ただの石をペットにして愛でる半世紀前の「Pet Rock」、禅すら感じる謎の流行はどこから来たのか


生き物ですらない石をペットとして愛でる。そんなブラックジョークのような、もしくは禅問答のような流行が生まれたのは1975年のことでした。詳細は以下から。

メキシコのリゾート地、ロサリトの浜辺で採れたすべすべした石を生き物に見立て、ペットとして飼うという謎のトレンド「Pet Rock」。1975年に始まったこの流行はクリスマスシーズンに大きく盛り上がり、翌年2月には急速にしぼんで半年の流行を終えました。

仕掛け人となったのは広告会社の役員だったGary Dahl氏。友人たちとバーで飲んでいた際、ペットの話題になった時の「石をペットにするのはどうだ」というちょっとしたアイディアを彼は逃しませんでした。

エサも散歩もいらず、洗ったり毛づくろいも必要なく、反抗することも病気になることも死ぬこともない石。「完璧なペットだな」と返答したDahl氏は、その後真剣に商品化を模索します。

そして「石は長寿なので、あなたとPet Rockが死に別れることはありません」などと冗談を縦横無尽に交えた32ページの訓練マニュアルを付け、段ボール製の箱の中に藁を敷き、卵のように鎮座したPet Rockは4ドルで販売されました。

石の原価は1セント程度で、藁はほぼ無料で手に入ったため、Dahl氏はマニュアル以外はほとんどノーコストでPet Rockを売ることができました。

こちらがその訓練マニュアル。

箱から出した石は興奮しているので古い新聞紙の上に置きましょうとのこと。

石には個性があります。

種類もたくさん。

「来い」と命令しても当然来ません。飼い主は気まずい思いをすることになります。

褒める時は優しくなでてあげます。

でも攻撃は得意です…飼い主の助けがあれば。

健康な石と苦しんでいる石はこうして見分けます。

「最低(rock bottom)」な状態になることもあります。

野生の石たち。

ブームの中で実に100万個のPet Rockを売りさばいたDahl氏は見事ミリオネアとなり、Carry Nationsというバーをサンフランシスコ近郊にオープンさせました。1ドル305円計算で12億円相当となり、当時の物価を考えればかなりのものです。

Dahl氏は広告業も続けましたが、長年Pet Rockについてインタビューを受けることはありませんでした。理由は「おかしな連中」が訴訟や脅迫を行ったからとのこと。

1988年にDahl氏は「あんなものを売らなきゃ、俺の人生はもっとシンプルだったかもなと振り返ることがある」と述べています。

冗談交じりの会話がきっかけとなった大ブームでしたが、日本人から見ると枯山水などの禅の精神やつげ義春の「無能の人」を思い起こさせるPet Rock。70年代だったことを考えると、売り方次第ではもっとスピリチュアルなワークになっていたかもしれません。

なお、小学一年生1983年4月号のドラえもんには、石にぬってみがくと動物のようになって動き出すひみつ道具「ペットペンキ」が登場しています。

藤子・F・不二雄先生はこの流行からインスピレーションを受けていたのでしょうか…?

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