色によって人間の気分が変わる事はよく知られていますが、その習性を応用したピンクの牢屋が物議を醸しているようです。いったいどういうことでしょうか?詳細は以下から。
赤い色を見ると食欲が増したり攻撃的になり、青い色を見ると食欲が減退したり落ち着いた気分になる。緑色はすがすがしく、灰色は憂鬱な気分に。
こうした話は以前からインテリアや内装を決める際の基準としてはよく知られており、生活の中で体験したことのある人も多いでしょう。
こうした色彩の実生活への応用のひとつとして、スイスの刑務所では囚人達の攻撃性を下げる効果があるとして、牢屋の色を落ち着いた「沈静のピンク」に塗るという案が採用されています。
ですが、心理学者らの一部はこうした方法を屈辱的であり、性のステレオタイプ化であり、人の心を操作していると批判しています。どういうことなのでしょうか?
そもそもこのアイディアの発端は1970年代にAlexander Schauss博士によるもの。Schauss博士はピンク色の牢屋が囚人の攻撃性を抑制するとして、人間の行動に対する色彩の力を実験。
ピンク色は通常幸福や同情心と関係があるとされ、同時に弱さや女性性との関係も指摘されています。
Schauss博士に影響を受けた海軍オフィスのGene BakerとRon Millerが交流施設の壁を明るいピンクにしたところ、収容者の振るまいが劇的に変化して大人しくなったと報告したこともあり、1980年代には複数の刑務所で採用されました。
ですが、鎮静効果があるとされたこの「Baker-Miller Pink」にはそうした効果がない事をSchauss博士が実験で示唆。その30年後に心理学者のOliver Genschowが無効である事を確認しています。
一方、明るいピンク色だった「Baker-Miller Pink」に変わって2011年にスイスの心理学者であるDaniela Späth博士がより落ち着いた色彩の「沈静のピンク」を見いだします。
この「沈静のピンク」はスイスの10の刑務所で採用され、4年後には刑務官らによって囚人に特筆すべき暴力性の低減が見られたことが報告されました。Späth博士は同時により早いリラックス効果もあることを指摘しています。
この「沈静のピンク」はスイスを飛び出してドイツの複数の刑務所でも採用されているとのこと。Späth博士は空港のセキュリティエリアや学校、精神病院でも採用すべきだと提案しています。
ここまでなら色彩の人間に及ぼす影響の見事な応用事例ということになりそうなのですが、話はここで終わりません。
スイスの元受刑者はイギリスのテレグラフ紙に対し、「まるで『小さな女の子の寝室』のような牢屋に入れられるのは極めて屈辱的だった」と話しています。
また、ピンクが女性性や弱さと関係づけられるのはステレオタイプ化であり、差別的であり、性差別者の所業だとしています。
ジェンダー研究の学者のひとりは囚人をピンク色の牢屋に入れておくのは屈辱的で下劣な行為だと批判しています。
「沈静のピンク」の牢屋が攻撃性の抑制という実際的な効果を上げている以上、この措置には警告を意味する看板に黄色と黒が用いられるのと同様の妥当性があると言えます。
その妥当性を前にピンクと「小さな女の子」なり「女性性や弱さ」を関係づけて屈辱的で下劣な行為と批判するのであれば、いったいその性的な「差別性」はどこから発生しているのでしょうか?
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