先日ソフトバンクモバイルがiPhone専用に提供している「Softbank 4G LTE」の下り最大75Mbps対応エリアの人口カバー率は1%程度(37.5Mbpsエリアを含めた実人口カバー率は91%)にとどまることをお伝えしましたが、恣意的に操作した、陰謀めいたやり方による数字ではないかという意見を一部の読者の方からいただいたため、本当に不公平なのかを考えてみることにしました。
◆ソフトバンクと同じ条件でauの75Mbpsエリアを表現してみた
ソフトバンクモバイルの公式ページに掲載された「Softbank 4G LTE」のエリアマップでは、2013年5月24日11:00現在、ページ下部に下り最大75Mbps対応エリアについて、「○○県××市の一部」といった形でざっくりと列挙しています。
下り最大75Mbpsが使用できるエリアは以下の通りです。
宮城県仙台市青葉区の一部、宮城県仙台市太白区の一部、宮城県名取市の一部、埼玉県羽生市の一部、埼玉県加須市の一部、埼玉県久喜市の一部、大阪府岸和田市の一部、大阪府泉佐野市の一部、大阪府貝塚市の一部、福岡県久留米市の一部、福岡県三井郡大刀洗町の一部、福岡県小郡市の一部、福岡県朝倉市の一部
対するKDDIは2013年5月24日11:00現在、以下のページにiPhone 5向け「au 4G LTE」のエリアを「○○県××市△△町□丁目 周辺」というように、詳細な住所ごとに列挙するという形で告知しており、条件が揃わないのが現状です。
4G LTEサービスエリア | サービス・エリア | iPhone 5 | au
そこで比較条件を可能な限り揃え、公平を期すために、ざっくりとした表記にとどめているソフトバンク側に合わせてみると、「au 4G LTE」の75Mbps対応エリア(2013年3月末時点)は以下の市町村リストに「~の一部」と加えればほぼ同じ条件となります。
・北海道
河西郡芽室町、亀田郡七飯町、釧路市、恵庭市、江別市、札幌市(手稲区、南区)、小樽市、千歳市、帯広市、苫小牧市、函館市、北見市、北広島市、北斗市
・青森県
弘前市、青森県青森市、青森県八戸市、岩手県一関市、奥州市、花巻市、盛岡市、北上市
・宮城県
塩釜市、宮城県宮城郡七ヶ浜町、宮城県宮城郡利府町、宮城県黒川郡、宮城県石巻市、仙台市(宮城野区、若林区、青葉区、泉区、太白区)、多賀城市、大崎市、名取市
・秋田県
秋田市、大館市
・山形県
山形市、酒田市、鶴岡市
・福島県
いわき市、会津若松市、郡山市、須賀川市、二本松市、福島市
・茨城県
つくばみらい市、つくば市、ひたちなか市、稲敷郡、猿島郡、牛久市、古河市、取手市、守谷市、水戸市、石岡市、筑西市、土浦市、那珂郡、那珂市、日立市、龍ケ崎市、
・栃木県
宇都宮市、下都賀郡、佐野市、小山市、真岡市、大田原市、栃木市、那須塩原市
・群馬県
伊勢崎市、桐生市、高崎市、前橋市、邑楽郡
・埼玉県
さいたま市(岩槻区、見沼区、西区)、ふじみ野市、羽生市、越谷市、桶川市、加須市、吉川市、久喜市、狭山市、熊谷市、行田市、鴻巣市、坂戸市、春日部市、上尾市、深谷市、川越市、鶴ヶ島市、東松山市、南埼玉郡、日高市、飯能市、比企郡、北葛飾郡松、北足立郡、北本市、本庄市、蓮田市
・千葉県
印西市、印旛郡、我孫子市、鎌ケ谷市、君津市、佐倉市、四街道市、市原市、成田市、千葉市(若葉区、緑区)、船橋市、袖ヶ浦市、柏市、白井市、八千代市、富津市、茂原市、木更津市、野田市、流山市
・東京都
あきる野市、西多摩郡、青梅市、八王子市
・神奈川県
横須賀市、三浦郡、三浦市、小田原市、秦野市、足柄下郡、足柄上郡、中郡、南足柄市、平塚市
・新潟県
燕市、三条市、小千谷市、上越市、新潟市(江南区、秋葉区、西区、中央区、東区、北区)、新発田市、長岡市、柏崎市
・山梨県
甲州市、山梨市、中央市、笛吹市、南アルプス市、富士吉田市
・長野県
伊那市、塩尻市、岡谷市、佐久市、松本市、上伊那郡、上田市、諏訪郡、諏訪市、長野市、飯田市、北佐久郡
・岐阜県
羽島郡、羽島市、下呂市、可児市、各務原市、岐阜市、高山市、多治見市、大垣市、土岐市、美濃加茂市、本巣市、養老郡、
・静岡県
伊東市、掛川市、御殿場市、三島市、駿東郡、沼津市、焼津市、裾野市、静岡市(葵区、駿河区、清水区)、田方郡、島田市、藤枝市、熱海市、磐田市、浜松市(西区、中区、東区、南区、浜北区、北区)、富士宮市、富士市
・愛知県
あま市、みよし市、愛知郡、安城市、一宮市、稲沢市、岡崎市、海部郡、額田郡、蒲郡市、刈谷市、岩倉市、犬山市、江南市、高浜市、春日井市、小牧市、常滑市、瀬戸市、清須市、西尾市、大府市、丹羽郡、知多郡、知多市、長久手市、津島市、東海市、日進市、半田市、尾張旭市、碧南市、豊橋市、豊川市、豊田市、豊明市、北名古屋市、名古屋市(港区、中川区、北区、緑区)、弥富市
・三重県
伊勢市、桑名郡、桑名市、四日市市、松阪市、多気郡、津市、鈴鹿市
・富山県
高岡市、射水市、富山市
・石川県
野々市市、河北郡、金沢市、小松市、能美市、白山市、野々市市
