au回線を借りることで人口カバー率99.9%にエリアを拡大、建物や繁華街でもつながりやすくなって月額2980円。
そんなうたい文句で始まった楽天モバイルの新料金「Rakuten最強プラン」が本当に最強なのかを実際の利用シーンに限りなく近い形で試してみました。詳細は以下から。
◆Rakuten最強プランとは?
改めて確認しておきたいのが、楽天モバイル最新プランの内容。auのプラチナバンド(800MHz帯)を使った4G LTE回線を活用することで「業界最高水準」の人口カバー率99.9%を実現するとしています。
楽天モバイルの弱点だった屋内や繁華街、高層ビルなどでもつながりやすくなるとのこと。
さらにパートナー回線(au回線)でもデータ通信を無制限で利用できます。
◆本当に「最強」なのか、つながりやすさやエリアをチェックしてみた
弱点を克服し、auはじめ大手3社と並ぶエリアを実現したかのように聞こえるRakuten最強プラン。
では実際のところ使い勝手はどうなのでしょうか。Buzzap!編集部では一般的な利用スタイルに即して検証してみることにしました。公平を期すため、いずれのiPhoneも工場出荷時と変わらない設定のままです。
・新宿駅西口の某飲食店
まずは6/1夕方、新宿西口のビル3Fにある飲食店で通信状況を測定。楽天モバイル、auとも5Gで電波の入りも悪くありませんが……
動画視聴などの使い勝手に最も影響する、下りの通信速度が大きく違うことが分かります。
順調に通信できていると思っていても、いきなりデータが流れなくなる「パケ止まり」を起こすことがあるのも難点です。
・新宿西口ヨドバシカメラ近辺
お次は仕事帰りのサラリーマンなどでにぎわう、家電量販店そば。
こちらも楽天モバイル、auともども5Gで通信状況が悪くないかのように見えますが……
楽天モバイルはアンテナピクトが安定せず、通信速度もauと1桁違います。
・ヨドバシカメラ地下入口
そして問題なのが新宿西口ヨドバシカメラの地下入口。楽天モバイルが4Gでアンテナピクト1つなのに対して、auは5Gでアンテナピクト4つと、圧倒的な差が付いてしまっています。
アンテナピクトが立ってこそいるものの、楽天モバイルでは通信できませんでした。なおauは100Mbps超えです。
どんどん電波が弱くなり、ついには圏外になる楽天モバイル(左)。このご時世「都市部で圏外のiPhone」は非常に珍しい光景です。
・都庁
次に訪れたのが都庁の足元。
開けた屋外にもかかわらず、楽天モバイルは「5Gがアンテナピクト1本」というギリギリの状態でした。
実際通信してみると5Gから4Gへと落ちるだけでなく「楽天モバイルは下り9.74Mbps、auは下り305.6Mbps」と、とんでもない差が付いています。
・都庁の展望室
「仕事帰りや観光で夜景を見る」というシチュエーションを想定して都庁の展望室に。
珍しく楽天モバイルが高いパフォーマンスを発揮しました。
動画で見てもこの通り。速度が乱高下することもなく高速で安定している印象で、auを上回るシーンすらみられました。
・新宿駅東口
続いては歌舞伎町にほど近いJR新宿駅東口。
「アルタ前」で知られるエリアで、遅めの時間になっても若者でにぎわっています。
さすがに両社とも5G、アンテナピクトも4本ですが……
通信速度は楽天モバイルが下り14.5Mbps、auが283.7Mbpsなど、またしても圧倒的な差に。何度かテストを繰り返しても、楽天モバイルは10~20Mbps台、auは基本的に200Mbps台で、10倍違う状況です。
・JR新宿駅構内
Buzzap!編集部員が「まずいのでは?」と素直に感じたのが、JR新宿駅の山手線ホーム。両社とも5Gと表示されてはいますが……
帰宅ラッシュ真っただ中でない20時半にもかかわらず、楽天モバイルの通信速度が3Gと変わらない3.82Mbpsにまで落ち込んでしまいました。
通信速度1桁台が常態化しており、より人が密集する朝の通勤ラッシュでは低速に拍車がかかりそうな楽天モバイル。しっかり対策しているauと雲泥の差で、使い勝手に如実に影響するとみられます。
・渋谷駅
今度は山手線の渋谷駅ホーム。
「auより楽天モバイルのアンテナピクトが立っているぞ!」と思ったそこのあなた、まだまだです。
なんと楽天モバイルは1Mbpsを割ってしまった上、パケ止まりを起こして通信できなくなってしまいました。
対策を打っているはずのauすら思うような速度が出ていないため、ただでさえ乗降客が多く、若者や外国人観光客が遅い時間まで闊歩する渋谷駅は魔窟なのかもしれません。しかし通信速度制限時と変わらない速度なのは悩みどころです。
