2006年に導入された新たな記録方式「垂直磁気記録方式(PMR)」を用いることで、ついに4TBモデルが市場に並ぶこととなったHDD。
しかし同方式を用いたHDDの容量増加には限界があり、今後数年で頭打ちになるとみられていますが、その限界を打ち破り、HDDの容量を5~10倍に引き上げる新技術「熱アシスト記録方式(HAMR)」が実用間近であることが明らかになりました。
「CEATEC JAPAN 2012」のTDKブースでは、垂直磁気記録方式に代わる新たなHDDの記録方式「熱アシスト記録」についての解説が行われていました。
HDDなどの記録メディアは磁性を持った粒の集合体ですが、高密度化するために単純に粒のサイズを小さくすると熱安定性が低下し、磁気を使ったデータ記録がうまくいかなくなります。そこで磁気と熱を使い、高保磁力材料に安定してデータを書き込めるようにするのが熱アシスト記録です。
TDKは新たに自社製の「近接場光発生素子」をHDDのヘッドに組み込んだ「レーザー搭載型熱アシストヘッド」を開発。
これにより現行の垂直磁気記録方式の限界とされる、1平方インチあたり1.5テラビット(125ギガバイト)を大きく上回る、「1平方インチあたり1.5テラビット(187.5ギガバイト)」の記録容量を実現したとしています。
また、TDKはHDDの記録密度を引き上げるための技術を他方面で保持。
同社の説明員は熱アシスト記録方式によってHDDの記録容量は5倍にも10倍にも引き上げられると解説しており、気になる実用化の時期は2014年ごろになるとしています。
そしてこれが熱アシスト記録方式を採用したHDDの試作品。
試作品はビデオカメラでモニタリングされており、モニターを通して見ると、ヘッド部分の先端が赤く光っているのが分かります。
高信頼性・低消費電力を誇るSSDの大容量化・低価格化によって、優位性がゆっくりと薄れつつあるHDD。しかし記録容量を今までとは比べものにならない勢いで引き上げられるのであれば、コストパフォーマンス面で再びSSDに大きく差を付けられるようになることも十分に考えられます。
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