遺伝子組換え作物は収穫量が増加する上、有害物質も減少するという研究報告


諸悪の根源のように忌み嫌われる遺伝子組み換え作物ですが、一度先入観を捨ててみる必要があるのかもしれません。詳細は以下から。

「なんだか怖い」「気持ちが悪い」と、多くの人から嫌われ、忌避される遺伝子組み換え作物。科学的に安全が確認されたものだけが食品などに用いられているとされますが、それでも表示をチェックして購入するかを決めるという人も少なくありません。

では実際に遺伝子組み換え作物はそうでない作物と比べてどのように違うのでしょうか?私たち人類の身体に悪影響を及ぼすものなのでしょうか?もちろんどの遺伝子をどのように組み換えるかによって影響は違うはずですが、これまで21年間に実際に育てられてきた作物についての研究を見てみることにしましょう。

イタリアのInstitute of Life SciencesのElisa Pellegrino博士らがジャーナル「Scientific Reports」に発表した研究は1996年から2016年までの21年間に発表された6006の査読済み論文のメタ分析を行ったもの。博士らはこれらから研究の求める高い水準に合致した76の論文を採用しています。

それによると、遺伝子組み換えトウモロコシは遺伝子組み換えを行っていないものに比べて5.6~24.5%収穫量が増加していました。さらには人間や動物にとって毒となる物質の濃度に関してマイコトキシン(カビ毒)で28.8%、フモニシンで30.6%、thricotecensで36.5%減少していることが分かりました。

この研究で用いられた遺伝子組み換えトウモロコシのデータはアメリカ合衆国、ヨーロッパ、南アメリカ、アジア、アフリカ、オーストラリアなどの地球上の各地域で栽培された11699の穀物や加工品の品質等に関する報告によるもの。

また採用された研究の中には、遺伝子組み換えトウモロコシからは除草剤の有効成分が10.1%、殺虫剤の有効成分が45.2%減少していたことを示すものも存在していました。

なお、この研究には幾多のバリエーションが存在する遺伝子組み換えトウモロコシを一緒くたに扱っているという欠点があるとBiofortifiedは指摘します。それぞれの遺伝子組み換えに関してに一長一短があり、このメタ分析ではそれらの個別の性質や特徴が考慮されていないとしています。

それぞれのよいところだけつまみ食いすれば遺伝子組み換えトウモロコシによい結果が出ることは当たり前ですので、実際にこのメタ分析という手法で全てをまとめて取り扱っただけで最終的な結論を出すことは難しそうです。

GM Crops Found To Increase Yields And Reduce Harmful Toxins In 21 Years Of Data _ IFLScience

ゲノム編集を問う――作物からヒトまで (岩波新書)
石井 哲也
岩波書店
売り上げランキング: 48,950

・関連記事
現生人類、過去に4種類以上のヒト属と異種交配していたことが遺伝子から明らかに | BUZZAP!(バザップ!)

遺伝の「優性」「劣性」を使用中止し「顕性」「潜性」に変更へ | BUZZAP!(バザップ!)

バクテリアが海に捨てられたプラスチックを分解できるように進化していた? | BUZZAP!(バザップ!)

クマムシの遺伝子の1/6は別の生物から「遺伝子水平伝播」によって獲得されたことが判明 | BUZZAP!(バザップ!)

植物にもある種の「脳」があることが発見される | BUZZAP!(バザップ!)

暗闇で「光る花」をNECなどが開発、遺伝子操作で実現 | BUZZAP!(バザップ!)