本日、UQコミュニケーションズがTD-LTE互換の新規格「WiMAX Release2.1」を採用した「UQ WiMAX 2+」を検討中であると発表したことは少なからず衝撃を与えるものでしたが、ここまでに至る流れを振り返ってみました。
◆LTEに先駆けて商用サービス展開、3年で大きく成長した「UQ WiMAX」
・2007年
総務省が行ったモバイルブロードバンドサービス向けの2.5GHz帯割り当てにおいて、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクの3社がモバイルWiMAX技術を推進する目的でそれぞれを中心とした企業連合を作り、割り当てを申請。
早い段階からモバイルWiMAXの標準規格策定の取り組みに臨んでいたKDDIやIntelがJR東日本などと共に立ち上げた「ワイヤレスブロードバンド企画株式会社(UQコミュニケーションズの前身)」および、国産技術となる次世代PHS「XGP」を掲げたウィルコムの2陣営が同帯域を勝ち取ることとなったのが日本国内での「モバイルWiMAX」の始まりです。
ちなみに2.5GHz帯の割り当て申請を行ったものの落選し、「この評価については、まったく納得できないし、受け入れられない。我々の要望が反映されていないことは、誠に遺憾である」という強いコメントを発表していたソフトバンクとイー・アクセスは、5年後となる2012年に「イー・アクセスの子会社化」という形で統合されています。
・2009年
1年超にわたる準備期間と2月から東京23区・横浜市・川崎市の一部で実施された試験サービスを経て、同年7月にエリアを首都圏、京阪神、名古屋の各地域に広げた商用サービス「UQ WiMAX」を開始。下り最大40Mbps、上り最大10Mbpsの高速通信と、当時としてはリーズナブルな月額4480円の定額料金を打ちだし、NTTドコモのLTEを使った次世代高速通信サービス「Xi」に1年半先駆ける形でのサービスインとなりました。
・2010年
他社でも人気を博していたモバイルWi-Fiルーターを「WiMAX Speed Wi-Fi」として展開したほか、商用サービス開始1年で屋外基地局1万局を達成。さらには業界最安水準となる月額3880円の定額料金で利用できる「UQ Flat 年間パスポート」を導入するなど、積極的に攻める形を明確に打ち出しています。
・2011年
親会社のKDDIがWiMAXスマートフォン「HTC EVO WiMAX ISW11HT」をリリースしたのを皮切りに、高機能スマートフォンの通信規格としてWiMAXが続々採用。屋外基地局数は1万5000局を超え、契約数は100万人を突破、さらには「au Wi-Fi SPOT」のバックボーン回線として利用されるなど、KDDIとのシナジー効果を生かした展開を進めました。
また、同年7月には世界初となる「WiMAX 2」のフィールドテストを実施。基地局を搭載した特別仕様のラッピングバスを用意した上で、下り最大165Mbpsの試験用基地局を利用して通信を行ったところ、なんと150Mbpsを超える実測値を叩き出すことに成功。
そして10月には国際電気通信連合(ITU)が「WiMAX 2」およびLTEを発展させた「LTE-Advanced」を「第4世代携帯電話(4G)」の規格として正式に認可(ちなみに現行のLTEやWiMAXを「4G」と呼ぶことも同年12月に認められましたが、厳密には「3.9G」などに該当)したほか、12月に上り最大15.4Mbpsへの増速を果たしています。
・2012年
前年同様スマートフォンへのWiMAX採用や、KDDIの3GとWiMAXの両方を使えるモバイルルーターの発売などによって契約者は順調な伸びを見せたほか、地下鉄への対応なども進め、屋外基地局は2万局を突破。2012年9月末時点で契約者数は362万、人口カバー率は約93%に達するなど、サービス開始3年で大きな進歩を遂げました。
2012年6月時点の「UQ WiMAX」の契約者推移。2009年7月に商用サービスを開始し、2011年6月に累計100万契約、2012年2月に累計200万契約、7月に累計300万契約を達成。2012年中の純増数は200万を突破する見込みです。
しかしながらロシアの「YOTA」やアメリカの「Clearwire」といったWiMAXを展開していた大手キャリアがLTEに移行することを受け、気がつけば「WiMAXの旗振り役がUQコミュニケーションズ」という立場となる中、2013年開始予定の「WiMAX 2」の通信方式がどうなるのかという点に注目が集まることに。
そして10月17日にはKDDIの社長で、UQ WiMAXのサービスインに尽力した経歴を持つ田中孝司氏が採用方式の変更も視野に入れていることを示唆していましたが、TD-LTEと互換性を持たせた「WiMAX Release2.1規格」がリリースされたことを受け、同規格を採用した次世代サービス「UQ WiMAX 2+(仮)」の導入を検討していることが本日発表されました。
◆次世代ネットワークの整備コストを削減できる「WiMAX Release2.1」
増え続けるデータ通信量需要に応えるために、進化にあたって複数のモバイルブロードバンド技術との調和・共存を選択したと業界団体「WiMAXフォーラム」が解説する新規格「WiMAX Release2.1」ですが、同規格の最も大きなメリットは「ネットワークの整備コストを削減できる」という点。
モバイルワイヤレスブロードバンドの整備に必要となるコストは決して低くなく、大手と比較して体力の少なかったウィルコムやイー・アクセスがソフトバンク傘下になった原因でもあるわけですが、「互換性の無い別のネットワークをゼロから立ち上げ、実用レベルのエリアにまで一気に拡大する」というのはUQコミュニケーションズの規模に対して、負担が大きすぎると言わざるを得ません。
しかしながら「UQ WiMAX 2+」に「WiMAX Release2.1」を採用するのであれば、既存のWiMAXサービスを合わせて利用できるようになるため、東名阪や全国政令指定都市などの人口密集地をUQ WiMAX 2+エリアとして優先的に整備し、基地局設備の調達コストなどを勘案した上で徐々に残りのエリアも整備するという、時間的・金銭的な余裕を持たせた展開が可能となるわけです。
◆「UQ WiMAX 2+」「AXGP」、2.5GHz帯はすべてTD-LTE互換に
このように「UQ WiMAX 2+」はTD-LTE互換となる可能性が濃厚となったわけですが、同じように2.5GHz帯を割り当てられたウィルコムの「次世代PHS(XGP)」も、親会社となったソフトバンクに事業を分離され、TD-LTEと互換性を持たせた「AXGP」としてサービス展開中。
つまり2007年に割り当てられた2.5GHz帯を用いた通信サービスは最終的にTD-LTEと互換性を持つものに集約され、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクモバイルが展開する「FDD-LTE」と並ぶ高速通信規格になることになります。
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