肺移植を受けた女性が臓器ドナーの「ナッツアレルギー」を継承する事案が発生


ドナーのアレルギーが継承されるという非常に稀な事態が発生しました。詳細は以下から。

以前、脳移植によって人格が変貌してしまうという小説が人気になり映画化もされましたが、臓器移植でドナーの体質が継承されるという事案が報告されています。

この症状が現れたのは肺の移植を受けた53歳の女性患者。ジャーナル「Transplantation Proceedings」での報告によると、この患者が移植手術の2週間後にピーナッツバターとゼリージャムのサンドイッチを食べた直後に急性呼吸不全に陥りました。

この患者は肺気腫を患っていましたが、これまで皮膚炎などのアレルギー反応が出たことはありませんでした。しかしこの患者がサンドイッチを食べた直後に始まった呼吸困難と胸部絞扼感から、医者らはアレルギーと判断せざるを得ませんでした。

結論から言うと、これまでこの女性患者にはピーナッツアレルギーはありませんでした。ですが、左肺のドナーとなった22歳の男性がこのアレルギーを保有していたのです。女性患者の移植に携わったひとりであるMazen Odish医師はLiveScienceの取材に、ドナーからピーナッツアレルギーが継承されたことを認めました。

こうした例は極めて稀ではありますが、前代未聞ではありません。2016年には姉妹から骨髄移植を受けた46歳男性が、姉妹の持っていたキウイアレルギーを継承。2003年には肝移植を受けた患者がドナーの死亡原因ともなったピーナッツアレルギーを継承しています。

こうした前例がありつつも、なぜこうした現象が起こるかについては現在まだ分かっていません。肝移植が行われた場合や家族歴の中に同様のアレルギーを発症した人がいた場合に起こりやすくなる傾向は見られますが、個別の事案が幅広く存在するため特定には至っていません。

あるアレルギーを持つドナーから複数の臓器が複数の患者に移植された場合でも、ある患者のみがアレルギーを継承し、他の患者は継承しなかったというケースも存在しています。

この女性患者は検査の結果、ピーナッツに加えてアーモンド、カシューナッツ、ココナッツ、ヘーゼルナッツのアレルギー陽性反応が出ました。これにより、当該の食べ物を避け、緊急時のためにアナフィラキシー補助治療剤「エピペン」を携帯するよう求められたとのこと。

記憶や人格の継承でこそないものの、ドナー特有の体質が臓器移植によって継承されることは、ごく稀にでもあり得るということになります。今後臓器移植の件数が増加するにつれ、こうした謎も解明されていくのでしょうか?

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