今年6月に完全通話定額を盛り込んだ「カケホーダイ&パケあえる」を提供開始したNTTドコモ。
旧プランを継続しているauやソフトバンクより料金が高くなるにもかかわらず、iPhone 6商戦すら新プランのみで押し通そうとするなど、MNPでの利用者獲得を諦めているのではないか……とすら思わせる部分があることを前編でお伝えしましたが、後編ではその真意に迫ってみました。
◆新プラン移行を押し進める理由は「通話定額でドコモ(NTT)が一番儲かるから」
・通話料金の仕組みを再確認、重要なのは「接続料」
ドコモが通話定額を押し進める理由を紐解く前に、まず確認しておきたいのが、通話料金の仕組み。
こちらの記事でも解説されていますが、仮にドコモユーザーが他社ユーザーに電話をかけた場合、ドコモは他社に回線の利用料金にあたる「接続料(アクセスチャージ)」を支払う必要があります。
つまりユーザーが支払う通話料金には接続料が含まれており、携帯各社が展開している自社間通話無料サービスは、他社へ接続料を支払う必要が無いからこそ実現できているわけです。
・実は結構えげつないドコモの通話定額
前述の仕組みを踏まえた上で、次に見るべきなのがNTTグループのシェア。これはNTTドコモとNTTの光ファイバーサービスのセット割導入を懸念する各社が作成したものですが、NTT東西が固定回線の76%、NTTドコモは携帯電話の45%と、NTTグループが非常に大きなシェアを占めていることが分かります。
このため、ドコモユーザーが携帯に掛けると約2人に1人は接続料を支払う必要の無いドコモユーザー、固定に掛けても約4人に3人は同じグループのNTT東西ユーザーとなり、接続料を自社グループ以外に支払うケースのほうが圧倒的に少なくて済むわけです。
また、「完全通話定額になることで、音声通話収入が減る」というデメリットもありますが、9月から通話定額を必要としないユーザーに対しても基本料金の高い通話定額プランへの加入を半強制にしたことで、料金収入が底上げされるため、ドコモはあまり困りません。
そして極めつけが通話定額に追従したKDDIやソフトバンクモバイルはユーザーが通話すればするほど接続料が出ていくばかりで、圧倒的なシェアを持つドコモおよびNTT東西は接続料収入で潤う一方……という点。
スケールメリットがあるからこそできる荒技で、電電公社時代からの巨人・NTTならではの、かなりえげつないやり方ではないでしょうか。
◆ぶっちゃけドコモ自体はMNPで負けても構わない?
このように一人勝ちできる通話定額にこだわるドコモですが、やはり気になるのが「通話定額を必要としない人をないがしろにするような施策によって、MNP転出が悪化しないのか」という部分。
同社はiPhone 5s/5cに参入した2013年9月すら純減し、翌月に純増に転じたものの、他社より1桁少ないなど、MNP流出が深刻な影響を及ぼしていました。
ドコモが公開した2014年4~6月の契約数。前年同期と比較して5倍以上にあたる、46万純増です。
MNPはマイナス9万。iPhone参入や新プランのおかげで改善しているように見えますが……
試しに同社の2013年度(2013年4月~2014年3月)のiモード/spモード契約数をまとめてみたところ、なんと1年間で68万ものフィーチャーフォン、スマートフォンが解約されていることが判明。
さらに地域別の契約増減をまとめると、関西や九州では純減し、他の地域でも1~3万件程度の純増にとどまるなど、ほぼ成長がみられない一方で、関東・甲信越エリアだけ155万7600件の純増という特異な増え方をしていることも明らかに。
なお、関東・甲信越エリアだけ契約数が異常に膨れ上がっているのは、日本通信やOCN、IIJmioといった、NTTドコモの回線を用いたMVNO(仮想移動体通信事業者)の契約数が一括カウントされる地域であるためです。
他の地域の状況や、スマホ・フィーチャーフォン契約が減り続けていること、MVNOへMNPすることも可能(その場合、ドコモにMNPしたとカウントされる)であることを考えると、iPhoneを導入してもなおドコモ自体からはユーザーが流出しており、MVNOが獲得した純増やMNPが契約数を押し上げていると考えたほうが自然なわけです。
つまり今回のかたくななまでの通話定額推進は、「契約数獲得やMNP対策はMVNOに任せて、ドコモ自体は自社およびNTTグループが儲かる通話定額でしっかり利益を出せるようする」という方向へのシフトを意味しているのではないでしょうか。
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