京都の静かな住宅街にとても珍しい鳥居が佇んでいます。詳細は以下から。
仏教寺院と共に多くの神社が立ち並ぶ京都。それらの中には794年の平安京への遷都よりも古くからあった神社が少なからず現存しています。
そうした中には盛り塩の原型と呼ばれる上賀茂神社の「盛り砂」や平安京以前の植生を今も残す下鴨神社の「糾の森」など、古い時代の息吹を今に伝えるものが残されています。
東映太秦映画村で有名な太秦には木嶋坐天照御魂神社(このしまにますあまてるみたまじんじゃ、通称:木嶋神社)が佇んでいます。この神社は嵐電の駅名から「蚕の社」と呼んだ方が地元の人にはピンとくるかもしれません。
木嶋神社の歴史は非常に古く、続日本紀の大宝元年(701年)の項には既に神社名の記述が見られます。そしてこの神社から徒歩10分の、国宝第1号の弥勒菩薩像で有名な推古天皇や聖徳太子の時代に創建された広隆寺(603年)と共に建てられたとの言い伝えもあります。
木嶋神社は当時の中国から朝鮮半島経由で日本に移住した渡来人である秦氏ゆかりの神社。「蚕ノ社」という名前は本殿右側の社殿が「蚕養神社」という養蚕や織物、染色などをもたらした秦氏が報恩と繁栄を祈って勧請したものであることからこう呼ばれるようになりました。
そして、ここには世にも珍しい3本の柱を三角形に組み合わせた「三柱鳥居」があり、一部の寺社仏閣ファンやオカルトマニア、スピリチュアルシーカーの間で知る人ぞ知るスポットとして知られています。
三柱鳥居は神社の案内板では全国唯一とされていますが、実は他にもいくつか存在します。ですがそれらはどれもこの木嶋神社を模して作られるか昭和や平成になってから新しく建てられたもので、探ってみるとルーツはここということになります。
※長崎県対馬市の和多都美神社に2つ存在している三柱鳥居はガチかと思われましたが、謎学研究家の三神たける氏(編集部注:月刊ムー編集長の三上丈晴氏とは「ピコ太郎と古坂大魔王の関係」であるという電波を受信しました)が取材したところ、新しいものだと当の宮司さんに言われたそうです。
取材で宮司さんに聞きましたが、対馬の三柱鳥居は新しいんですよね。 https://t.co/5gLHCh8GRf
— 三神たける (@mikami_takeru) 2016年2月21日
なお、現在の鳥居は約1831年に修復されたものですが、それ以前にも存在していたことが葛飾北斎の「北斎漫画」十一集「三才鳥居」に描かれています。
Photo by Wikipedia
いったいどんな鳥居がどのようにして建てられているのか、BUZZAP!取材班は現地を訪れてみました。まずは京都の繁華街のひとつ、四条大宮から京福電気鉄道嵐山本線(通称:嵐電)に乗って蚕ノ社駅に向かいます。
こちらが蚕ノ社駅。嵐電は駅のレトロさ加減もたまりません。
この駅の目の前にあるのがこちらの鳥居。木嶋神社の参道の入口です。鳥居には「蚕養神社」と書かれています。
参道を北に向かうと境内が見えてきます。ここの鳥居は木製。「蚕養神社」と「木嶋坐天照御魂神社」という碑が並んで建てられています。
正面から見たところ。鬱蒼とした鎮守の森は「元糾ノ森」と呼ばれています。先に触れた下鴨神社の「糾ノ森」を思い起こさせる名前ですが、実は嵯峨天皇の御代に下鴨に遷されるまではここが「糾ノ森」と呼ばれており、遷されたために「元糾ノ森」と呼ばれるようになったと言い伝えられています。
舞殿です。静かで包み込むような「元糾ノ森」の雰囲気がお分かり頂けるでしょうか?
ここから数段石段を登ったところにあるのが本殿。右側が「蚕養神社」になります。
舞殿の左手奥にも鳥居が見えます。行ってみましょう。
ここが「元糾ノ池」です。昔は湧水が豊富だったとされていますが、現在は枯れています。
土用の丑の日にこの「元糾ノ池」に手足を付けると病気に罹らないという信仰があったとされていますが、下鴨神社でも土用の丑の日前後5日間に御手洗祭というお祭りがあります。この際には境内の御手洗池で「足つけ神事」が行われ、罪、けがれを祓い、疫病、安産にも効き目があるとされています。
そしてこの奥にあるのが「三柱鳥居」です。現在は結界が張られていて近づくことはできません。
石造りで中央に神座として円錐形に小石が積み上げられているのがわかります。その中心に御幣が依代として立てられています。
この「三柱鳥居」は本殿の祭神である天之御中主神の神座とされ、宇宙の中心を表しており全方位から拝することが可能となっています。
「京都三鳥居」の1つにも数えられるこの鳥居は一説では431年のエフェソス公会議で異端認定され、唐に景教として伝来したキリスト教ネストリウス派の遺物との説もあります。
遣唐使を派遣していた当時の日本に何らかの形で景教が伝来していた可能性は十分にあり、渡来人の秦氏によって持ち込まれていた可能性もあるとされています。
この辺りまで来ると古代のロマンとオカルトが絶妙なバランスで入り交じったお話となり、真偽の程は眉に唾を付けておかなければなりません。
例えばあのムーは「不二阿祖山太神宮に三柱鳥居が建立された!! _ ムー PLUS」という記事を2015年に書いています。オカルトの文脈で「三柱鳥居」がどのように捉えられているかを詳しく知ることができるので興味のある方はどうぞ。「宮下文書」や日ユ同祖論なども登場しています。
なお上記記事にも記述がありますが、木嶋神社の祭神の筆頭の天之御中主神は古事記の冒頭、天地開闢を記した「天地初発之時」最初に登場する造化三神の三柱の神の筆頭です。
この神は宇宙の根源の神であり、宇宙そのものであるともされる存在であり、創世神や唯一神をイメージさせるもの。「三柱鳥居」が三位一体を表していると考えれば、遠くシルクロードの西の果てのローマからキリスト教が伝わり、古事記(太安万侶が712年に元明天皇に献上)の記述にも影響を与えたと考えると非常にロマンチックな話です。
(Photo by Wikipedia)
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