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動物の特徴だと考えられていた「脳」が植物にもあることが分かりました。もちろん私たちがイメージする脳とはいろいろと異なっています。詳細は以下から。
人間の特徴である知性を形作る脳。それは動物の持つ特徴であり、植物に脳は存在しないとずっと考えられてきました。しかしその定説が覆ることになるかもしれません。
植物はシンプルにはるか何億年も昔から存在してきたと考えられがちですが、陸上の木々よりもサメの方が歴史が古く、花を咲かせる被子植物の登場は白亜紀頃でアロサウルスよりも新しいなど、動物と同様に長い進化を経て現在の形になったものです。
バーミンガム大学の研究チームの最新の研究によると、そうした進化の中で獲得されたもののひとつに「脳」があります。ただし、その脳は動物の持っているような脳とは異なり、ひと揃いの細胞群からなる、ある種のコントロールセンターの役割を果たす部位です。
植物の胚の中で、「脳」は植物のライフサイクルという観点から決定的な役割を果たすことが分かりました。最も特筆すべきは、この「脳」が発芽のトリガーとなるということ。寒すぎる冬のうちや、暖かくなって競合相手の増加した夏になってからではない、完璧なタイミングでの発芽をこの「脳」が司っているのです。
研究チームはシロイヌナズナを用いて始めて「脳」を発見、それらに含まれる細胞群が大きく2種類であることを突き止めました。ひとつは種子の休眠状態を保たせようとするもの、もうひとつは発芽を促すものです。
この様子をリアルタイムで観察することは困難だったため、最初は数学的モデルによって生物学的なプロセスを予見する生命情報科学が用いられました。
この結論からホルモンのやりとりが発芽のプロセスをコントロールしていることを突き止め、研究チームは遺伝子操作したシロイヌナズナを用いて「脳」の細胞が顕著に相互接続していることを確認しました。生体電気の信号が「脳」の細胞間で盛んにやりとりされており、2種類の細胞群がある意味「会話」していることが分かったのです。
意思決定が1系統ではなく2系統によって行われている理由は、それぞれが周囲の環境の状況に対して異なる「意見」を持っているからだとのこと。そして発芽は双方の「コンセンサス」が得られた時にのみ起こります。
この植物の「脳」は動物の脳とは全く違い、ある種二大政党制の議会のようにも見えます。人間であれば両側から天使と悪魔が囁き合うというシチュエーションがありますが、天使と悪魔の直接交渉によって発芽という極めて重要な瞬間が決定されるようなもの。
もし植物に「意識」があるとしても、それは動物の意識とは全く違ったものになりそうです。
Scientists discover plant 'brain' controlling seed development _ EurekAlert! Science News
Scientists Discover Plants Have _Brains_ That Determine When They Grow _ IFLScience
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