決して他人事では済まない、そこが問題です。詳細は以下から。
◆韓国勢が圧倒的なシェアを占め、中国がうかがう有機EL市場
まずは有機EL市場の基本的な情報をおさらい。基本的にほぼすべてのシェアをSamsungとLGが占め、中国BOEがシェア拡大を狙っています。
モバイル向け中小型:Samsungが90%以上
大型テレビ向け:LGが95%以上
BOEの有機ELパネルを採用したとされる「Huawei Mate 20 Pro」。中国勢のキャッチアップが進んでいます。
◆今後起きる有機ELパネル不足
上記のシェアから分かるように、徴用工問題での対立を背景に、日本が韓国に対して行った「フッ化ポリイミド」「レジスト」「エッチングガス」などの輸出を実質規制する措置は、今後有機ELパネル不足を招くこととなります。
そのためAppleは安定供給を図るべく、中国BOEからもパネルの調達を検討する段階にさしかかっているわけです。
◆部品不足が招くもの
ここで問題となってくるのが、部品不足が招く結果。基本的に部品が不足した場合、メーカーは大口顧客への供給を優先します。
つまりスマホ向け有機ELパネルが不足した場合、世界シェア上位のSamsungやHuawei、Appleなどに優先的に供給され、シェアの小さい日本メーカーは後回しになります。
分かりやすい例が2012年発売の「AQUOS PHONE ZETA SH-09D(シャープ製)」。世界的なプロセッサ不足の中で供給を満足に受けられず、わずか1ヶ月で発売終了となりました。
また、部品不足が招くもう一つの問題が単価の高騰。
パネル1枚あたりの単価が上がっても、大口顧客であればある程度スケールメリットを生かしてコストを抑制できますが、まとまった数を仕入れられないメーカーはコスト増がそのまま最終製品の価格に転嫁されかねません。
気がつけばスマホを年間1000万台売ることすら厳しくなったソニーの最新モデル「Xperia 1」。有機ELパネル高騰によって、今後発売される機種の本体価格が引き上げられ、不利になる可能性は十分考えられます。
もちろんこれは有機ELテレビでも同じ。LGはまず自前のテレビへの搭載を優先し、余ったパネルをパナソニックやソニーなどの有機ELテレビに振り向けると考えられます。当然2社が調達で競った場合、パネル単価はさらに上がります。
供給元が限られるため、メーカーの「言い値」で買わされている感も強い有機ELパネル。
もしジャパンディスプレイが有機ELパネルの量産にこぎつけていれば、今回の規制は間違いなく追い風となりましたが、現状では日本の家電メーカーの首を絞め、シェア拡大を図る中国BOEを利するだけとなりそうです。
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