あらゆるがん細胞を攻撃する免疫細胞を発見、がん治療にブレイクスルーの可能性


現在日本では2人に1人が罹患し、3人に1人の死因となっているがん。手術に化学療法、放射線治療を筆頭に多くの治療法がありますが、確実な治療法はいまだにありません。

そんな中で、実用化されれば極めて重要なブレイクスルーとなりそうな免疫機能における新発見をBBCなどが報じています。詳細は以下から。

イギリスのカーディフ大学の研究チームが、肺がんや乳がんを筆頭としたすべての部位のがんに対抗できる免疫機能上の大発見をしたとのことです。

この発見は人間の免疫機能の中のT細胞と呼ばれる免疫細胞に関するもの。T細胞はリンパ球の一種で、免疫機能の司令塔のような役割を果たすヘルパーT細胞や、自ら異物やがん細胞を攻撃するキラーT細胞などが存在しています。

T細胞にはレセプターと呼ばれる攻撃対象の細胞を決定する機関が存在していますが、そのレセプターが補足できる対象は極めて限定的な上に、個々人によっても差があります。

新たな研究で発見されたのはMR1という分子へのレセプターを備えたT細胞で、このMR1は人体のどの細胞にも備わっているもの。つまりは人体のどのがん細胞にも備わっていることになります。

これまでもT細胞を用いた免疫療法というがんの治療法は存在していましたが、そこで使われるT細胞はレセプターの問題から特定のがん細胞にしか対抗できませんでした。

ですがこのMR1レセプターを備えたT細胞を用いれば、極めて多様なタイプのがんに一発で対抗できるということに(あくまで理論上は)なります。

実験室での人間の細胞を用いた実験では、肺がん、皮膚がん、白血病、大腸がん、乳がん、悪性骨腫瘍、前立腺がん、卵巣がん、腎臓がんを含めた多数のがんで効果が認められたとのこと。なお、その際にがん化していない通常の細胞への攻撃は行われていません。

化学療法でもがんのタイプによって抗がん剤が効かないケースはいくらでも存在しているため、がんの部位やタイプを問わずに効果があるならば確かに大きなブレイクスルーと言えそうです。

ただし実際にはまだ研究は始まったばかりの段階で、人間の患者での臨床試験もまだ行われていません。本当にどこまで効果があるのかはこれから計られることになりますし、実用化されて治療に使われるのはまだ先の話になります。

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