DNAにATGC以外の新たな人工塩基を組み込んだ生命体の育成と繁殖に成功

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地球上の生命体の遺伝情報の継承と発現を司るDNA。ここに人工の新たな分子を組み込むことに成功しました。数十億年の地球生命の歴史を大きく飛び越える成果で、薬学やナノテクノロジーの大きな発展に繋がる可能性もあります。

アメリカ合衆国カリフォルニア州のスクリプス研究所の研究者たちが自然界には存在しない、人工の塩基を大腸菌DNAに組み込むことに成功したことが明らかになりました。

しかもこの大腸菌は人工の塩基がDNAに組み込まれた状態で正常に成長し、繁殖にも成功したとのこと。これによって全く新しいタンパク質を生成する微生物を作り出すことができ、新薬の開発に結び付けられる他、ナノテクノロジーの発展にも寄与することが期待されています。

自然界のDNAはA(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の4つの塩基によって全てが構成されています。これらはそれぞれA-T、G-Cというペア(塩基対)を形作っていますが、この研究者たちの成果はここに新たなペアとなる塩基対を人工的に作り出し、組み込むというもの。これらの塩基がDNAの二重螺旋に並び、隣り合わせた3つの塩基がひとつのコードとなって特定のアミノ酸を作り出します。

今回この2つのペアに加えてd5SICS-dNaMというペアがDNAに組み込まれ、これによって新たなタンパク質の生成が容易に行えるようになると期待されています。

スクリプす研究所のFloyd Romesberg博士らのチームは、2008年には試験管の中で人工の塩基対を作成し、半合成のDNAからRNAに転写するという最初のステップまでは成功させていました。しかし、同じことを複雑な環境の中、生きた細胞に行うのは非常に困難なことでした。

この解決のため、研究チームはd5SICS-dNaMの塩基対を細胞外の流体溶液に加えました。そして微細藻類から作ったトランスポーター分子を用いて大腸菌の内部に導入。研究チームはこの際プラスミドと呼ばれる円形DNAにd5SICS-dNaMを組み込み、大腸菌内に取り込むことに成功。

このプラスミドはメインの染色体のDNAからは分離されているものの、細胞内で複製を行うDNA分子となりました。研究チームが驚いたことに、この人工塩基の組み込まれた半合成プラスミドは大腸菌の成長を阻害することはなく、さらには人工塩基が排出されることもなかったとのこと。

そして次の段階である、RNAへの転写と新たなタンパク質の生成に関しても概ね成功したとFloyd Romesberg博士は述べています。これによって治療用のタンパク質の生成や診断学に大きな発展が見込まれる他、研究用試薬の開発からナノテクノロジーまで広く応用できるとのこと。

なお、もちろん一部にはこうした人工的な遺伝子を持った細菌やウィルスが研究室の外に漏れだした時に起こりうるバイオハザードを心配する声もあります。地球生命の根本である遺伝子の構造に手を加えるという、ある意味究極の神の領域に踏み込んだということもできるこのこの成果、果たして人類は安全かつ有効に使いこなせるでしょうか。

‘Alien’ life form grown in a lab Scientists add unnatural DNA strands to the genetic code of bacteria to create a new strain Mail Online

(Photo by Duncan Hull

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