「与えあうこと」は何をもたらすのか、1分間の動画が教える「利他心」の秘める大きな可能性


与え合うことによって人間はどんな世界を作っていけるのか、その可能性を示した1分間の動画です。詳細は以下から。

この動画「One Human Family, Food for All」を作成したのは世界中で活動するカトリック系の慈善団体「Caritas Internationalis」。キリスト教的な発想にとどまらず、互いに与え合う「利他心」について非常に示唆に富む内容となっています。

動画の最初で示されるのは死後の世界をも連想するような灰色の薄暗い場所。

人々は底の見えない穴の真ん中にあるスープを食べようと長いスプーンでそのスープを掬うのですが、スプーンが長すぎて自分の口には届きません。まるで餓鬼界です。

そんな苦しい状況の中、些細な事から衝突が起こり、ある男性がスプーンを折られてしまいます。

自ら食べ物を得る手段を失ってしまった男性は絶望しますが、その時ひとりの女性が決断を下します。みずからのスプーンの中のスープを、スプーンを折られた男性に差し出すのです。

彼女が重そうにスプーンを差し出す光景を見た他の人たちは、自らのスプーンで彼女のスプーンを支えます。そして男性はようやく、スープを食べることができるのです。

世界に色が戻り始め、人々は互いにスープを与え合うようになります。

動画はこちらから。

One Human Family, Food for All - YouTube

もちろんCaritas Internationalisは実際に全世界で活動している団体ですから、ここで言われる「飢餓」は実際の飢餓を表しているものですが、「人はパンのみにて生くるにあらず」という言葉が示すように、精神的なことを表していると考えても非常にしっくりくる作りになっています。

「長いスプーン」という寓喩も意味深です。自分を満たそうとするのは困難ながら、他人を満たすことはできる。そして本来の役割を離れて他人のスプーンを支えることもできてしまいます。また不幸にも折れてしまうこともあります。動画のキャプションではこの「長いスプーン」について「誰もが自分のことを満たそうとあがくのなら全員が飢えることになるが、隣人の飢えに心を巡らせるのなら、誰もが満たされる道を見つけることができる」としています。

「情けは人の為ならず」という因果応報の発想はカトリック系というよりむしろ仏教系の団体が作りそうな内容ですが、自分にとってこの「長いスプーン」が何を意味しているのか、じっくりと考えてみるとよいかもしれません。

また、この動画の秀逸な点はこうした「利他心」の素晴らしさを説くに留まらず、食物が深い穴に囲まれて長いスプーンを用いなければ取ることができないという世界観を提示していること。

私達を満たすスープから私達を決定的に遠ざけているのは何なのでしょうか?人々が与え合い、世界が色を取り戻した後にも埋まることのないこの穴という構造は何を表すのでしょうか?ある人は「原罪」と答え、別の人は「業」や「資本主義社会」と答えるかもしれません。1分間という短い動画ですが、じっくり考えて見る価値はあるのではないでしょうか。

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