豊臣秀吉を徳川に隠れて祀り続けたもうひとつの「豊国神社」、そして秀吉の眠る豊国廟へ
1200年を超える歴史を誇る京都では、大阪と違い伏見城や高台寺を除いては影の薄い豊臣秀吉。ですが実際には秀吉の墓所も京都に存在しており、浅からぬゆかりがあります。
ではなぜ影が薄いのか、そこには秀吉亡き後に豊臣家の存在をかき消そうとした家康の思惑がありました。そんな中でもひそかに秀吉を祀り続けた神社が存在しています。
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豊国神社を後にしたBuzzap!取材班は七条通から京都国立博物館を回り込むように東大路に向かいます。右手には三十三間堂とハイアットリージェンシー京都の並ぶ、まさに観光地のど真ん中。ここから東に延びる女坂に向かいます。
なお、このエリアは京都女子大学と付属の小中高校があるため、朝の通学時間帯は若い女性でいっぱいとなります。カメラを構えているとあらぬ疑いを掛けられる可能性もあるためご注意を。
道の脇に巨大な「豊国廟参道」の石碑が。この周辺は古くは「鳥辺野」と呼ばれる京都の代表的な葬送地。藤原道長や中宮定子をはじめ、多くの皇族や貴族がこの地に葬られてきました。
通学路のためお店もありますが、観光客向けの土産物屋などはなく静かなもの。
300m弱で豊国廟の一の鳥居が見えてきます。ですがまずはここを右手奥に進み、新日吉神宮(いまひえじんぐう)に向かいます。
狛犬ならぬ狛猿にお出迎えされます。猿といえば信長が秀吉をそう呼んでいたことをふと思い出しますが、邪推はやめておきましょう。
この新日吉神宮の境内には樹下社(このもとのやしろ)と呼ばれる小さな神社があります。
こちらのふたつ並んだうちの左側が樹下社。神事をされていたのでしばし待ちます。
徳川の時代ではなくなった現代では「豊国神社」と改称されています。
ですが案内の看板には今もこの名前が残ります。樹下大神を秀吉の幼名であった木下藤吉郎の姓に通じさせ、秘かに祀っていたとのこと。これこそまさに言霊の力、でしょうか。
実際に社殿が建てられたのは明治5年(1872年)のこと。それまではこのように明らかな形ではなく祀り続けてきたことになります。
隠れキリシタンを思い出すような話ですが、徳川が反徳川のシンボルとしての秀吉の人気を恐れたことが間違いではなかったことを示すエピソードとも言えます。
万城目学の「プリンセストヨトミ」では大阪人の秀吉への愛着が描かれましたが、江戸から遠く離れたエリアで反乱の芽を摘むにはこうしたところから抑え込む必要を徳川が感じていたということになります。
鳥居の先はいきなり駐車場に。草ぼうぼうで階段も朽ちている感じです。
さらに進むと、小綺麗ではありますが通学時間を過ぎているため活気はなく静まり返っています。
階段が出てきました。もうここまでくると街中といった感じはほとんどありません。
階段の上はかなり広大な敷地です。目の前に豊国廟のある阿弥陀ヶ峰が聳えています。
登拝料は100円。桁を二度見してしまいますが間違いなく100円です。左手側の受付で支払います。
門を抜けると鬱蒼と茂る森の中に階段が続いています。この豊国廟も豊国神社と共に徳川に破壊され、江戸時代には荒れ果てていました。
見上げるとちょっと息を呑むほどのまっすぐで長い登りです。489段あるとのこと。
ここは心を無にして登るしかありません。風景もほぼ変わらない中、延々と登り続けます。
途中で一度だけ平坦なところに出ます。ここまでくれば実は2/3以上登っているのでご安心を。
もうひとつ門を抜けて頂上を目指します。下から上まで休まずに登れば10分ちょっとですが、季節によっては汗だくになります。上には自販機などは当然ないため、飲み物は持っていた方がいいでしょう。
なんとか到着。この五輪塔は豊国神社が再興された明治になってから作られたもの。
この五輪塔の工事の際に秀吉の遺骨と思われるものの入った壺が出土しましたが、再度丁重に葬られたとのこと。
頂上の五輪塔の周りは歩くことができます。北側だけ少し眺望が開けていました。手前に見たことのあるような建物が見えますが…。
これはかの有名な清水寺ではありませんか。見たこともないアングルで見下ろすことができます。
この小高い部分がどうやら本当の頂上のようです。特に何もありませんが…。
上から見ると結構急です。転ばないようにゆっくり降りましょう。
豊臣家の最後の直系男子である国松の墳墓があります。時代に翻弄され、大坂の陣の後に8歳で徳川に斬首されました。
ということで、この場所も豊国神社と同じように盛者必衰を体現したかのような歴史を歩みました。それでもなお樹下社などでひっそりと祀られ続け、今にまで至っているのは秀吉の持つ魅力ということになるのでしょう。
世界遺産を筆頭に多くの魅力的な観光地の存在する京都ですが、視点を変えるとまだまだ見たこともないひっそりとした場所にたどり着けるかもしれません。
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