・福井県
越前市、吉田郡、坂井市、敦賀市、福井市
・滋賀県
栗東市、守山市、草津市、大津市、長浜市、東近江市、彦根市、野洲市
・京都府
宇治市、乙訓郡、亀岡市、京田辺市、京都市(左京区、上京区、西京区、伏見区、北区)、相楽郡、長岡京市、八幡市、福知山市、木津川市
・大阪府
茨木市、羽曳野市、河内長野市、貝塚市、岸和田市、交野市、高槻市、阪南市、堺市(南区)、三島郡、四條畷市、泉佐野市、泉南市、大阪狭山市、富田林市、豊能郡、枚方市、和泉市
・兵庫県
加古郡、加古川市、三田市、神戸市(須磨区、垂水区、西区、中央区、長田区、兵庫区、北区)、西宮市、川西市、姫路市、宝塚市、揖保郡
・奈良県
磯城郡、橿原市、葛城市、香芝市、桜井市、生駒郡、生駒市、大和郡山市、天理市、奈良市、北葛城郡
・和歌山県
岩出市、和歌山市
・鳥取県
西伯郡、鳥取市、米子市、出雲市、松江市、簸川郡
・岡山県
岡山市(中区、東区、南区、北区)、倉敷市
・広島県
安芸郡、呉市、広島市、三原市、東広島市、尾道市、府中市、福山市
・山口県
宇部市、下関市、下松市、岩国市、玖珂郡、山口市、周南市、防府市
・徳島県
阿南市、小松島市、徳島市、板野郡、鳴門市
・香川県
さぬき市、綾歌郡、観音寺市、丸亀市、高松市、善通寺市、仲多度郡、木田郡
・愛媛県
伊予郡、今治市、松山市、新居浜市、西条市、大洲市、東温市、八幡浜市
・高知県
吾川郡、香南市、高知市、南国市
・福岡県
鞍手郡、遠賀郡、嘉麻市、久留米市、京都郡、宗像市、小郡市、糟屋郡、太宰府市、大牟田市、大野城市、築上郡、筑紫野市、直方市、飯塚市、福岡市(西区、早良区)、北九州市(若松区、小倉南区、八幡西区、八幡東区、門司区)
・佐賀県
佐賀市、三養基郡、鳥栖市、唐津市、佐世保市
・長崎県
佐世保市、西彼杵郡、長崎市
・熊本県
菊池郡、玉名市、熊本市(西区、東区、南区、北区)、荒尾市、合志市、上益城郡、天草市
・大分県
大分市、中津市、別府市
・宮崎県
宮崎市、都城市、日向市
・鹿児島県
姶良市、鹿屋市、肝属郡、鹿児島市
・沖縄県
うるま市、浦添市、沖縄市、宮古島市、国頭郡、石垣市、中頭郡、島尻郡、那覇市、豊見城市、名護市
◆「人口カバー率1%」は決して不当な数字ではない
前回BUZZAPでは75Mbpsエリアの人口カバー率算出方法として、「該当する自治体に住んでいる人口を合計し、日本の総人口と比較する」という方法を用いました。
これはソフトバンクモバイルが「○○県××市の一部」としか告知していないこと、そして同社やKDDIが採用している「実人口カバー率(全国を500m四方単位に区分けしたメッシュのうち、サービスエリアに該当するメッシュに含まれる人口の総人口に対する割合)」は詳細な算出法が非公開であることを受けたものです。
しかし前回の記事でもお伝えしたように、この算出法では1ヶ所でもカバーしていると該当する市町村全域がカバーエリアとして算出されることになる上、仮に各市町の境界近くに基地局を設置すれば、それぞれの自治体がカバーエリアに含まれてしまうことから、数字が実態よりも大きく上振れする可能性があります。
例えばiPhone 5向け「au 4G LTE」の75Mbpsエリアの場合、上記の通り全国の県庁所在地や政令指定都市を数多くカバーしているため、同じ方法で人口カバー率を算出すると、KDDIが明らかにした実人口カバー率「14%」をほぼ確実に上回ることになるわけです。
つまり「Softbank 4G LTE」の75Mbps対応エリアの人口カバー率として算出した「1%」という数字はソフトバンクモバイル側が提示した「○○市の一部」という表記を「○○市ほぼ全域」として計算したもので、決して過小に評価した不当な数字ではないということになることを念頭に置いてもらえると、見え方が変わってくるかもしれません。
◆エリアの狭さを理由にドコモの「下り最大75Mbps」表記を許さなかったソフトバンク
ちなみにソフトバンクモバイルは2012年7月に行われた決算発表会の場で、自社の「Softbank 4G」と「Xi」「UQ WiMAX」を以下のように比較していました。
同社が提示した比較グラフ。実際に利用できる端末がまだ発売されていなかった「下り最大110Mbps(当時の最高速度は下り最大76Mbps)」というSoftbank 4G(編集部注:グラフ中では4G LTEと誤記)の通信速度を誇る一方で、下り最大75Mbps対応スポットがごくわずかだとしてXiの速度を37.5Mbpsと表記しています。
対応エリアが整備中で、あくまで一部に限られることを公式ページに記載していた点なども含めて、現在のSoftbank 4G LTEとそう変わらない状況なわけですが、さすがにこれはあまりにも無慈悲。ソフトバンクにとって「下り最大75Mbps」を主張して良いラインはいったいどこにあるのでしょうか。
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