レイシズムの萌芽がサルにも存在していた事が明らかに

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Photo by Antony Stanley

世界中でレイシズムに基づくヘイトクライムが吹き荒れるようになっていますが、その源流はサルまで辿れることが明らかにされています。

6月に発生した米オーランドのゲイクラブでの乱射事件、イギリスのBrexit以降急増した移民への攻撃、日本で未だに行われる在日コリアンへのヘイトスピーチなど、レイシズムに基づいた差別や排除、ヘイトクライムのニュースが途切れること無く報じられています。

ではいったいこのレイシズムというのはどこから始まったのでしょうか？人種差別や女性差別、奴隷制など、人類史の中に常に顔を見せる差別と排除はどこまで遡れるのでしょうか？新しい研究によると、それは人類発祥以前であるということが報告されています。

イギリスとイタリアの研究チームが旧世界霊長類と呼ばれる、バブーンやマカク、ベルベットモンキー、ゲレザ、フサオマキザルを含む15種類のアフリカに生息するサルの行動について既存のフィールドワークのデータを検証しました。

これらの研究で調べられたのは複数の群れがテリトリーの争いや狩りを通じて遭遇した場合の態度や行動について。チームが重視したのは遭遇によってどの程度「グループ間競り合い型競争（IGCC）」と呼ばれる競争が起こるかということ。これは資源が不十分な際、勝った側が必要なものを取り、負けた側が不十分な資源しか手に入れられない競争のことで、敵意の強さを測定できます。チームはまた、IGCCとそれぞれの群の中での協力体制、利他性、友好度の相関関係にも注目しました。

チームの仮説は、他の群れに対する憎悪と攻撃がそれぞれの群れの中のここの結びつきを強化しているというもの。より強い結びつきは餌をシェアの増加や毛づくろいの頻度の上昇から観察できると考えられました。根気のいる分析の結果、チームはそこに「まるで人間の集団に見られるような」明確な相関関係があると結論づけました。

行動学者である主任研究員の英リンカーン大学のBonaventura Majolo博士は「こうした同じグループの構成員に対して向社会的な態度を取る一方で、他のグループの構成員に攻撃的になるといういわゆる「ムラ意識」は、進化の地平から見れば人間のレイシズムや排外差別主義の核心とも呼べるものだ」「こうした特徴は人類の進化の中で我々の祖先が長い争いの期間を経て培ってきたものだと長い間考えられてきた。「ムラ意識」とは外的要因に対抗してグループ内の結合と協調性を高めるものだからだ」とステートメントの中で指摘しています。

なお、この研究によると、オスよりもメスの方が他グループへの攻撃性とグループ内での親密さや利他性の相関関係が強かったとのこと。これは普通のオスは競争で勝ってもボスザルから多くの見返りを得られるわけでは無く、メスは競争で勝った際の戦利品の分配をボスザルからより平等にもらえるというサルの群れ独特の事情があると考えられています。

なお、レイシズムの起源がここまで古いということは、現代の人類社会にレイシズムがあっても仕方が無いということにはなりません。それだけ古くからこびりついてきたレイシズムをここまで克服できたからこその現代があるということです。

時計を100年巻き戻すことを想像してみてください。その時にはアメリカ合衆国にさえ女性にも黒人にも参政権はありませんでした。ナチスドイツが障害者を「安楽死」させたT4作戦や600万人とも言われるユダヤ人が虐殺されたホロコーストが起こされたのはそこからさらに50年後の1940年代です。

冒頭に述べたように、21世紀の現代に再びレイシズムは猛威を振るうようになっていますが、それは決して新しいものでは無く、人類史にはびこりながらもようやく克服され始めていたもの。ここでレイシズムを許容してしまうのは、サルの時代へと続く遙かな過去に向かっての退行であることはしっかりと認識されるべきでしょう。

“Us versus them” social traits may have evolved in monkeys before humans

_Us Versus Them_ Root Of Racist Behavior Found In Old World Primates _ IFLScience

（Photo by Antony Stanley）