1964年に世界で初めてメインフレームに絵画を描かせたデジタルアートの先駆者、川野洋を知っていますか?
今では当たり前になっているデジタルアートとAIに関し、半世紀以上前に極めて先駆的な役割を果たした日本人がいます。詳細は以下から。
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最初は軍事用として開発されたコンピューターは、発展につれて科学的な研究や事務処理など、人類の多様な活動に使われるようになってきています。もちろんその中にはアートという極めて人間的な活動も含まれていました。
今やコンピューターグラフィックスやDTMはもちろん、漫画やイラストを描くのにも日常的にPCやタブレットが用いられ、彫刻やオブジェも3Dプリントされる時代になりました。
しかし、こうした動きが始まったのは半世紀以上前のこと。そんな中に世界で初めてメインフレームと呼ばれる大型コンピュータを用いて絵画を「描かせた」日本人が存在しました。
日本の哲学者にして美学者として知られる川野洋は1925年に中国東北部撫順市で生まれました。1951年に東京大学文学部哲学科を卒業後、1961年から都立航空工業短期大学で研究助手及び講師として勤務します。
C・E・シャノンの情報理論をふまえたマックス・ベンゼの「情報美学」に触れ、科学者らがコンピューターを使って音楽を作曲していることを知った川野は、その間の1964年にオランダの抽象画家、モンドリアンを彷彿とさせる「デジタル・モンドリアン」と呼ばれるようになる最初のコンピューターグラフィックス作品を作成します。
これはメインフレームに複雑な数学的アルゴリズムをプログラムすることで、コンピューターが「美」をプログラムすることが可能であるかを確かめようとした、と言えるでしょう。実際に川野はこれらの作品がプリントアウトされるまで、正確にどんな物が出力されるか知ることはできなかったのです。
川野は2012年に他界する前、自らの全ての資料をドイツのZKM(Zentrum fur Kunst und Medientechnologie Karlsruhe)に寄贈しており、ZKMの公式サイトからは川野洋の回顧展の様子と作品のいくつかを収めたイントロダクション動画(ドイツ語)を見ることもできます。
BUZZAP!ではこれまでもGoogle DeepMindや自動作曲など、AIによるアートの可能性を取り上げて来ましたが、その黎明期にコンピューターによる美の創造の可能性を追求した日本人哲学者・美学者が存在したことは忘れてはならないでしょう。
Pioneer Japanese computer artist donates archives to German museum _ Arts _ DW.COM _ 18.06.2010
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