琵琶湖には日本でただひとつの「人の暮らす湖上の離島」が存在しています。名物の桜の時期に訪れたのでレポートします。
日本列島と呼ばれるほど多くの島から成り立っている日本。海上保安庁は1987年に日本を構成する島の数を6852であるとしていますが、湖に浮かぶ島として人々が定住しているのは滋賀県の琵琶湖に浮かぶ沖島ただひとつです。
琵琶湖は数百万年前に形成されたバイカル湖やタンガニーカ湖に次ぐ古さを誇る古代湖であり、多くの固有種が確認されてラムサール条約登録湿地にも認定されています。
古くは天智天皇によって琵琶湖のほとりに大津宮が置かれて万葉集でも「淡海乃海」と呼ばれ、その後も若狭湾と京都・大阪を結ぶ水運の役割を担い続けてきました。琵琶湖最大の島である沖島には戦国時代に水運の要所として関所が置かれ、豊臣政権発足頃まで存続しています。
現在は滋賀県近江八幡市沖島町に属し約270人が居住する沖島。いったいどんな場所なのでしょうか?BUZZAP!取材班は名物とされる桜の時期に訪れてみることにしました。
沖島に行くためには、琵琶湖南東の堀切港から沖島通船に乗って沖島漁港に渡る必要があります。堀切港へは公共交通機関ではJR近江八幡駅の北口から近江鉄道バスの「長命寺経由・休暇村行き」に乗り(約30分で運賃は710円)、「堀切港」で下車します。平日は1日4本、土日も1日5本しかないので注意が必要です。今回は8時40分のバスに乗っています。
堀切港に着きました。自動車で訪れる場合にはこの堀切港には来島者用の駐車場がないため、港から徒歩5分の専用駐車場に車を停めて歩いてこなくてはなりません。港の駐車場は全て契約駐車場となっていて一般車両は進入禁止で、付近への路上駐車も頻繁に警察の取り締りがあるため必ず専用駐車場を利用しましょう。
港の桜は前日の雨のため、かなり散っていました。沖島の桜はどうでしょうか。
船がずらりと並び、まさに港という風情。潮の香りがしないことを除けば海の港かと思うような風景です。
港の奥に沖島通船の船乗り場があります。バスの乗り継ぎを待っての出発となるため、場合によっては軽く急かされつつ小走りで乗船することに。チケットは片道500円(小中学生200円)となっており、往復チケット(1000円)も購入可能。
船の中はこんな感じでレトロな雰囲気もありつつバリアフリーとなっています。トイレも船内にあるので安心。沖島までは10分ほどの船旅となります。
沖島での注意事項です。島の子供たちの写真撮影はプライバシー保護や肖像権の観点からNGです。特に個人が特定されるものや、インターネットへの投稿は厳禁ですのでしっかりと頭に叩き込んでください。島は子供たちはもちろん島民の生活の場であり、あなたの写真作品や「インスタ映え」のための道具などでは断じてありません。
また、時折「猫島」とも呼ばれて猫が多いとされる沖島ですが、野良猫には餌を与えないようにしましょう。
沖島が近づいてきました。沖島ではまるで自動車のように1世帯に1隻以上の船を所有しているとのことですが、なるほどと思える光景です。
沖島漁港に到着です。島民と思われる人にカメラを持った観光客はもちろん、山歩きの装備の人や外国人観光客の姿もありました。徐々に知名度が高まってきているのでしょうか。
港の桜は半分以上散ってしまっていました。訪れた翌日が桜祭りだったのですが、今年は桜の開花が予定より早かったため空振りかな…と思ったのですが、その予想はすぐに覆されることになります。
ちょっと歩くと美しい桜の絨毯が。
こちらの桜はまだまだ咲いています。期待が持てそうです。
港で「神社」という看板を見かけたので、まずは参拝してみることにしました。
完全に路地なのですが、矢印は進めと促します。行ってみましょう。
本土からすれば家と家の隙間のようにも見えてしまいますが、沖島ではこれが立派な道なのです。
ちょっと横を見ても同じような道が当たり前のように続いています。
神社の鳥居です。この奥津島神社は712年にあの藤原不比等が建立したと伝えられる極めて古く由緒正しい神社。平城京への遷都の2年後と考えるとこの沖島の歴史の古さを思い描くことができるのではないでしょうか。
急な階段を登ります。さすがにここはバリアフリーではありません。
社殿はとてもシンプル。
境内からは島の街並みが一望できます。
奥に見えるのはケンケン山。登山道もあり、珍しい湖中島の山歩きに来る人も少なくないようです。
山腹から張り出す見事な木々。
見とれていたら更に上に登る階段を見つけたので行ってみることにしました。
急な階段を登っていきます。
すると地図にはなかった山神神社なる神社が。
木造のさらにシンプルな社殿が。耐震のためかつっかえ棒が張り巡らされています。
さっきよりもさらに高いところから島を見渡せます。眺望は若干限られていましたが…。
次回は島の街並みを歩き、見事な桜並木を訪れます。ここで暮らすとはどういうことなのか、その一端を垣間見ることができるかもしれません。
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