「ホモ本ブックカフェ オカマルト」で日本初のゲイ雑誌をチェック、生まれ年のゲイシーンも振り返ってみました


先日お届けした第1弾に続いて、ゲイ文化を振り返ることができる貴重なお店「ホモ本ブックカフェ オカマルト」の様子をお届けします。

後編では具体的にどのような本が陳列されているのかを、編集部員の生まれ年に刊行されたゲイ雑誌や戦前戦後の貴重な資料などと合わせてお伝えします。詳細は以下から。

・生まれ年のゲイシーンを振り返ってみた
事前にマーガレットこと小倉東さんにお願いし、用意してもらった筆者の生まれ年近辺のゲイ雑誌。実に今から37年前の「さぶ(1974年創刊-2002年休刊)」がありました。

グラビアや小説、イラストなど成人向けコンテンツだけでなく、当時の性風俗を知ることも。

情報発信媒体として重要な役割を担っていたことがわかります。

インターネットのない時代にゲイ雑誌が担っていたのが文通を用いた出会いの仲介。特にゲイバーなどの交流の場があまりない地方に住むゲイにとって、文通欄は非常に大きな意味を持っていました。

いかにも80年代といった文体。その時代のリアルさを感じることができます。

しかしいったいどれだけのゲイが、文通欄を介して同じ性的指向の人たちと出会い、孤独を癒やすことができたのでしょうか。

興味深いのが広告欄。当時24会館は浅草にしかなく、北欧館もオープンしたばかりでした。

中部地方を中心に、地方で存在感を発揮していた喜楽会館。

当時の時点で今と変わらない店舗展開が行われていた大番会館。「国電新宿駅」というフレーズが時代を感じさせますね……

日本初の商業ゲイ雑誌「薔薇族(1971年創刊-2004年に一度休刊)」までありました。さぶや薔薇族、The Gayなど、オカマルトが収蔵しているゲイ雑誌はかなりの数。見たい号があれば事前に依頼しておく必要がある点は要注意です。

・貴重な歴史的資料も
ちなみに薔薇族が創刊される以前、商業ベースのゲイ向けコンテンツは異性愛向け性風俗雑誌の一部に収録されていました。

1954年刊行の「風俗科学」では「暴力女給と暴力男娼について」という文章が掲載されています。

第二次世界大戦後に日本で流行したアプレゲールと呼ばれる風俗を追求した「風俗科学」。当時同性愛は既存の道徳観にとらわれない雑誌でしか取り扱われないものでした。

1970年刊行の「風俗画報」でも同様の扱いです。

しかし決してゲイ専門の出版物がなかったわけではありません。それがサンフランシスコ講和条約締結の翌年、1952年に創刊された日本初の会員制ゲイ雑誌「ADONIS(アドニス)」です。

アドニスはその名前の示すとおり、少年愛などを中心とした耽美路線の誌面。

学のある人物たちが中心となっていたことがわかる文面。精神性を重視する、プラトニックな要素も多分にありました。

筆者の目に止まったのが、宮城県・塩釜市に住む20歳会員による投稿。多感な時期に自分と同じ性的指向の人間が周りに一切いないことのつらさがどれほどのものであったか、想像に難くありません。アプリや掲示板で出会うことができるようになったとはいえ、今でも似たような境遇の人はいるのではないでしょうか。

世の常ならぬ悩みなれば、はばかる事なく打明ける事も出来ず唯一人、自分に総てをまかせ、そして安心して甘え、打明け、何事も忘れて心からお慕い出来る優しく強いお兄様にめぐり合えるのを頼みに父母と三人だけのわびしい日毎、夜毎を送っております。特に最近では自分でもどうすることも出来ない位の焦燥を感じて居ります。


理解し合える人がいることの喜びを訴える投稿が続々と寄せられています。

三島由紀夫や中井英夫、塚本邦雄などの文化人が参加していたとされるアドニス。残念ながら1962年に警察の取り締まりで廃刊となり、読者たちは「薔薇族」「さぶ」創刊まで10年以上待たされることとなりました。

アドニス会員による手記集「MEMOIRE(メモワール)」もありました。オカマルトの蔵書には舌を巻くものがあります。

ただでさえ結ばれることが少なかった同性愛者に、容赦なく襲いかかった戦争体験。

ただただ悲しい別離を経験した人たちの手記が寄せられていました。

「これで、もう二人は永遠にさよならだね」「でもいつかは逢へると思ひます。逢ひたいと思はれたら、何か一言言って下さればどんな方法を取ってでもお逢ひします」

併しこれが永遠の別離になりました。戦災が激烈になった頃、Hさんも戦火に倒れてしまはれたそうです。


中にはかなり生々しい投稿も。

・戦前の本までありました
極めつけが花房四郎著「男色考」。

異性愛者が男色についてまとめたとされる本ですが……

刊行は1928年(昭和3年)。なんと戦前です。

驚くほど古い本や、北朝鮮の性風俗についてまとめた本まであるオカマルト。

最後に、日本のゲイ文化を語る上でどうしても触れておきたい人物の記事をお届けする予定です。

ホモ本ブックカフェ オカマルト(東京都新宿区新宿2-18-10 新千鳥街2F)
日曜日~水曜日 13時~20時:マーガレットの「オカマルト」
木曜日 13時~20時:ミノルの「モクマルト」
毎月第1日曜日 21時:大黒堂ミロの「ヨルマルト」

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