「携帯料金は4割下げる余地がある」菅官房長官の発言はどれだけバカなのか検証してみた

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「携帯電話会社は儲けすぎている。4割は値下げできるはずだ」という菅官房長官の発言が取りざたされていますが、どれだけ頭が悪いのかを分かりやすく解説します。詳細は以下から。

◆またもや噴出した「携帯料金は下げられる」論
まず見てもらいたいのが、NHKが報じた菅官房長官の発言

携帯各社について「競争が働いていない」「今より料金を4割程度下げる余地がある」「他の国と比較して高すぎるのではないか」などとブチ上げています。

携帯電話料金をめぐり、菅官房長官は札幌市で行った講演で「競争が働いておらず、いまより料金を4割程度下げる余地がある」と指摘したうえで、料金の引き下げに向け公正取引委員会とも連携して取り組みを強化する考えを示しました。

この中で菅官房長官は携帯電話の料金について「あまりにも不透明で、他の国と比較して高すぎるのではないかという懸念がある。競争が働いていないと言わざるを得ず、いまより料金を4割程度下げる余地はあるのではないか」と述べました。

◆3年前に同じ議論が起きた時、一体どうなったか
実は「日本の携帯電話料金は高い」論は今回が初めてでなく、2015年にも首相が「日本の携帯電話料金は高い」「家庭の支出における携帯電話代の割合を下げる」とブチ上げました。

そこで総務省が検証を進めたところ、一番最初に確認されたのが「そもそも日本の携帯電話料金は諸外国と比較して高くない」という点。


グラフで比較したところ。強いて言うなら「ライトユーザー向けプランが比較的割高」という点がありましたが、指摘を受けた大手各社の取り組みやサブブランドの展開、MVNOの充実などによってライトユーザー向けの安価なプランは充実しています。


日本の携帯電話料金は諸外国と比較して決して高くないことがまず証明されてしまい、振り上げた拳をもってゆく先がなくなってしまったわけですが、その結果生まれたのが「MNPユーザーへの過剰な割引は長期ユーザーに不公平」という理屈。

そこで総務省はMNP優遇を締め付けるべく、2016年に携帯各社に対し販売奨励金の縮小を求めたところ、安売りを武器にしていた携帯電話販売店の閉店ラッシュが発生。相当数の雇用が失われました。


さらに2016年上半期の携帯電話の出荷台数も2000年以降最低に。「規制されてもブランド・商品力のあるiPhoneのシェアは変わらず、国内メーカーが大打撃を受ける」という地獄を生み出しました。


結果、2017年1月に募集されたパブリックコメントも惨憺たる内容で総務省が「総無能」とまで揶揄されてしまいました。


なお、携帯各社はここ数年で料金ほぼ変わらずに月間50GB使える「ギガモンスター」や、利用したデータ量に応じて料金が変わる端末代金/月額料金分離型の新プラン「ピタットプラン」などを導入。実質的な値下げに踏み切っています。


つまり菅官房長官の「他の国と比較して高すぎるのではないか」という発言は、3年前と同じ悪夢を繰り返すだけとなる可能性が十分考えられるわけです。

◆「4割下げられる」も根拠ゼロ
さらに菅官房長官は「今より料金を4割程度下げる余地がある」としていますが、これも少し考えればおかしいと分かりそうなもの。

仮にドコモの一般的なスマホユーザーを「カケホーダイライトとベーシックパック契約、月間5GB利用」と仮定した場合、ユーザーの月額料金は7000円。ここから4割下げるとなると月額料金は4200円となり、ドコモはユーザー1人あたり毎月2800円の収益を失うことに。


ドコモの契約者数は7000万人(ただしMVNOへの回線提供分含む)いるため、単純計算で毎月1920億円、1年間で2兆3520億円の減収となります。auやソフトバンクも減収額が兆を超えるとみられますが、本当に4割も値下げできるのでしょうか。

◆5Gへの投資や楽天の携帯電話事業への影響は不可避
まもなく商用サービスがスタートする5G(第5世代携帯電話)に向け、基地局インフラの整備を進める必要がある携帯各社。

5Gには従来より高い周波数帯を用いるため、カバーエリアの狭い基地局を今まで以上にきめ細かく設置する必要があるなど、増加する一方の通信量に対処するために今後莫大な規模の設備投資が求められる中、収益を4割カットされて事業が立ち行くのかは甚だ疑問です。

また、将来的に見込める収益が急減するとなれば、ただでさえ険しい道にある楽天の携帯電話事業に致命的なダメージが及ぶ可能性も否定できません。

楽天が電波を割り当てられた際に付けられた条件。10年以内に単年度黒字を達成する必要がある上、既存の通信会社に事業譲渡を禁じるなど、逃げ道が塞がれています。


やることなすこと多くが裏目に出ている感の強い、政府による携帯電話事業者への介入。

格安スマホ事業者が契約数を集め、着着と力を付けつつあることを考えると、何もせず市場の原理に任せたほうが、遙かにマシな結果を得られるのではないでしょうか。

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