KDDIが相次いだLTEの通信障害に対して会見、原因は通信量増加ではないことが明らかに


KDDIが4~5月にかけて相次いだau 4G LTEの通信障害に関する会見を行いました。

スマートフォン普及による通信量増大が障害を引き起こした……と思われがちな昨今ですが、どうやら原因は別のところにあるようです。また、今まで公開されてこなかったiPhone 5向けLTEの実人口カバー率が公開されています。



登壇者はKDDI株式会社 代表取締役社長 田中孝司氏です。

一連の通信障害について陳謝。深々と頭を下げました。

サービス影響の概要を田中社長が解説。経営の最重要課題として取り組んだ矢先の通信障害の発生でした。

一連のLTE通信障害の概要。「LTE基地局制御装置(MME)」と呼ばれる機器の障害によるもので、「分割されたデータが60バイト以下だと通信カードがエラーを吐き出す」などの条件が重なったことが影響しています。

au携帯電話ネットワークの構成。MMEはLTE基地局の接続管理や、LTE基地局エリア内にあるLTE端末の移動管理を制御しており、インターネットに出ていくためにはMMEを通る必要があるため、そこで障害が起きると今回のような事態になるというわけです。

各データ通信障害の詳細。リセットバグ、リカバリー処理バグによるものやMME障害によるLTEから3Gへのハンドダウンによる輻輳、片系処理の引き継ぎの際にアクセスが集中したことで発生した輻輳などが原因に。

クリティカルな問題であるリセットバグやリカバリー処理バグへの対処、LTEから3Gへ一気にハンドダウンした時などに対するハードウェアの品質向上、そして運用品質の向上や復旧時間の短縮、切り替え時の瞬間的な高負荷に対する耐性の向上などが課題で、フェールセーフを確立する方針です。

田中社長を本部長とする「LTE基盤強化対策本部」を立ち上げ、MME設備投資を5月15日からさらに増額し、300億円を投じるとのこと。

影響を受けたユーザーに対して約款上よりも大きな額となる一律700円を返金。全社を挙げて再発防止を徹底することを告知しています。

そしてすでに速報でお伝えしましたが、門外不出な感のあったiPhone 5向けを含むLTEの実人口カバー率が公開されました。

iPhone 5が唯一利用できる2.1GHz帯のLTEは2013年度末(2014年3月末)には80%となるほか、2014年度中に90%台になる予定であることがコメントされました。

なお、実人口カバー率の算出方法については事業者によって異なるため、単純な比較はできないとのこと。今後表示方法に関する議論が行われる予定です。

日経新聞河野:
障害の原因は社内のどういったことが原因なのか。慢心があるのではないか。信頼回復に向けて社員の士気をどう上げていくのか。

田中社長:
連続して障害が起きたのは先ほど申し上げました通り、スマートフォンのトラフィックなどについての対策はできている。装置としての処理能力の評価は一連の障害を踏まえた対策はできている。障害を受けてさらにトラフィックが上昇することについて対策できるかどうかについては甘さがあったと認識している。社内すべての組織がスマートフォン時代の考え方に変わっているとは思っていない。対策をしていきたいと思っております。

社内の士気が落ちているのでは無いかという話があるが、通信事業者として「ネットワークをつなげること」が存在価値だというフィロソフィーがあるが、これができていないことについて申し訳なく思っている。これをやってこそ我々の会社の存在意義があると思っているので、それに向かってベクトルを合わせていく活動をするため、引っぱって行こうと考えている。

フリー山田:
MMEのバグという話だが、御社にとってバグを含めて責任となるのはどこか。ベンダーなのか、それとも御社で開発したチームによるものなのか。シグナリングについて、MMEがダウンしてしまうとすべてがダメになってしまうということだが、他の方法は?

田中社長:
メーカーさんから設備を買っているとはいえ、バグについてはメーカーに治してもらわないといけないけれども、物を買って検証して利用している以上、責任の所在は我々にあると考えています。MMEはコアとなる設備であるため、時間をかけた検討が必要だと考えている。MMEは全国19台あり、多摩地区には5台あるが、障害が起きた場合に対する考察が甘かった。機能安全の概念から考えると、障害が起こることは当然と考えて対策すべき。8月末までに3倍の54台に増やす予定です。

フリー石野:
5月29日の障害、30日にも同じ事をしようとしたのは何故?iPhone 5のカバー率を公開した理由は?

田中社長:
間を開けてやろうとしなかったのは、ご指摘の通りだと認識だと思っております。少し焦っていたとご指摘を受けてもしょうがないと考えております。2.1GHzのエリアを開示しなかったのは、LTEネットワークはマルチバンド対応になっているという前提がある。各社によって定義の仕方が異なることや、「バンドごとに提示していくことが重要だ」と「全体として何%ということを提示したほうがいい」という考え方の対立があった。

消費者庁によるLTEの誤記指摘があった後、開示を要求する声があったので開示した。業界として実人口カバー率の基準を統一する必要がある。いたずらに各バンドのカバー率を公開するよりは、利用できる個所を開示した方がいいのではないかと考えた。ユーザーの声を聞いた開示の仕方を考えていきたい。

読売新聞江沢:
通信障害が頻発した背景について、古くから携帯電話網を整備していた会社であればあるほど、新サービスを導入する際に古い設備がネックとなる可能性があると指摘されてきたが、そこはどうなのか。

田中社長:
LTEの設備は既存の設備を改修して作れないので、すべて新しいものです。誤解を招く言い方になるが、既存の基地局のカードを入れ替えるとLTE対応にはなるけれども、設備自体はすべて新しいものです。

インプレスWatch:
他のベンダーから聞いた話だが、バグを含んだ背景にはauのカスタマイズによるものがあるのではないか。

田中社長:
世界のLTEと日本のLTEの違いは、災害時などに備えた設計をしているという部分がある。われわれは3G部分がCDMAであり、NTTドコモさんやソフトバンクさんのUMTS陣営と異なる部分があるが、そこは影響を与えていない。設備に関してマルチベンダー環境ではあるが、コアは1社のみ。

技術力をもってインテグレーションしていかないといけないと思っているが、今回の障害に際して、自分たちの技術力の無さを指摘頂いたのではないかと考えている。

朝日新聞タカシゲ:
一連の通信障害の経営への影響は?業界で人口カバー率の表示方法を統一するという話だが、つながりやすさについてもそう考えているのか。

田中社長:
経営への影響ですが、幸いにもスマートバリューやスマートパスが好評を頂いておりまして、足元では影響が出ていないのが現状です。先にどのような影響があるか分かりませんが、設備投資などについては改善に努めていきたい。投資額については5500億という数字を出させていただいている。つながりやすさを含めた表示方法については、当社としてはあまり違った基準で表示するのは意味が無いと考えている。

時事通信:
700円料金を差し引く方ですが、何人くらいなのか。総額は?

田中社長:
影響を受けたユーザーは3日間で約59万、約56万、約64万という数字だが、重複もあるため60数万+10万程度になると考えておりまして、700円をかけた額となります。正確な数については現在算出中です。

毎日新聞:
今回機会のトラブルが重なったということだが、スマートフォンの利用者が増えていることや、平時の通信量の増大は関係あるのか。経営責任は?

田中社長:
平時のものは問題無かったということです。ピークのトラフィックを含めて折り込み済みです。できていなかったのは障害時の対応です。本件につきましてはまだ監督官庁などのご指導などもいただいていないので、それを含んだ上でどういう対応をするかを検討してみなさまに開示させていただきたい。


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