【前編】大阪よりも遠い京都の「辺境」、大原野を散策してきました


京都市内から大阪に行くよりも時間が掛かる場所が京都には存在しています。そこにはいわゆる京都とは違った時間が流れていました。

京都市は京都府の半分以上を占める147万人の人口を有し、日本第4位の規模を持つ京都都市圏の中心部でもあります。しかし、その北部は標高こそ高くないものの、深い山と森に覆われています。

また、京阪神大都市圏の一角でもあり、京都から大阪へは阪急、JR、京阪の各路線で1時間以内で到達できるという極めて利便性の高い立地でもあります。

しかし、京都市内には北部の山間部でもないのに、大阪に行くよりも到達するのに時間の掛かる「辺境」が存在しているのです。それが洛西と呼ばれるエリアの京都市西京区大原野。

京都の市街地からだと桂川を西に超え、向日市を超えた先に存在しています。ちょっと説明しにくいのですが、関東の人になら「東京都における町田市のような位置関係」にあると説明すれば感触は一発で分かってもらえると思います。

京都の繁華街、四条河原町から大原野までは阪急京都線の各駅停車で向日市の東向日駅まで行き、そこから阪急バスに乗って行かなければなりません。これには平均で1時間ほど掛かり、阪急線で梅田まで50分掛からないことを考えると結構な時間です。

ちなみに阪急桂駅からもアクセスできますが、大原野の見所のひとつである善峯寺(よしみねでら)へのバス(大原野線66系統)が通っておらず、JR線の向日町駅からだと大原野線66系統に乗れますが、一度JR京都駅まで向かうことで30分程度時間が多く掛かってしまいます。

ということで、BUZZAP!取材班は阪急東向日駅に降り立ちました。

こちらが大原野方面に向かうバス停。国内外からの観光客でごった返す京都市内の雰囲気とは違う、とてもゆったりとした空気が流れています。

駅のすぐ前には小さなタコ焼き屋が。既に営業していないのか、たまたま定休日だったのか判断に迷うところです。

バスの時間をチェックしたのですが、善峯寺へのバス(66系統)は1時間に1本で、待ち時間が50分ほどあったため、大原野神社に向かう63系統に乗ることに。この選択が後からいろいろ響いてくるのですが、それは後のお話。

ともあれ公共交通機関を使って大原野を訪れず場合には時間に大きく余裕を持ち、時刻表をあらかじめチェックしておくことが非常に大切です。善峯寺に向かうのであれば終バスは平日なら14時42分、土日でも15時42分です。

バスに乗ること30分。京都盆地の西側に広がる山が刻一刻と近づいてきます。気がつけば取材班の他には乗客のいなくなったバスを大原野神社に最寄りの南春日町で降りました。ここが京都市西京区大原野。バス停はちょっと心配になるほどひっそりとした広場です。

振り向くと静かな住宅地。山が近くに見えます。看板に沿って進んでいくことにします。

さすがに碁盤の目と町屋という京都のイメージからは大きくかけ離れています。そしてお店などもほとんど見当たらず、観光客らの姿も見当たりません。

看板とスマホのGoogle Mapを見ながら進んでいきます。畑が見え、上り坂が続き、山が近づいてきます。

10分弱で大原野神社に到着。784年に桓武天皇が長岡京へ遷都した際、后の藤原乙牟漏が藤原氏の氏神である奈良春日社の分霊を勧請し、しばしば鷹狩を行っていた大原野に祀ったことが始まりとされています。

しんと静まりかえった境内。

こちらはよもぎ餅が有名な春日乃茶屋。残念ながらお休みでした。

その前に広がる鯉沢池。

奥に進むと…。

お手水に鹿がいます。

狛犬の代わりに狛鹿が。こちらは雄。立派な角です。

こちらは雌ですが、頭に何か乗っていますね。

大原野神社から少しだけ南に下がると正法寺があります。有名な鑑真の高弟、智威大徳の修行の地が元となっており、建立は754年と平安京よりも古いお寺です。

ここは動物の形をした石200トンを集めたお庭も有名ですが、寺の目の前に梅林があり、取材班が訪れた時は梅の花越しに京都の街並みが見渡せました。気がつけば結構高いところまで来ていたようです。

そのまま正法寺を南に抜けると大きなため池に。

敷地を出ると竹林になっていました。

そこから目の前の京都縦貫道の陸橋を通って大原野のさらに奥に向かいます。目指すは金蔵寺。

ひたすら山の斜面を歩いて行くことになります。

最初は家が建ち並んでいましたが、田畑が増えてきます。

さらに歩くとどんどん山里感が増してきます。

振り返るとまた京都市が眼下に見えます。

この辺りから本格的な山の中に入ります。

車道から離れてガチの山道です。

鬱蒼とした山の中…というよりもちょっとうち捨てられた感も。

10分ほど歩いてお不動さんのお堂に出ました。

ですがまた山道です。車道も通る車は少なく、引き返すにも歩き過ぎた感があります。

完全に登山道になりました。意を決してひたすら上ります。

登山道に入って10分余り、山里からも離れ鳥の声しか聞こえません。京都の景色もかなり遠くになりました。

手すりの苔むし感が通る人の少なさを教えてくれます。

さらに10分。ようやく車道に復帰です。かなりほっとしました。

その合流地点のすぐ近く、ようやく金蔵寺に辿り着きました。ここは718年に元正天皇の勅願で創建された天台宗のお寺。平安京ができるより半世紀以上前から京都盆地を見下ろしてきた古刹です。応仁の乱の際に焼失しましたが、江戸時代になって徳川綱吉の母桂昌院により再興されました。

拝観料の300円は賽銭箱へ。無人だからってこっそり入るのはやめましょう。

もうひと踏ん張りして階段を上ります。入口からこの階段辺りを中心に、金蔵寺は紅葉の名所として知られています。秋のシーズンには紅葉狩りの観光客が訪れるとのこと。

こじんまりとした隠れ里のような境内です。人は誰も見かけません。飼われているらしき犬の声がするだけです。

美しく苔むすお手水。足下にはちょっと開いていますがふきのとうが。

社殿はしっとりと鄙びています。素敵な山寺ですね。

ちなみにこの金蔵寺は西山を巡る登山道の入口でもあります。登山者も入山料として300円必要ですのでお忘れなく。

右手奥に展望台があるということで行ってみます。途中に六角形の敷地の弁財天が。

展望台には謎の茶室のような建物があります。

その向かいはこの眺望。手前に走るのが京都縦貫道、その奥に見えるのが名神高速道路です。

正法寺から金蔵寺までは上り坂で3km。少し急ぎ足で1時間程度かかります。歩きやすい靴と服装は必須。この道は途中にコンビニはもちろん売店や食堂も極めて少ないため、東向日駅辺りでドリンクと軽食などは買っておいた方がいいでしょう。

また、観光で京都を訪れている際に大原野に公共交通機関を使って巡るのであれば、少なくとも午前中から動き出すのが無難です。バスの本数が少なく、終バスも夕方くらいの場合もあるため、できれば朝から向かい、余裕を持って下るスケジュールを組むことを強くお勧めします。

後編では山道を通って善峯寺の方まで歩いてみることにします。思わず午後から出向いてしまったBUZZAP!取材班は無事に戻ってこれるのでしょうか?

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