【橋の下世界音楽祭レポート 其の弐】黄昏が降りてさらに熱は高まり、飲み踊りそして遊ぶ


「橋の下世界音楽祭2018」のフォトレポート第二弾をお届けします。

例年であれば大トリであったはずの主催者「Turtle Island」のライヴが土曜日の午後に早々と、しかしもちろん大盛況のうちに終了した橋の下世界音楽祭2018(以下、橋の下)。

今年は現場でのみタイムテーブルが公表されたため、参加者らがその事実を知ったのは基本的には会場到着後。多くの参加者らはいったいここからどうなるの?という疑問が沸き起こったかもしれませんが、それをあっという間に吹っ飛ばしてくれたのが「切腹ピストルズ」でした。

このふたつのバンドには少なからぬ共通点があります。共にパンクを音楽的ルーツに持ちながら、パンクの本場であるイギリスで日本や東洋という自らのルーツと向き合った結果として1999年に結成されました。週プレNEWSの巷で話題の『切腹ピストルズ』とは? 江戸庶民の“乱痴気騒ぎ”を現代に伝える和楽器パンクの心意気という記事とWacca Mediaのパンクと祭りをひとつのバンドとフェスに混在させる意識 永山愛樹(TURTLE ISLAND)という記事を併せて読んでみるとそうした流れを感じることができるかもしれません。

「切腹ピストルズ」のライヴは「櫓」ステージで行われました。 「Turtle Island」の後に練り歩きを挟み、大盛り上がりのまま雪崩れ込みます。

山車が再び突撃し、妖怪変化が空を舞います。

そして櫓の付近は再び渦を巻くようなモッシュピットに。「切腹ピストルズ」が目指す「乱痴気騒ぎ」が凄まじい熱量で沸き返っています。

「Turtle Island」のライヴが終わったらどうなるか?その答えは更にぶっ飛んだカオスが撒き散らされ、打ち鳴らされる太鼓の音に大勢の参加者たちが猛り狂い、暴れ回るという最高の状況が訪れたのです。

こうして完全にスイッチをオンに固定された参加者たちは渇いた喉をビール(もしくはその他の酒)で潤し、続く阿波踊り太閤連のステージに向かったり夕食を食べて少しずつ暮れゆく空を楽しんだりします。夜はこれから。お楽しみはまだまだこれから。


うろついていると「パクチー狂全員集合」なる看板を発見。隣には「No Paxi, No Life」とあり、これは行かねばなりません。

パクチーを使った「パクヒート」です。飲みつつわしゃわしゃとパクチーをかっ込みます。これはヤバい。ヤバいしか出てこないヤバさです。

自分でパクチーてんこ盛りにもできました。これが本当の飲むサラダというやつでしょうか。しかも酒です。最の高です。

なお、このお店ではパクチー盛り放題のパッタイも。ええ、この上なく美味でした。

まだまだ子供たちも遊んでいます。

橋の下のトイレ。去年よりも充実しており、常に紙が補充されて清潔に保たれていました。野外フェス好きの人に異論はないと思いますが、トイレの清潔さはそのフェスのクオリティを知るための大切なバロメーターです。

黄昏が降りてきました。快晴の矢作川の夕暮れは息を呑む美しさ。橋の下にいるという高揚感もスパイスになっているのかもしれませんが…。

昼間の熱が少しずつ引いて行き、過ごしやすくなると夕食と乾杯の時間。あちこち活気が出てきます。

今回面白かったのは、バーに併設されたクラブが営業していたこと。橋の下とDJやダンスミュージックという組み合わせは若干意外にも感じましたが、むしろそれでこそ橋の下らしいと言うべきでしょうか。

もちろん橋の下の参加者には(筆者も含めて)普段クラブシーンやダンスミュージックに親しんでいる人も大勢います。タイムテーブルに記載される公式なブースではなく、散歩中に音を聞きつけてふらりと立ち寄って踊っているといった雰囲気の人がたくさんいました。

この気安さ、そして数ある楽しみ方の中から自分の好みに合わせて遊べるという自由度がこうした形で体現されている心地よさは言葉に表すことができません。


カドヤ横丁も既に大盛り上がりです。何軒もの小さな店が寄り集まっており、文字通りの横丁です。もちろんどの店でも自慢の酒とアテを楽しむことができます。

こちらでは焚き火ができていました。火があるとそれだけで人が集まってきてしまいますね。

幻燈座には遠藤ミチロウが出演しています。あまりの人の多さに近づけず。

草原ステージ付近では「Antibodies Collective」の公演が始まっていました。ノイズミュージックと身体表現による前衛芸術のパフォーマンスと呼ぶのが(表面的には)一番近いでしょうか。

パンクがあり、盆踊りがあり、クラブがあり、前衛的なアートがあってもどこも賑わっているという状況は軽々と想像を超えてゆきます。

満月が綺麗だったのでトヨタスタジアムの方に歩いてきてみました。

振り返って豊田大橋と橋の下の会場を眺めてみます。世界的な建築家による巨大な橋梁とその下に広がる光の渦のようなテントの群れ。橋を渡る車の音の向こうに見えるビルの明かりと会場から響く音楽とざわめき。

なんというサイバーパンクな光景でしょうか。それはいつか夢に見た未来の光景ですが、私達は既にその橋の下に広がるカオスが大地に根付いた豊穣な歓びに満ち溢れていることを知っています。

夜風に吹かれ、さらなる1杯を求めて橋の下に降りていくと「南部式」のライヴ中。自らのスタイルを「新民謡」と名付ける彼らの活動は西日本新聞の「民謡編<340>ゴッタンの世界(23)」でも語られています。

今回(昨年もですが)出演しているアーティストの「Turtle Island」「切腹ピストルズ」「南部式」らがいずれも音楽活動の中で自らのルーツという大きな問題に接近していったのは偶然ではありません。

そして日本三大盆踊りの中の阿波踊りと郡上踊りが実演されていることも、中国や韓国、モンゴルなどをルーツとするアーティストが出演していることもたまたまではありません。

私達は橋の下を訪れ、参加することでこの音楽祭が日本や東洋というルーツと繋がる中で繰り広げられていることに気付かされます。西洋的なフェスとの細々とした違いを肌で感じてゆく中で、私達は自分が寄って立つルーツについて何かを思うことになります。

とはいえ、橋の下が特に西洋的なものを拒否しているわけではありません。自らのルーツを見つめ、そして東日本大震災後という文脈の中で立ち上げられた「祭」だからこそ、そこにあるのは否定や否認ではありません。実際に筆者が橋の下に最も似ているフェスは何かと考えた時に最初に浮かんできたのはポルトガルのBoom Festivalでした。

幾多の試行錯誤の中で考え抜かれ、練り上げられ、熱度を失うことなく洗練されていったこの「祭」は、だからこそ至福の時間と何ものにも代えがたい体験をその場を訪れた全ての人に残してゆきます。

さて、夜も更けてゆきますが、会場はまだ遊びたい、眠りたくない、帰りたくない人たちで賑わい続けています。

会場のあちこちで公式のタイムテーブルにはないライヴやセッションが繰り広げられていました。

もちろん今夜で終わりではありません。まだ私達には丸々1日残っているのです。遊びたい気持ちをなだめすかして眠りについたのはもう1時過ぎでした。

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