ソフトバンクが成層圏に基地局を設置する新規事業を発表しました。詳細は以下から。
◆発表会の様子
インターネットの恩恵は今や「当たり前」となりましたが……
そんな日常が「当たり前」でない国は世界に数多くあります。
まだ世界人口の半数、37億人がインターネットに接続できていません。そんな現状を変えるため……
地上から2万メートルのところに基地局を浮かべたままにしておく「成層圏通信プラットフォーム(HAPS)」を事業化することが発表されました。
3.11で基地局が長らく復旧しなかったソフトバンク。
新たなアプローチとして気球を使った基地局などを研究してきました。
半径10kmをカバーできるなど、災害時でも広範囲で通信できるアプローチでしたが、風に弱いなどの問題も。
そこで気流が安定している成層圏に目を付けたわけです。
高度2万メートルからモバイルネットワークを構築。
なんと基地局1基で直径200km、約40基で日本列島をカバーできてしまいます。
太陽光発電で約6ヶ月間の連続フライト可能。紫外線での劣化などを検証するため、徐々に連続フライト期間を延ばしていくとされています。
ドローンやヘリなど、飛行体にもインターネット通信を提供できます。
最も大きな要素が、既存のスマホで利用できるというところ。衛星通信との最も大きな違いです。
山や離島をはじめ、今までカバーできていなかったエリアでも通信できるようになります。
実用化には型式証明など、航空系の認証プロセスが必要。
「HAWK30」と呼ばれる機体はスマホなどと直接通信する(サービスリンク)ための周波数帯、地上局と通信する(フィーダリンク)ための周波数帯をサポート。
現在は2.1GHz帯のみとなりますが、2024年以降プラチナバンドを含む450MHz~2.6GHzでの通信が可能となります。
フィーダリンクの帯域幅もどんどん広がる予定。基地局1基で直径200kmをカバーしつつ、超高速通信が可能になります。
HAPSがもたらす未来は、このムービーを見れば分かります。
なお、飛行体を使った通信は1999年から日本が実証実験を行っていました。
2002年には実際に通信できたものの、当時の電力性能では要求水準を満たさず、実用化は見送られることに。
「ソーラーパネル発電効率」「バッテリー容量密度」が成層圏基地局を実用化するために必要ですが……
2016年、ついに性能が追いつくことが明らかに。太陽光発電、バッテリー技術はこんなにも進歩しました。
事業化のめどが付いたため、AeroVironmentとともに立ち上げたのが「HAPS MOBILE」です。
ソフトバンクが開発したHAPS用の機体「HAWK30」
サービス開始は2023年ごろを予定。
より機体性能が向上した「HAWK50」も開発中です。
さらにGoogleの親会社、アルファベット傘下で成層圏プラットフォームを手がける「LOON」と戦略的提携。
成層圏通信で一日の長があるLOON。
ビッグデータを駆使したAIによる機体の運行管理などはLOON、回線はHAPS MOBILE……と、上手く自分たちの持ち味を活用する仕組みです。
発表会場で展示された1/40スケールの「HAWK30」。カーボンでできた翼一面に太陽光パネルが貼り付けられていることがわかります。
◆質疑応答
フリーランス:
ビジネス感、収容力など
ソフトバンク:
残り37億人から1ドルずついただければ、4兆円規模のビジネスになる。インターネットの普及で国が成長すれば、より収益も上がる。地元のキャリアにホールセールする、投資するなどさまざまな展開を考えております。LOONさんと提携したので年内にも事例を作っていきたい。
収容力はアメリカの鉄塔局2000局、日本の鉄塔局4000局ほどをカバーできる。しかし収容力は1対1。地上局と連携させることで採算性の低い基地局はHAPSに任せてハンドオーバーさせるなど、投資効率が上がる。
ハードは4Gも5Gもソフトウェアだけの世界なので、ハードの開発は平行して進めていく。まずは4Gから。5Gも需要によって対応していく。日本対応はHAWK50から。空気電池をHAPS用に使いたい。空気電池は急速充放電に課題があるが、HAPSの「半日間充電、半日間放電」では問題ない。
日経新聞:
HAPS MOBILEとしてどれだけの規模の投資をしていくのか、エリアカバー予定など。上空20kmだと減衰や実効速度が遅くなるという懸念があるが、どれくらいを目指すのか。地上局と電波干渉しない仕組みとは?
ソフトバンク:
機体はそんなに原価がかかりません。数千万ではできませんが、フェラーリ10台分くらい。それを量産に入っていく段階。2年半くらいで70億ちょっとを投じ、機体を2機作った。
地上局とのリアルなやりとりが発生するので、10~20億円と投資するが、アフリカなどでサービス提供するため、コストはかけられないと考えている。
ネットに接続できない人が多い赤道直下のアフリカや南米、東南アジアからスタートする予定。その国のレギュレーションがあるので、整理しながら展開していく。まずは10~20機くらいのサービスから始めて、ニーズに合わせて展開。1ヶ国あたり数十億円ではないか。
減衰は障害物などがないため、扱いやすいきれいな電波。フィーダリンクは28GHzなどの高い周波数帯を使うので、雲などの影響があると考えられる。ゲートウェイを増やすなど、天候に左右されないノウハウを注入していく。電波が干渉しないシステムは時分割を入れる。今のところBand 1なので、実効速度は280Mbpsくらい。
朝日新聞:
日本では4Gのカバーがかなり進んでいるが、日本のユーザーのメリットは?日本で使えるようにするにはどのようなスケジュールを踏む必要がある?
ソフトバンク:
日本は人口カバー率99.8などのカバー率を競っている国。富士の樹海でも使える、海上でも使える……など、今まで圏外だったところをカバーできるというメリットがある。
日本には成層圏に関するガイドラインがないため、作っていただいている段階。無人の航空機という扱いとなるため、耐空証明を取った上での最終申請となる。Band 1のHAPSでの利用は認められているが、フィーダリンクのための手続きが必要。
読売新聞:
5Gの割り当ての際、ソフトバンクの基地局が他社と比べて少ないという印象があったが、HAPSを見越した話?
ソフトバンク:
5GでHAPSをやる予定はまだ織り込んでおりません。むしろ都会や都心部といったトラフィックが膨らんでるエリアを整備。面展開は考えていない。7000~何万局といった規模で考えておらず、もっと5Gに投資することを考えています。HAPSは産業用に広げないといけない面をカバーするのに適していると考えています。アディショナル的な展開。
日経:
LOONへの資本参加、株主構成はどうなるのか。資本ででの提携になった背景は?
ソフトバンク:
出資比率はマイノリティ。事業でつながっていこうという思いで参加したので、お互いの情報を開示した。出資によってボードミーティングでオブザーバーとして出席する権利がある。
LOONが上空で得たデータを見ることができれば、いきなりスタートダッシュできるのでこちらから声をかけた。HAPS MOBILEにおいてもLOONはマイノリティ。
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