【南極通信 Vol.1】南極昭和基地のかまくらパーティー


記録的に遅い梅雨明けの後、「命に危険を及ぼす」猛暑が続く日本列島。新型コロナの影響でマスクも手放せず、例年以上にしんどい日々を送っている人も多いのではないでしょうか。

そんな暑い夏に南半球のてっぺん、今は冬真っ盛りの南極昭和基地から涼しい話題が届きました。

こちらの手記は南極昭和基地で現在越冬中の白山栄隊員からのもの。ただでさえ寒い南極の季節は冬。冬至を超えた7月7日に行われたかまくらパーティーの様子を伝えていただきました。

今や新型コロナのいない唯一の大陸となった南極大陸。ウイルスも猛暑も心配ない、ある意味最高の理想郷での観測隊員の皆様のほっと一息な一幕の記録です。

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南極昭和基地で越冬中の観測隊員です。Bazzup!に南極からお便りするといいながら、日本を出発して半年以上の月日が過ぎてしまいました。

前次隊との引継ぎを終えて、我々61次隊が越冬を開始したのが今年の2月。それ以降、隊としても乗り越えるべき課題が様々あり、あっという間の半年でした。

出国以降、コロナウィルスの蔓延や最近では豪雨被害など、心配なニュースを受け取っていますが、こちらでは目の前のことに向き合って日々を過ごしています。そんな越冬生活の一コマを紹介できればと思います。

仕事に、また日々の生活に追われる毎日でも、たまにはイベントで息抜きします。7月7日に開催された七夕祭りの様子をご紹介します!

昭和基地では5月末から極夜期に入っており、太陽が顔を出さないため、日中の外作業ができる時間は5時間ほど、という毎日が続いていました。6月下旬の夏至の日はこちらでは真冬。

毎年、南極とその周辺の各基地ではこの日を「ミッドウィンター」として、グリーティングカードを送りあいます。昭和基地でも前後数日「ミッドウィンター祭」が開催され、イベント盛りだくさんで盛り上がりました。

さて、今回ご紹介の七夕祭り、実はこのミッドウィンター祭にむけて用意していた「イグルー改めかまくら」を活用しようという企画。ミッドウィンター祭開催期間中はお天気に恵まれず、外での活動が制限されていたため、かまくらも未完成だったんですね。

この完成を祝って7日を休日日課に定め、パーティーの開催となりました。かまくらのような空間での大人数での会食今や開催できるのは南極だけかも。

「イグルー改めかまくら」の件、6月初旬、ミッドウィンターに向けてイグルークラブが結成され、管理棟横にイグルーを建設しておりましたが、6月中旬に大型ブリザード到来という不運に遭遇。

雪と風があるところには、「スノードリフト」「ウィンドスクープ」なる現象があります。写真のとおり、飛んできた雪で建物を埋めようとする雪溜まりスノードリフト、建物の際には雪がほとんどなくなるウィンドスクープが形成されます。

こちらがブリザード後、昭和基地の空撮写真。写真右から左の方角に卓越風が吹き、建物を埋めつくすようにスノードリフトが発達しています。建物の際にはウィンドスクープが出現。スノードリフトからウィンドスクープ内の地面までは2~4mの絶壁になります。スノードリフトによりイグルーも埋没。(2020/6/16 撮影:落合哲)

せっかく作ったイグルーが、スノードリフトに埋もれてしまいました。そこでかまくらづくりに方針転換、自然のスノードリフトを横から上から、あの手この手で掘り進み、立派なかまくら(というか洞窟)づくりが行われました。

残念ながらミッドウィンター祭までにはイグルー完成ならず。お祭りの週も強風が吹き荒れて再度埋まってしまいました。ミッドウィンター祭後も終業後や休日に頑張って掘り進んで最終的には立派に完成です。

かまくらの完成を祝ってパーティーの準備(管理棟側から撮影)。上から見るとただのスノードリフト(2020/7/7 筆者撮影)

スノードリフト上の建造物はイグルーを思わせるドーム。看板には「61」の文字も。螺旋階段でこちらから2~3m下にある雪の洞窟内に降りられるようになっています。(筆者撮影)

こちらはメインエントランス。七夕祭りですから、短冊に願い事を書きました。(筆者撮影)

中は洞窟のよう。いろいろと持ち込んで準備ですよ。(筆者撮影)

はーい、みなさーん。そろそろ集合写真撮ってはじめますよー。(筆者撮影)

お酒もオシャレにディスプレイされました。(休日日課ですからね、明るいうちから飲みましょう。)(筆者撮影)

皆さん、寒いけど楽しそうです。(筆者撮影)

こちらのテーブルもいいかんじですね。調理隊員がけんちん汁と焼き鳥を用意してくれました。(筆者撮影)

パーティー終了後、次の荒天で内部に雪が吹き込まないよう、雪のブロックで入口を閉じます。(筆者撮影)

七夕祭り終了。14時過ぎには暗くなってきました。終わってしまうのはちょっと寂しいですが、一生の思い出になりそうです。(筆者撮影)

おまけ:
今後次々とブリザードが襲ってくれば、いずれ埋まってしまうかまくら。七夕パーティーの翌週末、「ラストイグルークラブ」によるかまくらシアターが実施されました。

壁面をならしてスクリーンに。映画もかまくらの雰囲気が活かされていいですね。(2020/7/19筆者撮影)

文責:白山栄

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