・渋谷駅前のスクランブル交差点
テレビで事あるごとに取り上げられ、映画「バイオハザード IV アフターライフ」で中島美嘉がゾンビ役を演じたことでもおなじみ渋谷駅前スクランブル交差点。
楽天モバイル、auともども「アンテナ4本、5G」です。
しかしフタを開けてみると「楽天モバイルが2~3Mbpsでパケ止まり頻発、auがスムーズにバリバリ通信できる」というオチでした。
・田園都市線渋谷駅
最後に楽天本社から最も近いターミナル駅・東急田園都市線の渋谷駅。楽天モバイル、auともども4G回線ではありますが、楽天モバイルの通信速度が1桁台なのに対して、auは数十Mbps~100Mbps以上を叩き出しました。
通勤ラッシュも落ち着いた平日水曜日の22時台にもかかわらず、振るわない楽天モバイル。そもそも人口密集地に弱いことが分かります。
なお、au回線を使っているとみられる地下駅で本家auとここまで大きく差が出てしまうのは、楽天モバイルで利用できるau回線は俗にプラチナバンドと呼ばれる「800MHz帯」のみであるため。
ターミナル駅のような人が密集するスポットでは、さまざまな周波数帯を利用したカバーエリアの小さな基地局をきめ細かく配置した上で、電波を束ねて通信する「キャリアアグリゲーション」を活用する必要がありますが、楽天モバイルユーザーは一部しか使えないわけです。
・郊外の飲食店
都心部から離れた場所にある飲食店。楽天モバイル自前の4G回線が入りましたが、小規模な店舗にもかかわらず少し奥に入ると電波の強さが心もとなくなってしまいます。
速度もauの半分以下。これだけ下りが出れば十分ではあるものの、上りが0.6Mbpsに落ち込んでしまったため「頼んだ料理の写真や動画をアップする」などの用途でストレスを感じてしまいそうです。
◆Rakuten最強プラン最大の弱点は「楽天モバイル回線の通信品質」
・そもそもauエリアと同等ではない
「業界最高水準のカバーエリア」「屋内や繁華街、高層ビルでもつながりやすい」など、一気につながりやすくなったかのようにアピールしていた楽天モバイル。
しかし前述のヨドバシカメラ地下のように、auが「プラチナバンドの4G」以外で整備しているエリアはつながらないため、さもKDDIほか大手3社と並んだかのようにアピールするのは、誇大広告ではないかと感じました。
・都市部、繁華街では楽天自社回線の品質問題が大きなネックに
そして特筆すべきなのが5Gの電波をしっかり掴んでいるかのように表示されていても、いざ通信すると4Gになることが多すぎる点。
「アンテナ4本、5G」のiPhoneを見て「楽天モバイルつながるようになったなあ」と感心していたら『5Gだと思った?残念、4Gでした!』となることが多く、3Gのような通信速度や頻発するパケ止まりに何度も閉口させられました。
はっきり言ってしまうと繁華街で快適に通信できるようになった印象は薄く「au回線の有無以前に本来つながるはずの場所で速度が出ない、パケットが詰まる楽天モバイル回線の品質そのものが一番の問題」と強く感じてしまいました。
「日本全国で高速データ通信が無限に使える」とうたう楽天モバイル。3G程度の速度を「高速」と言ってしまっていいのでしょうか。
また、楽天モバイル回線ではiPhoneのバッテリーが早く減るのも気になったところ。これは以前もお伝えした通り、電波が弱い場所や圏外だと携帯電話が接続先を探して出力を上げることによるもの。ネットワークが不安定だと電池にまで悪影響を及ぼすわけです。
◆安易な「最強」に釣られてしまう前に、考えてみるべき
これなら自分の月間データ量をよく見た上で、条件に合うのであればahamoに対抗したUQ mobileの新料金「コミコミプラン」や「povo 2.0」を使ったほうが高い通信品質と低料金を両立できて幸せになれるのでは?とすら考えさせられてしまったRakuten最強プラン。
動画コンテンツを見尽くしたいのであれば確かに「使い放題」は魅力的ですが、通信が不安定だと肝心の動画視聴そのものがストレスフルになる可能性は十分に考えられます。
ラッシュ時のピークを外した時間帯すら通信が安定せず、整備の甘さが浮き彫りになった楽天モバイル。「最強」を名乗りたいのであれば、少なくとも今ある自社回線の強化が必要ではないでしょうか。
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