誤解される!」とプチ炎上
(文/写真 サムソン高橋)
・サムソン高橋(@samsontakahashi)
ゲイ雑誌「SAMSON」編集部出身のゲイライター。ゲイ雑誌「G-men」などで世界のハッテン場を探訪したコラム「ALWAYS UNPROUD」などを連載後、同じくSAMSON出身でG-menでも連載していた漫画家・熊田プウ助と「世界一周ホモのたび」シリーズ(ぶんか社)などを刊行中。
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