初の赤字転落でLenovoへの身売り話まで持ち上がったHTC、いったい何が悪かったのか



世界シェアが15%から2%にまで縮小して株価も10分の1に下落、退職した元幹部が「HTCに残っているすべての友人に告げる。とにかく辞めて今すぐそこを離れろ。つらいことだが、そのほうが幸せになれると断言できる」と呼びかけるなど、深刻な状況に陥ってるHTCですが、初の赤字転落に加えてLenovoへの身売り話が持ち上がりました。詳細は以下から。

◆ついに持ち上がったHTCの身売り話
【携帯】 スマホのHTC身売りか レノボと交渉と香港紙 - EMSOne中国電子・電気・通信市場情報からEMS情報まで毎日更新!

この記事によると、2013年7~9月度に上場以来初の赤字に陥いるなど、業績不振に苦しむHTCがLenovoと、出資受け入れや身売りで交渉していることを香港の日刊紙「星島日報」が報じたそうです。

なんと早ければ2014年上半期中にも両者が調印を交わすとされており、非常に気になる内容となっています。

◆相次ぐ幹部の退職は社内環境の急速な悪化が原因か
なお、HTCにとって業績不振に加えて大きな問題となっているのが、相次ぐ主要幹部の退職。先日BUZZAPでもお伝えしましたが、今年5月にはHTC AsiaのCEO(最高経営責任者)Lennard Hoornik氏や、多くのユーザーに愛された「HTC Desire」シリーズや「HTC butterfly」「HTC One」など、同社の製品戦略を統括していた最高製品責任者の小寺康司氏も退職。

2012年1月~13年5月に退任した幹部は実に11人に上り、HTCに残っているスタッフに退社を呼びかけた元製品戦略担当のEric Lin氏にいたっては、「別の会社などに転職するからではなく、あの場所(HTC)に未練が無くなっただけだ」とコメントしており、社内環境が非常に悪いことを示唆していました。

Twitter / ericlin: @PaulOBrien it’s not the ...


◆部品供給面がHTCの「アキレス腱」
日本経済新聞の報道では「Beats Audio」のBeats Electronicsなど、HTCが業績不振に陥った背景には未公開企業への巨額投資があるのではないかと言及されていましたが、一つ気になるのがAndroidスマートフォン黎明期から同社に重くのしかかっている部品供給の問題。

2010年にはハイスペックな本格Androidスマートフォン「HTC Desire」や、Googleと協業した初のNexusシリーズ「Nexus One」が相次いで発売されましたが、Samsungから十分な有機ELディスプレイの供給を受けられずに慢性的な在庫不足に陥り、出鼻を大きく挫かれたという経緯があります。


HTCはディスプレイやプロセッサ、メモリ、カメラモジュールなど、スマートフォンの基幹部品を自前で手がけておらず、基本的に各社から調達したものを組み上げるタイプのメーカーであるため、部品が供給されないことにはどうしようもないわけですが、この問題が再燃したのが今年のこと。

AppleやSamsungだけでなく、LG電子やLenovo、Huaweiなどをはじめとするメーカー各社が力を付けたことで競争力が相対的に衰え、部品メーカーからカメラモジュールを優先的に割り当ててもらえなくなった結果、HTCはフラッグシップモデルの「HTC One」を生産できず、一部地域で発売を延期せざるを得ない事態へと陥りました。


さらにHTC Oneに採用されているデュアルマイクについてもNOKIAに提訴され、裁判所が使用差し止め命令を出したほか、「HTC One mini」が設計上の問題からケースが不足して供給に支障が出るなど、「売りたくても売れない」状況が続く羽目に。絶えず各社が新機種を繰り出すスマートフォン市場で商機を逃すのは非常に大きな痛手で、これでは販売数が伸びようもありません。

ちなみに「多額の費用を掛けて開発したにもかかわらず、部品が足りずに生産できない」というケースは2012年夏に国内メーカーで発生しており、メーカー各社が深刻なプロセッサ不足に苦しめられ、シャープに至っては人気のフラッグシップ機の生産を発売1ヶ月で終了していました。


◆手を広げすぎた部分も
そしてHTCの戦略を振り返ってもう一つ気になるのが「手を広げすぎて失敗したのではないか」という部分。HTCはWindows Phoneにも積極的に端末を供給し、大手SNS「Facebook」と提携したスマートフォン「HTC First」をリリースするなど、一般的なAndroidスマートフォンにとどまらない展開を積極的に行ってきました。

しかしながらWindows Phoneは世界シェアを3%しか取れず、そのうち70%をマイクロソフトと提携関係にあったNOKIA製スマートフォンが占めてしまい、残った30%をSamsungをはじめとする他のメーカーと競うなど、Android以上に過酷すぎる競争を強いられる結果に。


おまけにHTC Firstも壊滅的な販売不振から発売1ヶ月で生産終了の憂き目に遭うなど、いずれの施策も良い結果を得られなかったのが現状です。


◆HTCがこの先生きのこるには?
このようにHTCが陥っている状況を考えると、やはり大事ではないかと思えてくるのが「ある程度自前で基幹部品を製造できる」という部分。

ディスプレイやメモリ、プロセッサなどを自社で手がけ、低コストで高性能なスマートフォンを作ることができるSamsungの強さは多くの人の知るところであるほか、LG電子はディスプレイ、ソニーはカメラ、Huaweiはプロセッサ……というように、グローバル市場で活躍しているいくつかのメーカーは基幹部品を自社生産しており、中には外販するケースもみられます。

また、仮に基幹部品の自社生産を行っていなくても、スケールメリットを生かすことで部品メーカーに対して調達力や価格交渉力を発揮できるAppleのようなメーカーもあるため、仮にHTCがLenovoと提携するなどして、部品の共同調達などに踏み切れた場合、HTCが生き残れる可能性はまだあるのではないでしょうか。

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