まるで絵本の「半日村」や「木を植えた男」のようなお話ですが、インドではこのような途方も無い話が本当に起こってしまいます。
この男性の名前はDasrath Manjhi、インドのビハール州のガヤ地区、ガハロール村に住む土地を持たない農民でした。彼は高さ90mもある岩山を削り、1kmに渡る幅9mの道を通してしまいました。しかも彼がこの大工事に使ったのは重機などではなく、ノミ、ハンマー、ショベルというから気が遠くなります。
彼の住むガハロール村は険しい岩山のような丘に遮られ、その向こう側にある農地や一番近い市場に行くためにも長く危険な道を何時間も歩かなくてはなりませんでした。子供たちが学校に行くにも毎日8kmを歩いていましたが、彼がこの道を開通させてからは3kmで済むようになり、現在では60もの村の人々が毎日利用しています。
「この岩山に村人たちは何百年もの間苦労させられ続けてきた。人々は政府に道路を作ってくれるように何度も頼んだが、誰も何もしてくれなかった。だから私が自分でやることにしたんだ。」
いったいなぜ彼がたったひとりでこの途方も無い計画をやり遂げようと思ったのか。それは彼の妻が水汲みに行った時、岩山から転落して大怪我を負ったことに始まります。このような事故が起こらないように、しっかりした道を作ろうと決意しましたが、妻はそのすぐ後に病気になり死んでしまいます。これも整備された道がなかったため、病院に運ばれた時にはもう手遅れだったとのこと。
彼はそれからの人生において、道を作るという行為にひたすらに情熱を注ぎ込み続けることになります。その当時の光景を覚えている村人たちは彼が「取り憑かれたかのように岩山を削り続けていた」と回想します。
ただ、彼のモチベーションは時とともに変化してゆきます。彼はインタビューの中でその変化をこう言葉に表しています。
「妻への愛は道を作ろうという気持ちの最初の点火のひらめきだった。でも、その気持ちを長年恐れも後悔もなく持ち続けることができたのは何千人という村人たちがいつでも苦労すること無く岩山を超えてゆく光景を見たいという思いだった。」
ただし、彼の周囲の村人たちは最初そんな無謀な計画を実行しようとする彼をあざけり、気狂い扱いしていました。ようやく彼の努力への協力者が現れ始めるのは彼が岩山の半ばまで掘り進んだ頃でした。村人たちは徐々に彼に食事や道具を分け与えるようになります。
そして22年後、ついに彼が岩山を削り終え、バイクや自転車も通れる道を作り上げた時、この地区では彼はこの地区で感謝の意を込めて「mountain man」として知られることになりました。
彼が2007年に癌で死んだ時州葬にふされましたが、それ以外は政府からは何の援助も受け取ることはありませんでした。
「私がしたことはそこにあって誰にでも見える。神様がついている時には、誰も止めることはできないんだ。私は政府からの罰なんて恐れてはいないし、政府に対して何の名誉や対価も求めていない。」
彼はたったひとり報酬も求めず、ただ自らの心に従って他人のために人生をかけて行動し、ついには成し遂げてしまいました。いったいどれだけの人にこんなことができるでしょうか?インドはやはり計り知れません。
Dashrath Manjhi - The Man Who Moved a Mountain Oddity Central - Collecting Oddities
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