【橋の下世界音楽祭レポート 其の参】祭は終わらず、そして次の祭へ


「橋の下世界音楽祭2018」のフォトレポート第三弾をお届けします。

橋の下世界音楽祭2018(以下、橋の下)の土曜日の夜、日付が変わるまで飲み倒し、遊び倒して倒れるようにテントで眠りにつき、ふと目が覚めると昨日にも負けない晴天が広がっていました。

二度寝もできそうにないのでまだ人の少ない会場を散歩してみることに。

通りがかりのテントにこんなオブジェが。何度も人間と間違えてドキッとしました。


がらんとしています。ゴミがほとんど落ちていないのは橋の下だからこそなのか、それとも筆者が起きる前にスタッフが片付けてくれたのか。

豊田大橋に上ってみました。

まだしんと静まりかえっています。

スタッフが重機を使ってゴミを処理していました。こうした見えないところでの仕事には本当に頭が下がります。地味かもしれませんが、これなしでは音楽祭は成り立ちません。

日が高くなって会場に人の姿が増えてきました。かなり暑かったため、橋の下の日陰に涼みに来ている人も。
今回まで橋の下のエネルギーを担ってきたPersonal Energyです。

このソーラーパネルから取り込まれた太陽光を変電所であるパーソナルエナジーのシステムが積まれた赤いトラック「パルガン号」で精製された良質の電力があの迫力の大音量を作り出しています。

飲食ブースがぼちぼち仕込みを開始しています。

橋の下には水場が1箇所しかないのですが、それぞれ譲り合いながら使っていました。竹粉で汚れを落とすシステムでしたが皆さん慣れたもの。

子供たちはやっぱり朝から元気です。家族連れが楽しんでいる姿を見ると野外フェス文化の成熟を感じますね。それだけ時間が流れ、遊んでいた若者たちが次のライフステージに移り始めたことがよく分かります。

昼からは日中韓琉球の獅子舞が披露されました。橋の下という音楽祭は日本ならではという要素に満ち溢れていますが、決して日本だけに留まってはいません。永山愛樹氏には日本に隣接するアジアの国々との歴史と関係性の中でその繋がりを感じてほしいとの想いがあり、この演目にも揺るぎない哲学があることをひしひしと感じさせてくれます。

それぞれに異なる文化を発展させながらも、これらの国々は断絶しているわけではなく、あちこちに似たところ、通じるところがあることをそれぞれの獅子は美しい舞で体現していました。


お楽しみは昼ビール。カドヤのたこ焼きと共に。

午後には昨年衝撃的な舞台を見せてくれた「劇団態変」の主催者、金満里氏と「Turtle Island」のギタリストCazU-23氏のデュオによる公演が行われました。

「無念の死」をテーマに行われたパフォーマンスは壮絶で言葉で到底言葉で表すことができるようなものではありません。自らの障害それ自体を表現手段として使う金満里さんの所作のひとつひとつが見るものに呼び起こすものはいったい何なのか。これはぜひとも多くの人に直接その目で触れて頂きたいと思います。

衝撃でしばらく動けなくなった後、少しずつ涼しくなってくる会場をひときわ熱く盛り上げていたのが喜納昌吉。さすがとしか言いようのないステージです。

昼の暑さが引けてくると草原の真ん中でゴロリとする人も。遊び続けて電池切れでしょうか。

夕暮れの草原ステージでのタテタカコさんのライヴ。このよく晴れて抜けた空が暮れなずんでゆく時間にあまりにもぴったりでした。座って聴き入る人、ゆらゆらと揺れるように踊る人。みんなそれぞれ自分の楽しみ方を分かって味わい尽くしています。

小さなしゃれこうべのパフォーマンスも。

日が暮れたら祭は終わり?いいえ、そんなわけはありません。今夜もみんな飲む気マンマンです。

そして大トリ、「Turtle Island」の別名義である亀島楽隊による盆踊りのスタートです。残っている遊び好きたちはここぞと残る全てのパワーで最初から盛り上がりまくります。


レーザーが飛び交い、櫓を中心にモッシュピットが渦を巻きます。盆踊りですから。

モノノケたちが渦の中を練り歩き始めます。

そしてやはり山車が突撃してきます。もう、もみくちゃのわやくちゃ。興奮は最高潮に達します。

さらに亀島楽隊が終わると、切腹ピストルズを始め出演バンドらによる練り歩きがそのままスタート。最高のミックスがキマって最高潮の興奮は留まるところを知りません。誰も終わるつもりがない。誰も終わらせるつもりがない。もう最高としか言いようがありません。


いったいどれくらいの時間踊っていたのか。ふと喉が渇いて再びカドヤ横丁に辿り着きました。そこには遊び疲れて電池切れになった皆さんが満たされた顔でエネルギーを補給しています。まだだ、まだ終わらんよ。
泡盛の水割り(濃いめ)に焼き鳥です。空っぽになった体にキュッと染みます。
散歩をしているとどこかで聴いたことのある歌が…。
寄っていくとなんと、金曜日にライヴをしていた元たまの知久寿焼さんがふらりと歌っています。今回は聴けないと思っていたのでびっくりしましたが最後まで聴き入ってしまいました。

先にも書きましたが、今年の橋の下はこういった公式タイムテーブルに掲載されていないライヴやパフォーマンスがあちこちで突発的に繰り広げられていました。これは「Turtle Island」の永山愛樹氏が「これは俺たちの祭じゃない、みんなの祭だ」と言っていたことと重なります。

祭は誰かが用意してそこで単遊ぶだけのものではなく、そこにいる人全員が参加者であり、何らかの形でその祭と関わっているのだという意識。無料の橋の下だからこそ、確固たる説得力を持って主催者と客という固定された関係性が覆されてゆきます。

同時に「自分たちで自分たちの祭をやって」という話もありましたが、まさに今回橋の下のあちこちで目にしたのは実った種が空に放たれる瞬間そのものだったのかもしれません。

その結果を数年のうちに日本のどこかで、新しい祭という形で私達は体験することになるでしょう。そういう熱量をひしひしと感じ取ることができました。

この日も深夜まで「Antibodies Collective」のブースからはいい音が流れていました。少しずつ減ってゆく人、それでもまだ遊ぶ人、いろいろな想いを載せながら橋の下の夜は更けゆきました。

さて、そんな橋の下の次回がどうなるのかは未定です。来年の春にまた開催される事を多くの人が心待ちにしていますが、果たして今年と同じような形での開催となるのか、それとも形が変わるのか、今のところ公式の発表はありません。

ですが、まずは10月13~14日にトヨロックことTOYOTA ROCK FESTIVAL 2018が橋の上に当たるトヨタスタジアム前で開催されます。

Turtle Islandが大トリで出演する他、KODAMA AND THE DUB STATION BAND、eastern youth、やけのはら、LITTLE TEMPO、在日ファンク、Dachambo、かせきさいだぁ、呂布カルマなどの錚々たる面子が出演。

フェス自体はこちらも入場無料ですが、橋の下同様キャンプ駐車場には別途料金が掛かります。

橋の下より若干フェス感が強めと言えばなんとなく雰囲気はお分かり頂けるかと思います。気持ちのいい秋の週末、1日でも半日だけでもふらりと訪れてみてはいかがでしょうか?

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